【昭和のサラリーマン】 〜其の参〜 思いやり
1年目で記憶に残っている出来事は6月16日の新潟地震だった。
先輩はそれぞれお客様対応で慌ただしく外に出かけて行かれたが自分は頼まれたことをやっているだけで何も役に立たなかった。
仕事外では、東京オリンピックの開会式に、父が連れて行ってくれた。
「コンパニオン」制度があり課の中で自分の年齢に一番近い先輩が「すべての指導係」という立場で面倒を見てくれた。
道産子のIさんだった。
朝から緊張していたが、
「ハイ近ちゃん。親が死んでも昼休み」
と言って昼食に誘ってもらい、あれこれ教えてもらいながら食事ができたのは、ありがたかった。
しかも、支払いは全部先輩が済ませて下さった。
後に聞いたところ、学生ルールしか知らず、麻雀でよく負けたが、当時の係長がIさんに私の負け分を預け、
「そこから支払ってあげろ」
と指示があったとのことで、思いやりに遅ればせながら感謝した。
2年目に父が新潟勤務になったため、成城にある「独身寮」で生活することになった。
アルコールは嫌いだったので、稽古日以外は麻雀の付き合いが多かった。
課内か同期でやっていたが戦績はあまりよくなかった。
〜続〜
著:近藤正輝 写真:近藤大介
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