【アルビ日記】2023-34:vsC大阪 1-0
「アルビ流」
試合情報
・12/3(日)14:00キックオフ
・@デンカビッグスワンスタジアム。雨
・新潟10位、C大阪8位
アルビレックス新潟・スタメン
GK小島享介。DF藤原奏哉、トーマス・デン、渡邊泰基、新井直人。MF高宇洋、星雄次、松田詠太郎、高木善朗、三戸舜介。FW谷口海斗。
【途中出場】太田修介、長倉幹樹、小見洋太。
試合ダイジェスト
【前半】
雨の中、両チーム後方から丁寧に組み立てるスローな展開。41分新潟、前を向いてボールを受けた三戸が左足でシュートを放つが、C大阪キム・ジンヒョンがセーブ。0-0で前半終了。
【後半】
61分・C大阪は清武を投入して4-3-3にし、さらに前プレの圧力を高めギアを上げる。87分・新潟が均衡を破る。CB渡邊泰基が縦パス、三戸がフリックして相手をいなし、3対2の状況をつくる。長倉が持ち上がり、右の太田へ、太田のシュートはブロックされるももう一度折り返し、長倉が合わせた。1-0で試合終了。
香川と清武
2023年のJリーグも最終節。ホームに開幕戦の相手・セレッソ大阪を迎える。
ビッグスワンは横殴りの雨。香川真司も毎熊晟矢もレオセアラも試合前からびしょ濡れだ。
◆
連敗中だからかピッチコンディションのせいなのか、セレッソはなんだか手堅い入り。
香川と奥埜博亮がダブルボランチで並ぶ4-2-3-1で、その二人が交互にボールにすり寄っていき、パスを受け、はたく。
非保持の際のディフェンスも前線から集中していて、整然としたブロックを敷く。FWやウィングが攻め残るなんてことはない。
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対するアルビも同様に後ろからボールを持ってじっくり行きたいタイプだから、ゲーム進行は必然、スローなテンポになった。迂回路を探って、なかなかゴール前に行き着かない。
いつもは「まずシュート」の意識が高いアルビの切り込み隊長・谷口海斗も、今日はどういうわけか複数選択肢の局面でパスを選びがちであった。
そんな中、前半気を吐いていたのは、左サイドに入った三戸舜介。
我らがヤングヒーローは、左でボールを受けて前を向くと、キレの良い切り返し、両足での細かいタッチを織り交ぜてゴールに迫り、振りの鋭いシュートを何本か見舞った。惜しかった。
豪雨の中でも色褪せない、むしろ輝きを増すドリブルの切れ味!(来年も新潟で見たい…)
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セレッソは香川がピッチの中央に君臨。ボールを引き出し、様子をうかがい、リズムをコントロールする。
前日プレーオフ決勝を戦った清水エスパルスの乾貴士もそうだけど、かつて(アルビの三戸みたいに)2列目でギュンギュン唸りを上げていたヤンチャ者たちが、こうして少し落ち着いたプレースタイルに変貌したりする。
こういうのを見ると、サッカーの奥深さにうなり、隔世の感に目を細めたくなり、あと、少しだけ寂しさを感じる。
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後半、ケガから復帰した清武弘嗣が投入され、香川とインサイドハーフで並んだ。清武のアウトサイドパスとか、意表を突くスルーとか。それから香川とのパス交換とか。
これをビッグスワンで見れるというのも、また感慨ひとしおである。
なんだかんだ言って、Jリーグのオールド・ファンには彼らのような存在が心底ありがたいのだ。(今日は別会場で小野伸二が引退している)
今年のアルビのサッカーは
最終節、アルビは素晴らしい勝ち方で有終の美を飾った。雨のビッグスワンが沸騰した。冷たい雨が沸いた。
起点になったのはCBの渡邊泰基。
C大阪は終盤、前線の枚数を増やしアルビのビルドアップに対する圧力を強めた。猛烈なチェイシングに、渡邊泰基は何度か引っかかり、パスミスなども出た。
それでも頑固にボールを繋ぐ姿勢。これはアルビサッカーの源流である。
獰猛に迫る相手に対して逃げず、勇気をもって切り返し、かわし、左足で縦パスをつける。
そのボールを三戸が素晴らしいワンタッチでつなぎ、リターンで前を向き、すぐに長倉幹樹に預ける。
途中投入のFW長倉は鬼気迫る疾走でゴール前にボールを運ぶ。右横にはこれまたゴールへの執着を感じる途中投入の太田修介。太田にパスが渡ると迷いなく右足を振り抜くが、DFがスライディングブロック。それをすかさず拾い、中に折り返す。
合わせたのは長倉。長倉のフィニッシュが決まると、1年分の歓喜がビッグスワンで爆発した。
シーズン途中で加入し、惜しいところまで行くもののなかなかゴールネットを揺らせずにいた長倉が、ついに。最終節に、出来すぎなエンディング。
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J1復帰初年度のアルビは、18チーム中10位でフィニッシュ。終盤戦は9試合負けなしと、強さを見せつけた。
2020年にアルベルト監督が就任してから、アルビのサッカーは劇的に変わった。頑固なポゼッションスタイル。後方からボールを丁寧に繋ぎ、組み立てるサッカー。
昨年から引き継いだ松橋力蔵監督は、アルベルト監督が植え付けたポゼッションスタイルを進化させた。
松橋監督のもと、あくまでもつなぐ頑固さはそのままに、状況に応じて変化をつけられるサッカーに変貌。時には引いて守る、ロングカウンター一発で仕留める、という武器も手に入れた。
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もしかするとこれは、スペイン流ではないのかもしれない。流動性が薄まってる気がしなくもない。
でも、今のアルビには以前にはなかったしぶとさ、粘り強さを感じる。泥試合で殴り合っても勝てる雰囲気を漂わせている。
そして今年もアルビは総力戦で戦った。中盤より前の選手は試合ごとに入れ替わり、ある程度固定するのが定石であるはずのセンターバックでさえ、流動的だった。
どの選手が出ても、アルビサッカーの思想は維持される。そこに選手の個性がプラスされる仕組みになっていた。
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どの国のどのチームとも違う、アルビ流の、オリジナルスタイルのサッカーが、新潟で生まれつつあるような気がする。
そんなアルビのサッカーは、新潟と、遠征先でしか見られないわけだ。
来年も楽しみだ〜