【社内報の作り方】顔写真のお作法
社内報編集者共通の悩みは、マンネリ化です。そしてその主な原因の一つが、代わり映えしない、いつもの顔写真…。うー、どうしてかいつも同じようになっちゃうとお悩みの方は少なくないでしょう。今回は社内報における写真をテーマにご紹介します。
社内報は「顔写真」を見るもの。
よく社内報ご担当者様がおっしゃられるセリフに「どうせ、社内報なんて読まれていない」という自虐的、悲観的なものがあります。確かに、最初から最後まで一字一句読む方はいらっしゃらないでしょう。しかし、私は断言できます。社内報は「見られています」。なぜなら、社員の顔写真があるから。今回は、誰が出ているんだろう。社内報を手渡された瞬間、ほとんどの方はこういったモチベーションでページをめくり、知り合い探しを行います。つまり社内報は「顔写真を見るもの」だと言えます。
顔写真のルールって誰が決めた?
顔写真は非常によくみられる重要な要素ですが、よくあるのが社員証の写真を使いまわすケース。致し方ないケースもありますが、まじめくさった証明写真ではその人となりは見えず、面白みに欠けます。中には「証明写真=社内報の写真」と思い込んでいるご担当者様もいらっしゃり、非常にもったいないなあと、いつも感じています。とはいえ投稿ページ含め、すべて取材対応できるわけではありません。こうした場合、顔写真の投稿をお願いするようにしましょう。これだけでも誌面の魅力はぐっと高まります。
投稿を依頼する際は、掲載ページの趣旨説明(必要に応じてコメント用のアンケート)に添えて、欲しい写真のサンプルイメージ、写真撮影上の注意点(制服着用ルール、名札の有無など身だしなみ関連が主)を添え、メール返送先を記載し依頼します。この際、サンプルイメージは、ピンタレストなどWEB上にあるもの、雑誌などを例示する形でも構いません。昨今では、スマホの進化で、画像の解像度もさして気にするようなことはなくなりました。本当に最低限のNGだけを記載し、送るようにしましょう。
投稿者のアイデアの方が優れていることも
サンプル例示とありましたが、明確に欲しい構図、絵柄があれば、それを例示すると、その影響を受けたものが届きます。しかし、がっかりすることも少なくありません。なぜなら、素人がサンプルを復元したり、超えたりすることは容易ではないからです。逆説的ではありますが、サンプルを例示しないほうがうまくいくケースもあります。以前、家族特集を作った際のこと。3兄弟がともに同じ会社で働いていることを取り上げることとなり、小さかった時のお写真と、現在の写真をお送りくださいと依頼しました。この時、サンプルなどは例示せず、ただ笑顔の写真が欲しい、服装の注意点はここ、とだけお伝えしています。後日届いた写真は、幼いころの3人が抱き合っている写真、そして全く同じポーズで、大人になった3兄弟が抱き合っている写真でした。依頼した私にこの発想は全くなく、ただただ笑顔であればいい位に思っていたのですが、そこに投稿者のアイデアが加味され、大変、魅力的な写真を掲載することができたのです。こうして少し相手に委ねてみるというのも、一つの手法かもしれません。
取材撮影するときは
一方で、自分たちで撮影をしないといけない場面があると思います。人物写真は、それこそマンネリに陥りがち。コメント用には正面の笑顔で目線有りの写真、インタビューカットは、斜めからハンドアクションを加えたもの、など。往々にして背景は、白。これでは、やっぱり飽きてしまいます。写真のバリエーションを増やすには、とにかく雑誌を研究することにつきます。たとえば顔写真も、上から、下から、横から、斜めから、目線ありなし、ピースに代表される手のポーズを付けるなど、記事の性質によるTPOは考えないといけませんが、ありとあらゆる可能性を試すべきだと思います。また背景も、白だけでなく、青、黄色、赤など、バック紙と呼ばれる背景用に紙を用意したりするのも手です。おすすめなのが、背景ぼかしです。一眼レフの場合、単焦点レンズを使用し、人物背景をぼかせば、多少乱雑なオフィスでも、乱雑さはぼけて消え、かえって彩りある背景に変わったりします。今はスマホでもできるので、ぼかす前提で、背景の色にこだわってみるのもいいでしょう。
撮れば撮るほど上達する
私は当初、社内報編集における撮影業務が憂鬱で仕方ありませんでした。イベント取材では撮り直しが効かない一発勝負のことが多く、緊張と、足りないスキルで、失敗の連続でした。しかし経験を重ねる中で、シャッタースピード、絞り、露出、ISO感度の関係性がわかってきて、また新しいアングルを見つける楽しさを見つけ、プライベートでも写真を撮るようになりました。今回ご紹介した「顔写真」はイベント取材と違い、練習ができます。同僚を捕まえて、練習すればするほど、きっと面白いアイデアに巡り合うかでしょう。そしてそのアイデアが社内報の誌面をさらに魅力的なものにしてくれるはずです。
駆け出しのころ、写真が好きになり、木村伊兵衛写真賞をずっと注目していました。そんな中で合ったのが、「ID400」です。本作品は全てセルフポートレート。証明写真がずらっとまさに400点並んでいるのですが、すべて違う人を演じているのです。証明写真が並ぶのはつまらないという、一般常識を覆す、そのエネルギー。むしろ証明写真だからこそ表現できた、この作品は、今もトラウマのようなフラッシュバックに襲われます。今回の記事執筆でアマゾンを覗きましたが、プレミアがついているようです。ぜひ古本屋などで出会ったら、証明写真史上、最大級の熱量に触れてみてください。