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【映画のはなし(2)】愛と暴力は、表裏一体。〜「ブエノスアイレス」(ウォンカーウァイ監督作品)





同性愛を扱った映画は数多くあれど、この作品ほど不器用で、残酷な愛の形を描いている映画はないのではないか。

ウィンとファイは、お互いの関係を「やり直す」ために、南米旅行へ出かける。イグアスの滝を目指す途中、意見の食い違いから、喧嘩別れしてしまう。


個人的なことを語ろうと思えば、必然的に性的なことを語らざるを得ない。
この作品では、いきなりウィンとファイの濡場シーンから始まり、観る方としては少し怖気付いてしまう。
それは愛を語っているというよりは、暴力を語っているように見えたからだ。

作品の至るどころで暴力的な描写が出てくる。
ウィンが新しい白人の恋人から暴力を受けてファイのところに戻ってきたり、
ファイが苛立ちを抑えられず鏡を拳で割ったり。
冒頭の濡場シーンがその後の展開を示唆しているかのようだ。

性は、愛を表現する手段にもなるし、暴力を表現する手段にもなりうる。


カメラは常に、2人の「今」を写し続ける。
次の展開が全く読めない。
北野武監督もそうだけれど、ウォンカーウァイ監督は、その日撮影する台本を当日にメモ書き程度にして渡し、基本的には俳優たちに即興的な演技をさせていたらしい。
そういった演出が映画における突発性や新鮮味を生んでいる。


ストーリー展開の面白さを楽しむ映画もあるけれど、この作品はそうではない。


晴れ渡っている青空の下、ウィンが空を眺めるシーン
キッチンでウィンとファイがアルゼンチンタンゴを踊るシーン
ファイが、ウィンと2人で訪れるはずだったイグアスの滝を1人で眺めるシーン


何気ないワンカットが、脳裏に強烈に焼き付く。

不安定で刹那的な2人の関係が観る側の感情をも揺さぶる。


ファイがウィンにチャーハンを作ってあげるシーン、すごい好きだったなぁ。



結局、パスポートはどうなったのだろう。
2人のその後も気になるところ。
ブラックホールに吸い込まれるような永遠の時の流れを感じさせつつ、映画は締め括られる。



「ブエノスアイレス」
ウォンカーウァイ監督作品
製作年・1999年
製作国・香港
上映時間・96分

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