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短文バトル6回「部屋」

ある日、部屋の中に穴があいていた。大きさはお盆くらいの穴。
初めて見たときは壁で、時にフローリングや机にも穴があいていた。

この穴はのぞくたび見える風景が違う。真っ黒で何も見えないこともあれば、誰かの顔があらわれ会話することもあった。見たことのない物語や遊びにも触れられた。朝目覚めれば穴の前に食べものと水が置いてあるので、食事の心配もいらない。

最後に部屋を出たのはいつだったか、もう思い出せない。
この穴が、私の暮らしのすべてを埋めてくれる。



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10年ほど企画・マーケティング関連の会社にいました。 その時の激務で出会った仕事やすごい人々のお陰で今の自分がいるので、本noteでもよりよい仕事や働き方について模索していければと思います。