夜の公園で歌手と会う話 part2

前話の選択肢→③ 一度無視してから15分程寝て、こちらからかけなおす



「いや、ここは一度寝ておくか」

僕はそう決心し、友人の着信音をよそに、眠りに落ちていった。

「……」

……何時間が経っただろうか…。

しかし、目を開けると、窓の外は寝る前と打って変わらず、友人の着信音が未だに鳴っていた。

「…はぁ!?」

コール音が鳴っている携帯を手に取り、時間を確認すると、あれから15分しか時間が経過していない。

「こいつ、今までずっと電話かけ続けてきてたのか・・・?」

という発声と共に、コール音が鳴りやんだ。

着信履歴を確認すると、そこには15分の間に10件もの友人からの着信が入っていた。

「アイツやばいな…昼ドラのストーカー女じゃないんだから……」

半ばため息交じりになりながらも、僕は電話をかけ、呼び出し音が1コール鳴るやいなや、友人は電話に出た。

「おい! お前! ひどくね!? 俺昨日ちゃんと約束したよな!? もう集合時間とっくにスギちゃんなんだけど!? 一体何してんの?」

紹介が遅れたが、こいつ(友人)の名前は山城学(やましろまなぶ)。学とは小学校からの幼馴染で、口調はご覧のようにウザいが、これでも浪人の時はめちゃくちゃ勉強面や精神面のサポートをしてくれた恩がある。

学は僕とは違い、一緒に通ってた中学高校の成績は常にトップクラス、そしてテニス部の主将でスポーツ万能、おまけに中学2年の夏ごろに出来た彼女と同じ大学に進学し、今も幸せな学生生活を謳歌しているという。

それに引き換え僕といったら…と、幼馴染で親しい反面、いつも学を比較の対象として生きてきた。

「あぁ…ごめんごめん。ちょっと枕の質が良すぎてさ…」

「そっかー、それならしゃあないなぁ……、ってなるかアホ!! もっとマシな言い訳しろ! つまりは寝てたってことだよな!?」

「まぁ、そういうことになるね」

「あぁ~~~もう!! いいから支度して早く来い!! 集合場所は分かるよな!? 新宿駅西口の交番前だからな!!」

「はいはい」

いつもこうやって学を振り回してばかりなのだが、それでお互いの距離感が離れたという事は従来なかったので、僕は少しばかり図々しいと感じながらも、学の優しさに甘えさせてもらっている。

「あぁ、あと…」

「?」

「あぁ、いいや、なんでもない!」

僕は生まれつき勘が鈍い性なので、学がこの時何を言いたかったのか、全くもって理解できなかった。

ただ、昔から簡明直截な彼が、こうやって言葉を濁すような真似をしたことは、僕の知る限りこれまで一度もなかった。

「ん、おっけ。じゃあすぐ行くから。バイバイ」

「おう」

学の返事を聞いた後、僕はすぐに電話を切り、枕との一時の別れを名残惜しみながらも、急いで出かける支度をして新宿へと向かった。

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目的地に着いた。

久し振りの人混み、というか、僕は普段から外出すら自発的に行わない根っからの出不精なので、こういった場所は特に苦手である。

それから目的地で二、三分程暇を持て余していると、目の前から見覚えのある顔が近づいてきた。

「よ。元気か?」

学だった。電話で話した時とは、口調が少し落ち着いているようだ。

しかもその言葉のトーンは、過言かもしれないが、腫れ物に触るような感じでもあった。

例えるのなら、大学を卒業し、就職して四、五年が経過した頃に、大学の友人から「金の工面が悪くなり路上生活になってしまったので、助けてくれないか」という要求があり、それを快く引き受け、家に招き入れたときのトーン。といった感じだろうか。

まぁいずれにせよ、僕は相手が何を考えているのかを考えるのなんてあまり得意ではないし好きでもないので、ここらへんでやめることにした。

「うん。待たせてごめん」

「いや、こっちこそ暇だったからちょっとそこら辺ブラブラしてたせいで待たせちゃったわ。それにしても都心はやっぱカワイイ子多いもんだな~!」

「彼女さんに怒られるぞ」

「それもそうだなっ。じゃあ早速、タワレコ行きますか!」

そういって学は僕の肩を抱くと、半ば強引にレコード店へと連行した。


店の前に着くと、学はとても嬉しそうな顔でこちらを見た。

「CD買うのって、めちゃめちゃ楽しいよな!悟は、好きな歌手とか   いないのか?」

「うーん。僕あんまり音楽とか聞かないからなぁ…米津玄師とかは知ってるけど」

こういう欲しい物を前にした時の学は、いつも純粋な子供みたいで面白い。

「そっか。ま、視聴できるコーナーとかあるし、そこで聴いて気になるもんあったら言えよ!俺買ってやるから」

「そういうのいいって。先輩風吹かすなよ、先輩でもないくせに」

「おー言うようになったねぇ」

と、どうでもいい一悶着を終えた後、僕らは店内に入った。

僕はレコード店なんて興味がないもので生まれて初めてきたのだが、意外に店内の活気が僕の性にあったのか、くるものがあった。

カウンター近くには色んな類の楽器がショーケースに陳列されており、棚には、曲のジャンル毎に丁寧にぎっしり詰められたCDが並んでいた。

「悟、悪いけどちょっと二階の方先に見てくる!その間色々みててくれ!」

「あ、おっけ!」

と、店内の景観に見惚れていた僕は、とっさに大きな声で反応した。

一階には視聴コーナーも用意されており、試しに聴いてみようと思ったのだが、そこには先客がいた。

「……?」

見覚えのある顔だ…。どっかで見たような気がするぞ……。



◎選択肢

①→声をかけず、そのまま聴き終わるのを待つ

②→話しかける






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