summary13:「デザインの仕事」
ブックデザイナー・アートディレクター・イラストレーターとして活躍している寄藤文平が、これからデザインを仕事にしていきたい人や今の仕事にデザインを取り入れたい人に向けて、これまでの自分の知見を元に、読んだ人が、これからのことを考えるときの一つの「補助線」にはなれるのかもしれない、ということで書かれた書籍。
個人的な感想
この方のイラストは、学生時代から好きだった。今回は文章の書籍だったので、イラストほどの満足感は正直無かったけど、第一線で「一枚の紙や平面状に書かれたビジュアルによって何ができるかを考える仕事」をしている人ならではのエピソードや考え方が印象的だった。
この前テレビで、「量より質と言われるが、いま第一線で働かれている人は若い頃にものすごい量をこなしている」とのことを聞いて、この人もその一人なんだと思った。
学生時代から働いていた博報堂時代の「仕事の量の多さ」によって、やりとげる筋力がついた。と書かれている。
また、個人事務所を立ち上げる20代、一から全部一人で駆け回っているときに、同級生が組織で働き「残業代が…」とかいう話を聞いて、お金を「もらう」じゃなく「つくる」と当時から意識していたエピソードがあった。
やはり、どの業界でも一つ抜け出す人は、その意識と基礎やスキルを積み上げる量が必要不可欠なことを、再認識した。
これからの時代、AIや機械化が当たり前になっていくときに自分は一人の社会人として生きる術は、競争に勝つとかその次元ではなく、誰しも必要になってくると考える。
後半では、イラストやブックデザインについて述べられており、抜粋する。
イラスト・デザインについて
○かつて博報堂では、大貫卓也が神格化していたが、佐藤可士和のSMAPのプロモーションの際、三原色だけで成功を納めた。これを踏まえて、デザインはどんどん単純な記号の組み合わせになっていると考える。
どこまで説得力のあるストーリーを設計できるか。そこにお金が払われる。つまり、プレゼン能力にウエイトが増している。
○ロジックやストーリーといった道具は多く使いすぎるとインフレが起きてしまう。すなわち他と差別化できなくなる。
○ピクトグラムについて、やや近代的な無機質さがあると感じられていたが、現代には有機的なものと感じられる。
○ロジックや戦略が表現に与える。ロジックやストーリーの持つ大きさを知るようになって、その危険性を感じるようになった。
○「考えた分量」ということで見れば、「いい絵」というものを考えやすいかもしれない。
○キャラクタライズ(図説)について、イラストモジュールを使って重さや性質を表現する。
ブックデザインの仕事
○本や出版のあり方は変わるけど、本は残っていく。そのときブックデザインは何をしたら良いのか。今後、書店にあるとか目立つとかの意味はなくなることとなる。
「本」はどうあるべきかという、根本的な問題=ブックデザインに取組む理由になってくる。
○カバーにイラストを使うということ。
実用書などは目的がはっきりしているので、before⇨afterのように表現して、読んで得られる効能を絵で見せる。
加えて、タイトルを大きく打ち出すことが重要
○「いい本」と「売れる本」の両方を兼ね備えるデザインは、タイトルの大きさである。
○大詰めの段階
プロセスとしては、「最後の一歩」くらいであるが、労力としては「半分」ぐらいかかる。最後の一歩を諦めれば効率が劇的によくはなる。
○アウトプットの技術を体系化できるのでは
防災ハンカチのように、一つで数通りの使い方ができることが、未来のデザインの仕事を単純で多様なものにしていく
○合理的な思考法や「ブランディング」のような概念・操作・技術
「課題を解決する」「情報を整理して伝える」といったことのようにおもわれがちだが、そんなものではなく、クリエイティブは狂気のような一面があるのでは
実務的な見解が多かった。