経営者をその気にさせて「納得感」を醸し出す説得術と思考法

今朝のテーマは、組織内のコンセンサスを醸成してゆくプロセスと説得術並びに思考法についてお話します。

組織の基盤を支える総務・FM仕事は、組織運営を円滑かつ合理的に推進する為の「経費」や、組織行動をより活発にしてゆく為の投資等を行う、いわば「お金を使う」部門です。

その役割と提供価値をあまり知らない人たちからは、何ら付加価値を生まない『コストセンター』と呼ばれていますが、なかなかどうして多くの「価値創造」をしているのです。
問題は、その投資価値が見えにくい事にあります。

広義の総務・FM部門(情報システム部門等を含む)が管轄する予算額(ファシリティ/システム投資等の規模) は、人材投資金額(人件費)に次ぐ大きな予算を持っています。

よって、新規投資でお金を使う場合には、その投資の意義や期待される効果、そして利益寄与度を個別に示してゆくことが求められます。

然し乍ら、数値化して示せるものであれば簡単なのですが、数字に置き換えられない投資については、皆さんも説得に苦労される事があるのではないかと思います。

 
中でも、「オフィス投資」に関しコストとしか認識してくれない社長や担当役員に対して、「場」創り投資の意味を理解してもらう為には、経営陣に対し『現場の実情』を知ってもらう、日頃からの努力と「物語的説得法」並びに「ハイブリッド思考法」を身に付けておく事が大切です。

経営陣との会議や報告会議は、通常、社長室や役員室等で行われる事が多く、経営陣、特に社長は組織を下支えしながら実働している現場の状況や「温度感」を実感・体感する機会が少なくなるものです。

「若い頃は....!」の思いがあっても、偉くなってしまうと、自ずと周りが自分の所に来て、打合せや報告を受ける事が日常になってきます。

結果、現場の実態が見えないままですと、総務部門から『稟議』をあげても、「これ急ぎのものなの? 結構コストかかるけど、何とか安くならないの?」といった突っ込みが入り、説得に苦労する事になります。

いかにして、こうした突っ込みを、都度受ける事なく、稟議書を承認してもらうか! ........

私は、総務仕事の一つに、社長や担当役員を現場「視察」してもらえるような仕掛けやきっかけを作る事も総務の役目と考えています。

秘書室や社長室が役員のスケジュール管理をしている場合には、秘書室長や社長室長を味方に付けておく事も必要です。

この活動の意味は「現場」を見てもらう機会をつくり、その後のオフィス投資の意義を体感してもらう狙いがあります。

オフィス内の設備等のリノベーションを実施する前から、社長や財務担当役員に、現場を見てもらっていれば、劣化した設備状況を認識してくれていますから、実情をみて「この環境は酷いね!手当が必要...」そして「こんな環境では業務効率があがらないな!」といった感覚を体感して貰う事ができます。

要は、『百聞は一見にしかず』なのです。

また、「レイアウト変更は無駄」的な意識を持っている場合も、その場を使用しているチームの責任者から、視察時にさりげなく変更の必要性を直接伝えてもらう事で納得してもらえる事もあります。

総務部は、経営陣に対し、『執務環境の維持改善に投じるお金や、チームワーク力を向上させる意味あるお金を使っている』と実感してもらう「意識基盤」を作る努力を日常的に行なっておくことが重要です。

また、オフィス移転や増床といった大きな投資案件を承認してもらうには、可能な限りの詳細かつ納得感を感じて貰える財務的データや事業見通しのプロジェクションを準備しておく事に加え、経営者のヴィジョンや企業価値向上に資する「物語」のシナリオをスクリプトしておく事、更に、「ロジカルシンキング」「システム思考」「クリエイティブ思考」「アート思考」などを組み合わせた『ハイブリッド思考法』を駆使する事が重要です。

投資効果を数値化して見ても、あくまで「仮説」にすぎませんから、その「仮説」の実現可能性を「ストーリー」に仕立てて、経営者の「なるほど感」を醸成してゆくプロセスの巧拙が説得できるか否かの分かれ目となります。

総務FM人は、「場」つくりの「脚本家」兼「演出家」として、経営者の想いや個性(癖や人間性)を知り、景気動向や事業の客観的な見通しを認識しつつ、オフィス移転等の大規模FM投資が、価値創造(利益を生み出す)の源泉たる「社員のやる気」を発出させる有効投資であるとの「物語」を作る事が「経営を説得するツボ」です。

具体的手法並びにハイブリッド思考法については、またの機会にお話しします。

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