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今だけ、金だけ、自分だけ

三だけ主義

「今だけ、金だけ、自分だけ」という言葉を聞いた。このような価値観の人が増えているという。悪いことに全体の利益を考えるべき、上に立つような人が、積極的にこのような立場であることが多くなってきているようだ。

ネットで調べると、ピクシブ百科事典というものが出てきた。それによると、

別名「三だけ主義」

・今だけ
先の事を全く考えず、目先のことだけしか見ない刹那的な思考。

・金だけ
世の中の全てを金銭面・経済面だけで判断して、利益にならないものを蔑ろにする。

・自分だけ
文字通り自分だけが大事で他人(自分以外)への思いやりが欠如している。

https://dic.pixiv.net/a/今だけ金だけ自分だけ

簡単にまとめると、大変残念な人間のことである。

何が悪いのだ?

ただ、自分のことを考えると、多かれ少なかれ自分にも当てはまるんじゃないかと思う。また、近年の人であれば、自分がああ確かにこうだけれども、何が悪いのだ?となるのだろうか。

  • 先のことなんて考えるな。今でしょ。来年の話をしたら鬼が笑うっていうじゃない。これは今だけ思想につながるかもしれない。

  • お金は大事。老後にはある程度の貯蓄がないとやっていけない。綺麗事では生きていけない。そうだよね。

  • 自分のことではなく、家族、友達を大事にしています。聞こえは良いが、広い意味では自分だけ思想だろう。

さまざま言うことができるし、実際、心底そう思っている人も多いだろう。言い方によっては、別段悪いことではないようにも思える。

釈迦

ただこの人間の姿は、近年見られるようになったわけではなく、それこそ釈迦の時代から、本質的に人間はこうであって、これこそが人間個人個人の苦悩の根本であると、釈迦は見抜いたのである。

煩悩とも呼ばれるが、この強い欲求。この強い欲求が、苦しみの原因であると釈迦は見抜いた。それらを滅すれば解脱し仏となる。結局のところ、これらの欲求・渇望が満たされないことが苦なのである。

親鸞

さて、私は浄土真宗の坊さんでもあるが、親鸞聖人という方は、このような人間の基本的な性質を自らの姿として捉えられた。これは当たり前のように思えるが、本当の意味で、自分自身がこのような自己中心であると認めることはなかなか難しい。親鸞聖人のスタート地点は、まさに自分というものに対する正しい見方であって、自分がいかに自己中心的であるかと気がついたところにある。

結局、多かれ少なから皆「三だけ主義」?

結局のところ多くの人は「三だけ主義」だが、現実論としてその程度が問題なのだろう。親鸞が気がついたように、これらの「三だけ主義」的な煩悩は滅することが大変難しい。それらを滅することができれば、目覚めた人、ブッダ、仏陀、仏となるわけだが、生きた人間としてそれを達成する困難さを親鸞は身をもって経験した。よって、その後、念仏の教えに深く感動し、法然の弟子となる。

つまり、「三だけ主義」は他人の問題ではなく、少なくとも私もそのような要素を持っているし、この note.com 記事を書いているのも、自分が大事であるということの延長にあるような気がする。お金に将来的につながれば良いなと少しは思っている。他の人の note.com 記事なんて、ある意味どうでも良いと思っているような気もする。なんとも、くだらない人間であるなと改めて思う。

ただし、そのような思想が極端に大きいのは問題である。人を蹴落とす。騙して金を奪う。今が大事で将来の温暖化や財政破綻などどうでも良い。こういった思想が極端な人は、好ましい人間とは言えないし、そういう人が上に立つと、社会は下落の一途を遂げることは明らかである。ただ、そういうことが増えているというのだから大問題である。

まとめ

「三だけ主義」は突き詰めれば誰にでもある欲求や思考パターンであるが、それが自分のうちにあると素直に認めることこそが大事な第一歩であろう。仏教の視点(釈迦や親鸞の教え)が示すように、人は根本的に自己中心的であり、それによって苦しみを生み出す存在でもある。だからこそ、完全に“滅する”のは難しいとしても、その存在を自覚してほどほどにコントロールすることが必要になるだろう。

そして、もし「三だけ主義」が極端化して、「人を蹴落とす」「先の環境や社会を考えずに利己的に走る」などの行為に傾けば、やがて自分も含めた社会全体が大きな損失を被る。一方で、誰もが持つ自己中心性を糾弾するのではなく、「自分もそうだし、他者もそうかもしれない」という謙虚さと寛容さで向き合い、うまく折り合いをつけることが、より良い社会を保つカギになる。

最終的には、一人ひとりが「自分の中にも『今だけ、金だけ、自分だけ』を求める心がある」という自覚をもち、それをどう扱うかを日々試行錯誤することが大切ではないか。その内面の省察からこそ、少しずつでも他者への思いやりや将来への視野が広がり、社会全体を後退させずに済む道が見えてくるのだろう。


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