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染井吉野(ソメイヨシノ)と韓国の王桜(済州王桜)の起源を巡る争い ー 時系列まとめ

現在では、

  • 染井吉野はエドヒガン(母系)と伊豆七島に自生するオオシマザクラ(父系)の交配種。

  • 済州島の王桜は江戸彼岸(母系)とオオヤマザクラ/ヤマザクラ(父系)の自然交配種。

と分かっていますが、韓国では未だに日本のソメイヨシノを済州島に自生する王桜と混同し、「ソメイヨシノの起源は王桜」と主張する人がいます。ここでは、何故そのような誤解が生まれたのか、時系列で整理します。

1.そもそも、日本人がソメイヨシノは済州島原産の桜だと勘違いした

1884年~86年(明治17年~19年): 上野の桜を調査。この時、甲種(彼岸桜や江戸彼岸、etc.)、乙種(山桜や各種の里桜)、丙種(のちの染井吉野)の三種類に分けている。

1900年(明治33年): 1月25日発行の『日本園芸雑誌』に「染井吉野」と言う名前が登場。

1901年(明治34年): 東大教授・松村任三博士により、「Prunus yedoensis Matsumura」の学名が付けられる。

1908年(明治41年): 【朝鮮】済州島でフランス人神父タケーが桜を発見し、1912 年にドイツ人植物学者ケーネがこれを新種として認める。

1916年(大正5年): 中井猛之進博士(朝鮮の植物研究者)が「済州島漢摯山(ハルラサン)の森林に生じ稀品なり。分布、日本に広く栽培すれど、その産地を知らず」と記しており、この頃は済州島の桜とソメイヨシノを混同していた。

1912年~20年: ワシントンD.C.のポトマック河畔にソメイヨシノが植えられる。

1932年(昭和7年): 京都大学の・小泉源一博士が「染井吉野の原産地は済州島で、幕末に日本に持ち込まれた」と主張。

2.「染井吉野=済州島の桜」説の否定

1959年(昭和34年): 小泉説に疑問を持った竹中要(植物遺伝学者)が調査し、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラ(伊豆大島に自生する桜)の雑種だと発表。竹中は済州島にも調査に行っている。これにより、日本では小泉説は否定された。

ここ迄で分かる様に、日本では「染井吉野(ソメイヨシノ)」という園芸品種は1900年頃から認識されていた事になりますが、それが「エドヒガンとオオシマザクラとの交配種で、選別されて固定した園芸種」という事は1959年迄分かりませんでした。

ここで、日本が朝鮮を統治していた時代に遡ると、桜好きの日本人は朝鮮半島の各地にソメイヨシノを植えます。
そして、戦後、日本人が植えた桜は「日帝残滓」などという理由で伐採されます。有名なのは、日本軍の軍港だった鎮海の桜です。
cf. 産経:36万本が咲き乱れ…軍港・鎮海の桜に秘められた日韓110年の歴史を紐解いた

しかし、1970年代、再び韓国に日本から贈られた桜が植えられる事になります。59年に竹中要博士によってソメイヨシノが日本固有の園芸種だと発見された事は韓国では知られていなかったからです。

3.朴正煕大統領の号令で再び朝鮮にソメイヨシノが植えられる

1943年(昭和18年) 米国に亡命中の李承晩がアメリカン大学のキャンパスに桜を植樹する。(後にこれもソメイヨシノと判明するが、李承晩は桜が日本の物ではなく朝鮮の物だと認めさせようとしていた。)

▲ポール・ダグラス大学総長(当時)と李承晩

1962年(昭和37年): 朴万奎、夫宗休2名の植物学者が、鎮海の桜は済州島の王桜だと主張。

1974年(昭和49年): 朴正熙の大統領令による 「桜の大植樹運動」 開始。

70年代の朴正煕大統領による「セマウル運動」(地域開発運動)の支援として、日本人から在日韓国人を通じて桜の寄贈を打診。当時は日本のソメイヨシノは韓国の桜が起源だと信じていたので韓国側も了承し、日本人と在日韓国人により大量の桜が贈られます。鎮海の桜もこの時に復活。

4.ソメイヨシノの起源論争勃発

2009年(平成21年): 韓国のキム・チャンス氏(漢拏山生態文化研究所長)が、「ワシントンのポトマック河畔に日本からの寄贈で植えられた桜は済州島の桜である」という論文を書く。
根拠の1つはアメリカ農務省による遺伝子検査だと主張していたが、米国では2007年に済州島の王桜と日本のソメイヨシノのDNA鑑定をして、既に別種だと判明している。
cf. 『第63回 「ワシントンDCの桜とDNA特許」

これ以降、韓国では「王桜はソメイヨシノの起源」であるという説が信じられ、毎年、桜の季節になるとそれを言い出す事になる。

2017年(平成29年)1月: 日本の森林総合研究所が学名を整理。これにより、王桜の学名が「Cerasus × nudiflora (Koehne) T.Katsuki & Iketani」と命名され、ソメイヨシノの学名「Cerasus × yedoensis (Matsum.) Masam. & Suzuki 'Somei-yoshino'」と区別された。

同年、国立山林科学院 暖帯亜熱帯森林研究所が済州島の桜の群生地・漢拏山(ハルラサン)で選んだ優良な桜を「基準母樹」とし、これを増やし始める。

5.韓国でのゲノム解析でソメイヨシノと王桜は別の品種と判明。しかし…

2018年(平成30年): 韓国の国立樹木院が済州島の王桜と日本から得たソメイヨシノのゲノム解析・比較して、別種と発表。ワシントンの桜も日本のソメイヨシノである事を認める。
但し、これ以降も、毎年桜の季節には「ソメイヨシノ韓国起源説」の記事が出続ける。

▲ソメイヨシノ(日本ソメイヨシノ)と王桜(済州ソメイヨシノ)のゲノム解析

※調査結果を報じるハンギョレ新聞の記事(2018/09/13):한·일 ‘벚꽃 원조’ 논란 끝? 제주 왕벚나무 ‘탄생의 비밀’ 확인
※大元の論文(2018/09/04):Draft genome sequence of wild Prunus yedoensis reveals massive inter-specific hybridization between sympatric flowering cherries
※上図が示す様に、済州島で選抜された5本の王桜(緑の点)の内1本は、実はソメイヨシノだと判明。

2020年(令和2年): 韓国の国立樹木院は『国家標準植物目録』で、王桜を自生植物から削除し、栽培品種「王桜」として再分類。これにより、済州島の同種の桜は「済州王桜」と呼ぶ事を決定。(しかし、キム・チャンス博士は「生物主権の放棄だ!」と、頑なに認めない。)

2022年(令和4年)1月: 元国立樹木院の人を含む有志が「王桜プロジェクト2050」発表。
現在植えられている桜の品種を調べ、2050年迄に日本のソメイヨシノを王桜に置き換えるというプロジェクト。しかし、国民の関心は得られない様子。










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