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【報告】キノコ博士と歩く「寿庵きのこクラブ」(第13回)~初夏のキノコを探す~(7/2)
梅雨の晴れ間に開催のきのこクラブ。前回とは違うキノコたちに出会えました。報告は菌蕈研究所の牛島先生です。
7月に入り、日差しも気温も強く高くなって、本格的な夏の到来となりました。大山寺エリアでも日差しはジリジリと強かったですが、森の中は木々がうまく日差しを緩和してくれて涼しい風に癒されました。中国自然歩道を検討したのですが、事前の下見でキノコが非常に少なかったので、大山寺周辺を散策することにしました。
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まずは、霊宝閣の周りの苔むしたところや石垣を見てみることに。
ここは石垣の間からキノコが出るスポットなのですが、地面に近いところで子のう菌類のクロノボリリュウが出始めていました。灰黒色の鞍型の頭部と縦脈のある白灰色の柄が特徴です。昨年は石垣の間からマンションの住人のようにように顔を出してました。近くの落ち葉にはホネホコリの仲間と思われるものも沢山発生。賑やかです。
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少し目を上にやると立派なアカカバイロタケがたくさん出始めていました。傘は名前の通り赤茶色です。その臭い(古くなった煮干しのような臭いと言われる)が特徴です。アカカバイロタケはベニタケ属のキノコ、樹木と共生している菌根菌です。ベニタケ科のキノコはよく似たような種が多く、肉眼形態での同定が難しいものがほとんどですが、この種は見た目で判断しやすいキノコの一つです。
石垣の苔からは、小さい可愛らしいヒナノヒガサが顔を出していました。苔があるところにはよく生えるキノコです。この小ささでも毒キノコです。
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ブナの樹下をよく見るとブナの殻斗から、ブナノホソツクシタケが生えていました。とても細いクロサイワイタケ属の子のう菌類のキノコです。ブナノシロヒナノチャワンタケの後によく生えているのを見かけます。この時期は先端が白い分生子で覆われます。近縁なものにホオの果実から生えるホソツクシタケがあり、よく似ています。
石畳の参道を進むと、倒木にはチシオタケが綺麗なフリルを広げていました。
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その近くには、傘は紅色で、管孔は黄色で傷をつけるとすぐさまに青緑色に変色するイグチがありました。コウジタケに近いような気がしましたが、どうも麹のような甘い香りはせず、不明種(Boletus sp.)ということに。このキノコは共生菌ですから、おそらく周辺のブナやミズナラ、あるいはシデ類と菌根を形成して共生しているでしょう。
水辺近くには灰色のナガエノチャワンタケ(子のう菌類)がありました。その名の通り柄を伸ばしたチャワンタケといった佇まいです。例年シロキツネノサカズキが生える場所を探してみたのですが、今年はどうやら出ていないようです。
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草むらには傘の縁に白い被膜の名残がある腐生菌のイタチタケが生えていました。朽木の周りなどよく生えます。ひだは成熟すると濃い褐色になります。林床の腐植を栄養源にしているやや壊れやすいキノコです。
大山寺を経て川辺を歩く道へ行きました。
斜面にはベニタケ属のキノコ、ヤブレベニタケが生えていました。このキノコは傘と柄は紅色です。ひだの縁の一部(傘の周縁に近い部分)が紅色に縁取られています。
キショゲンジは全体が黄褐色のキノコです。傘は黄褐色の細かい鱗片があります。柄にも膜質のツバがあります。ショウゲンジと名前が似ていますが、比べてみると全然違います。大山寺ではよく見かける種類の一つです。
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冬虫夏草のカメムシタケも見つかりました。冬虫夏草の時期でもありますね。
ベニタケ類がたくさん生えてくると、夏のキノコの季節の到来を感じさせてくれます。また同時に変形菌も沢山みることができ、楽しい季節になってきました。
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何気に見ている菌類・キノコ、大昔に彼らが出現したおかげで今日の地球と我々の生活があるようなものなのです。
そんな菌をとおして森を観ると、より森の息遣いが聞こえてくるような気がします。
今年の大山寺におけるキノコ類、変形菌類の顔ぶれはどう移り変わっていくのか、季節を追って引き続き観察したいと思います。
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報告ありがとうございます。写真は牛島先生と参加者のKさんからいただきたものを掲載です。次回きのこクラブは9月2日(土)になります。ぜひ気軽にご参加くださいね。会費は1000円になります。
クラブ以外にも毎週ツアーを開催。ツアーの報告はこばガイドのインスタやFacebookなどで報告が上がっておりますので、ぜひチェックしてくださいね!
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