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飯田医院 第4話
風呂に入って足の裏に違和感を覚えたので見てみると、なんか白っぽい火山のようなものが3個あった。それは硬くて指でほじっても取れなかった。
風呂から上がって母ちゃんに聞くと、それは「魚の目」というものらしい。
なんじゃ そりゃ?
魚の目ってどー言うこと!俺の足の裏に魚が住んでるんか!!歩くと少しいてーし、どーしよーと思ってたら飯田医院へ行けと言われた。
次の日学校から帰って飯田せんせのとこへ行った。
「なんじゃ、今日はどしたんや」
「なんかさかなの目玉がある」
「あほ、うおのめって言うんじゃ」
いきなりせんせはニコニコしながらメスを持つ。
「どりゃ、切らせろや」
へ?切るんかい!麻酔は?
「せんせ麻酔するんやろ?」
「おー、忘れるとこやった。昔軍医の頃は麻酔なんかせんとよー切ったぞー」
おいおい、今は戦時中じゃねーし!はよ麻酔せーや!!
どー考えても麻酔の方が痛い
3個いっぺんに切ると言い出して、3か所の魚の目の周りに次々と麻酔を打っていくせんせ。特に小指の先のヤツが死ぬほど痛い。
「もうやめてやー。いてーってー。頼む、やめてくれー」
「うるさい、黙っとけ!」
容赦なく麻酔を打ち続けられ、泣きながら診療台にあった枕を両手で引きちぎった。
「あーっ、おめー枕壊したなー。もう1本打っちゃる!」
死んだ・・・。声もでない。みなさん、今までありがとう。
結局なんで切る必要があったのかは
知らされないままに切除は終わった。
「縫ってあるでな、明日はそーっと歩け。傷口開くとまた縫うぞ。」
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次の日学校でみんなとふざけていると、足の裏から違和感が・・・。ズックを脱いで、靴下を脱いでみると。ありゃー、昨日縫った傷口がパックリ裂けていた。
「ほえーっ、どーしよー!」
いきなり泣き出した俺をみんなは遠巻きにして励ましてくれた。
『理由も知らんと励ますなやー』と思ったけど言うのは我慢した。
『あー、また飯田せんせに痛い事されるんかー』
もう死刑執行日が決まった死刑囚の心境だった。なんとかセメダインでくっつかんかなとか浅知恵を絞ったが、もっと怒られるだろうと思いやめた。
結局飯田せんせに
そのあと何をされたのか記憶がない。恐怖のあまり脳が記憶を隠してしまったのかも知れない。麻酔が痛いのだけは鮮明に覚えているが、メスで切る痛みは今も知らない。
何日かして風呂屋で足の裏を見たら、なんと反対側の足に魚の目が出来ていた。慌ててお湯でふやかして必死で指でほじくったら取れてしまった。
最初からこーすれば良かったんかー。切られ損やなー。せんせ切りたかっただけかい!まあ、治って歩けるからいいけど・・・。