松任谷由美「影になって」 【ゲイに刺さるシティポップとは?】
ユーミンです。
もう、この人の作品でそこそこのコンピレーションができそうなくらい、シティポップの代表作をかかえてるひとですね。
その中でもまず、今回は1979年に発売されたアルバム「悲しいほどお天気」に収録されている「影になって」。
フォークな楽曲でデビューしたユーミンだけど、
「コバルトアワー」あたりから加速させていったフュージョンぽさにも、
この「悲しいほどお天気」になると洗練さが加わり、
この辺から81年の
「昨晩お会いしましょう」の「街角のペシミスト」や
「パール・ピアス」の「ようこそ輝く時間へ」や「パール・ピアス」
につながっていってる。
これ系のユーミンが最高にかっこいい!
なんて不思議な光を浮かべた霧の夜なの
どこへ続くの 街路樹の影たち
指が痛いほど 残らずダイヤルしたけど
呼びだしの音だけが耳の底にくりかえす
こんなときはすぐにワードローブちらかし
くたびれたシャツを選んで
外へ出てゆこう 少し背中まるめ
踊るように歩こう
最終の電車が響き残して流れた
いちばんなつかしい遠いイメージのように
冷えだした手のひらで包んでる紙コップは
ドーナツ屋のうすいコーヒー
真夜中は全てが媚びることもなく
それでいてやさしい
※むかし確かにどこかで出逢った一枚のネガ
淋しい心から きみを自由にする
かるく透き通らせて※
(※くり返し)
なんて不思議な なんて不思議な霧の夜なの
どこへ続くの 街路樹の影たち
歌詞は都会が舞台。
うっかり孤独を味わう羽目になった主人公が、
「夜」とか「闇」のなかで、自分も影になって、
惨めな自分を媚びる事なく受け入れてくれる、
そんな優しさに一種の居心地の良さを感じてる、不思議な夜についての歌です。
この歌詞、ゲイにはグッとくるんじゃないでしょうか。
「淋しい心から きみを自由にする 軽く透き通らせて」なんて。
「消えてしまいたい」なんてワードが昨今よく聞かれますが
そんな気分を謳っている歌なのかもしれないですね。
これを聞くと、そんなしょーもない気分の時は
自分も夜の散歩でもして、自分を笑い飛ばしちゃいたくなる。
ユーミンは、これ系の世界観をちょいちょいドロップするんですよね。
「街角のペシミスト」しかり「Babylon(アルバムDa.Di.Da収録)」然り。
しかも、この曲、ユーミンには珍しく、字余り気味に歌詞を乗せてるんですよね。当時では結構斬新だったんじゃないかな?
ポエトリーリーディング(詩の朗読ですな)みたいで、素敵。
この曲以外であんまりやってない気がするけど、実験的だったのかな?
サウンド面でいうと、
Mary J Bligeが1994年に大ヒットさせた「Be Happy」で使われた、
Curtis Mayfieldの「You’re So Good To Me」のサンプリングや世界観に近いということで、その後ヒップヒップDJにも注目された曲でもあります。
あーかっこいい。