南陀楼綾繁編『中央線随筆傑作選』(中公文庫、2024年)のなかに拙著『喫茶店の時代』(ちくま文庫、2020年)に補っておきたい一節を見つけたのでここにメモしておく。
福田清人「中央線雑記」のなかに出てくる《Uという酒場》。福田は1904年長崎県生まれ。東京帝国大学文学部国文学科卒業。昭和4年(1929)第一書房へ入社し『セルパン』初代編集長を務めるなどした後、文筆生活に入った。
文中《Uという酒場》は相良よし子が経営していた「ユーカリ」であろう。相良はダンスホール・フロリダのダンサーを経てジャズ歌手のパイオニア水島早苗となる。相良は「ヨッちゃん」「ヨッぺ」と呼ばれ、植草甚一によれば不良少女(モダンガール)の第一号らしい。昭和三年には「ユーカリ」のすぐ筋向いに百田宗治が引っ越して来たりもしている(詳しくは『喫茶店の時代』p261-263)。