Then am I A happy fly,
「ブ」のつく店でウィリアム・ブレイク『無垢と経験の歌』(オックスフォード大学出版、1988)を見つけました。
ウィリアム・ブレイク(William Blake, 1757 - 1827)は1789年に独自の銅版画技法によって印刷した詩集『無垢の歌』(Songs of Innocence)を発行しました。その後、詩集『経験の歌』(Songs of Experience)も制作しましたが、単独では刊行されることなく、『無垢の歌』と『経験の歌』を一つの詩集として1794年に発行されたのが『無垢と経験の歌』です。
The William Blake Archive
http://www.blakearchive.org/blake/main.html?java=no
オリジナルにもいくつかの版があるようですが、本書は1967年にニューヨークのオリオン・プレス(Orion Press)とパリのトリアノン・プレス(Trianon Press)が協力して発行した版を1970年にオックスフォード大学出版がペーパーバックとして刊行しました。その1988年版です。
トリアノン・プレスのアーノルド・フォーカス(ARNOLD FAWCUS)の序文によりますと、1955年にウィリアム・ブレイク財団からごく少部数で限定出版されただけの、英語で書かれた最も素晴らしくそして愛らしいの詩がいくつも含まれるこの詩集を、もっと広く人々が容易に読めるようにしたい、そういう意図で出版したそうです。
その言葉の通り、それぞれの詩につけられたイラストレーションはすべてカラーで再現されており、本文テキストも原詩を忠実に写し、その刷色も版画にならって赤茶色になっています。紙の色もクリームがかっており、マットで気持ちいいなあと思いながらサラサラめくっていると、「THE FLY.」という詩が目に止まりました。蠅を歌う詩というのは案外珍しいのではないでしょうか?
英語もそんなに難しくないようですので、原文のみ引用しておきます。本書のテキスト通り(細かい点が異なるテキストもネット上で見られます)。
幕末の漢詩にもノミやシラミを主題にした詩があります(ハエはどうだったか今すぐ思い出せませんが)。ただ、それらは虫たちの様子を巧みに描写するにとどまっているようです。ブレイクのような視点はありません、というか、東西を問わずどこにも、誰も、ブレイクのような境地を歌う詩人はいないのではないでしょうか。絵もそうですが詩も飛び抜けています。
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