菅田正昭離島論集〈共同体論〉
『菅田正昭離島論集』の装幀を担当しました。初校ゲラのときに部分的に読ませてもらい、その感触から、古い地図の島の部分だけを取り出して大きく拡大して模様として使ってみました。タイトル文字を大きくタテ一行というのは最近の傾向からすると古臭いかもしれません。しかし論調からして少し古いタイプのデザインが似合うような気がしたのです。文字の色も小生の持つ島のイメージで深い緑に。島の模様は一種類だけなのですが、それをジャケット・表紙・扉の三箇所に変化をつけて配置しました。いい感じに仕上がったと思います。
今、本になったのを改めて面白く読んでいます。言葉を掘り下げて解釈するということは多くの先人が行なってきましたが、島という主題に絞った菅田氏の論考は非常にエキサイティングです。ごく一部だけ引用してみましょう。ウミとシマの語源考察のくだりです。
古代人は〈湖〉も〈うみ〉としていたそうですけれども、その意味するところは
では大海を何と呼んでいたのか? それは〈あま〉です。これは天と海との両儀を持っています。そして、山(ヤマ)と天(アマ)がはっきり区別されていたにもかかわらず、天と海の区別は曖昧でした。
イザナギとイザナミによる「国土生み」神話は実際には「島々の生成」であり本当は〈島生み〉神話というべきで、『古事記』本文冒頭のこのくだりには「海」は出てきません。
さらに島(シマ)とは何かについても示唆に富む記述が続きます。まず「マ」とはアマ(天・海)、ヤマ(山)、シマ(島・縞)、イマ(今・居間)に共通する「間」(空間性)を意味するそうです。
以前の著者はシボム、シジム(チヂム)、シボルの義をもつ「シ」を考えていたそうです。〈圧縮された小さな間=場所〉という語感があると。しかし今世紀になってからはシクの語幹のシで考えるようになったとおっしゃいます。「敷く・布く」および「頻く」。そうするとシマは
この説が妥当かどうかについては議論のあるところかもしれませんが、言葉の世界はなんとも広く深い海のようなところだなあと感嘆しながら、読み進めています。
菅田正昭離島論集〈共同体論〉
2024.01.30 初版第一刷発行
四六判 糸篝上製本 扉共紙216頁
+B5ペラもの(ミカンバエ防除に関する説明書)2丁づけ(1°/1°本文用紙8頁分)
装幀 林哲夫
発行 みずのわ出版
https://www.facebook.com/Mizunowashuppan
印刷 ㈱山田写真製版所
製本 ㈱渋谷文泉閣
プリンティングディレクション 黒田典孝(㈱山田写真製版所)
[用紙/刷色]
カバー 竹はだGA 四六判Y目 110kg K+DIC389/2°
表紙 モデラトーンGA ナチュラル 四六判Y目 90kg K/1°
見返 モデラトーンGA ナチュラル 四六判Y目 135kg
本文 ラフクリーム琥珀四六判Y目66.5 kg K/1°
花布 A46
スピン A13