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講談社 少年少女文学全集

『乾河』99号(齋藤健一、2024年2月1日)

齋藤健一、砂東かさね、冨岡郁子、夏目美知子、四人の詩人たちが続けておられる詩誌です。100号にもなろうとするわけですから主宰者や同人にも変遷はあったでしょうが、私は齋藤氏が参加してから頂戴するようになりました。

齋藤氏とどうして知り合ったのか? たしか、同人雑誌『ARE』を編集していたときに、氏は新潟にお住まいですが、大阪へ出張に来られるので、『ARE』の編集人に興味を持たれたようで(『ARE』は詩人の同人が多かったためその存在をご存知だったのでしょう)、わが家を訪問したいと手紙が来ました。では、どうぞということで、ご来駕願ったのでした。京都の上桂に住んでいたときです。齋藤氏の武勇伝というか高橋新吉をはじめとして自分がこれと思った詩人には遠慮なく面会すると言うお話を聞いたことを覚えています。

その後、2000年になって、私も新潟の絵屋で絵の個展をすることになり(「洲之内徹」で知り合った大倉宏氏の縁によるものです)、新潟の土を初めて踏んだときには、齋藤氏が山菜茶屋で歓待してくださいました。それから今日まで都合五回の個展を絵屋で開催しています。そのたびに施される齋藤氏らの暖かいもてなしに感謝しかありません。お酒もおいしい、ラーメンも。

どなたの詩もいいのですが、ここでは書物の話題ということで、夏目美知子さんのエッセイ「一瞬だけど」より書物に関するくだりを引いておきたいと思います。各人のエッセイがみごとなのも本誌の特徴です。夏目さんは少年少女文学全集についての少女時代の思い出を書いておられます。

そう、この講談社発行の全集は、子供向けとして、戦後十数年頃に出た画期的なものだった。赤い硬い表紙で箱もついていて、背は皮のようで、全五十巻だった。漸く社会が軌道に乗って来た事を示すものだったと思う。父が私の為に最初の一冊を買って来てくれたのが、十一歳のクリスマス前であった。子供向けのダイジェスト版なので本格的に読んだ事にはならないのだが、代表的な多くの読み物に触れることは出来たのだと思う。

p12

この全集は講談社の創業50周年を記念して1959年(昭和34年)から1962年(昭和37年)にわたって刊行されました。夏目さんはこの全集によって初めて、住んでいる境遇以外の広い世界を知ることができた、と言います。

古本海ねこ 講談社 少年少女文学全集
http://www.umi-neko.com/book/koudanshashounenshoujo/koudanshashounenshoujo.htm

「ああ無常」や「家族ロビンソン」や「愛の妖精」「リア王」。小説は自分を養ってくれた。私は、あの頃、柔らかくどこまでもふくらむ一方だった。見えない所にある世界を次々に知ろうとしていた。代表的な小説以外の、例えばメリメの「マテオファルコーネ」、モーパッサンの「ジュールおじさん」ルイ・フィリップの「小さな町で」等々、沢山の短編も貴重だった。
思う端から、それが脳内から消えていく最近の現象を憂えつつ、成長期にワクワクしながら読んだ小説が、未だすぐ近くにあるように感じるのは嬉しくもある。打ち枯れてはいるが、一瞬の最後まで、出来ることをしたいと思う。

P12

それしかないです。

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