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小柄で、醜く、優しそうな、縮こまった、ガニ股の、丸い肩の、凹んだ胸の、貧相な人たち


Isabella Bird『UNBEATEN TRACKS IN JAPAN』 (JOHN MURRAY, 1893)

イザベラ・バードの『日本奥地紀行』の第4版を入手した。初版は1880年で二巻本だったようだが、本書は一巻本。下鴨の三冊五百円で・・・はなく、こちらは「さんちか古書大即売会」の目録から格安にて。

かつて拙著『古本スケッチ帳』(青弓社、2002)に収録した「旅の道具」(初出「「書評」のメルマガ」2001.7.10)で平凡社ライブラリー版の感想を書いているように、イザベラの旅行記というか観察記録をきわめて面白く読んだ記憶がある。

例えば横浜に上陸した直後の日本人の印象はこんな筆致だ。

The first thing that impressed me on landing was that there were no loafers, and that all the small, ugly, kindly-looking, shrivelled, bandy-legged, round-shouldered, concave-chested, poor-looking beings in the streets had some affairs of their own to mind.

p4

これを無料DeepLに訳してもらうとこうなった。

《着地して最初に印象に残ったのは、ローファーがいないこと、そして通りにいる小柄で、醜く、優しそうな、縮こまった、バンディな脚の、丸い肩の、凹んだ胸の、貧しそうな人たちは皆、自分のことを何か考えているということだった。》

少々補足しておく。《着地》は上陸。《ローファー》というのはルンペンのこと。《バンディな脚》はガニ股である。《貧しそう》というのはニュアンスが違うだろう。上記「旅の道具」の引用によれば「貧相な」、見かけがパッとしないという意味。《自分のことを何か考えている》は皆自分のことで精一杯というニュアンスか? 

内容について触れているとキリがないので、ひとつだけ。イザベラのウィキペディアを読んでいて着目したのがこの人物。

She got interested in Japan through John Francis Campbell's "My Circular Notes, 1876", and asked the advice of Colin Alexander McVean, former chief surveyor of Japan's Survey Office, in February 1878, then went travelling again, this time to Asia: Japan, China, Korea, Vietnam, Singapore, and Malaya. She got interested in Japan through John Francis Campbell's "My Circular Notes, 1876", and asked the advice of Colin Alexander McVean, former chief surveyor of Japan's Survey Office, in February 1878, then went travelling again, this time to Asia: Japan, China, Korea, Vietnam, Singapore, and Malaya.

Wikipedia「Isabella Bird」

翻訳は略するが、コリン・アレグザンダー・マクヴェインがかなり興味深い人物である。幕末に日本へやって来た御雇い外国人の最初の一人だったようだ。徳川幕府の募集に応じて選抜され来日したとのこと(その後は明治政府に引き継がれた)。非常に詳しい紹介サイトがあるのでぜひご覧いただきたい。あの灯台のブラントンとともに来日していたというのも意外だし、ケンカ別れしたというのも驚き。

Colin Alexander McVean, FRGS (6 March 1838 – 18 January 1912) was a Scottish civil engineer who made a considerable contribution to Japan's engineering development in 1870s.

Wikipedia「Colin Alexander McVean」

近代日本の技術発展に貢献したコリン・アレグザンダー・マクヴェインの生涯(前編)~スコットランドから来たお雇い外国人https://serai.jp/tour/1114093#google_vignette

本書には挿絵が40点ある。例の独特なオリエンタリズムの画風なのだが、それはそれで見どころいっぱい。目に止まったものを掲げておく。

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