風の歌を聴こう
ぬるい風が街の光によって少し湿度を落とす気がする。ハイエースの風量を最大にしてとにかく海へ向かう。
ラジオでは夏はもう終わりと、そう思わなければとにかく悲しいと。セミが猛烈に鳴く時季は過ぎた。あとは暫くの暑さを浴びて、やがて項垂れて、また寒さの始まりを待ち、項垂れる繰り返し。
そして、特に暗い海を選んで、今日は缶コーヒーとタバコ。ここでは冬の日本海は煩いことを思い出す。荷台につけたベッドで、ここでは湿り気のある風を浴びた。
虚無の教室時間が刻一刻と迫る十代の記憶によって、夏が終わることを悲しく思う。
相棒はいない。ジェイズ・バーもアパートもない。大量のビールを飲むには、ここが街ではなさすぎる。それよりも相棒がいない。相棒は帰った。
僕と相棒の別れによって、少し早い夏を感じなければならなくなった。湿り気を和らげる街へ帰る。風の歌を聴こう。