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狭い
暗い狭い小さな部屋はひとつ寝返りを打てばスーツケース、また反対に寝返りを打てば少し冷たな右腕。ひらひらしたカーテンの隙間からは高層ビルが見えて、窮屈な街に窮屈に押し込められた身であると実感する。
薄手のブランケット一枚をそれぞれがくるまる。胎児のようにきゅっと小さくなる緑の少し冷たい生き物、窮屈から窮屈を眺める私。残念なことに薄手のブランケットは私の下半身を覆わず、その役割は不十分となる。
ロビーのBGMはよくある保留音だったことを思い出し、しばし冷静さを欠落させていた自分を思う。
このままいつか、薄い壁から鳥の声でもしだしたら、悲しいのかもしれない。少し冷たい生き物の微動で起きるのか、少しだけしか来ない窮屈さを生き延びた光で起きるのか、それなら鳥の声がいい。
役割を全うしないブランケットで凍える身は、冷たい生き物ではきっと補えない無念だ。