アップル(AAPL)が預金口座サービスを新たに開始
ハイテク大手のアップルは、自社の「エンジン」を活用した新たな収益源を模索し続けている
金融企業の多くは、高金利環境を活用して、高利回りの預金口座や金利の高い譲渡性預金といった金融商品を積極的に宣伝しています。そこに、新たな企業が加わりました。iPhoneメーカーのアップルが、金融サービス大手のゴールドマン・サックス(GS)との提携により、この分野に参入したのです。
アップルが提供する新たな金融商品の内容と、投資家として注目すべき理由について説明します。
アップルのクレジットカードがベース
2019年夏、アップルはゴールドマン・サックスを発行元とする提携クレジットカード「Apple Card」を発表しました。Apple Cardのユーザーは、Apple Payでの支払いにApple Cardを使用すると代金の2%、Appleストアでの買い物に使用すると3%、その他の支払いでは1%がキャッシュバックされます。その他にも、カード番号やCVVコードがカード本体に印字されていないなど、プライバシーやセキュリティに配慮した独自機能や、チタン製のカードデザインといった特徴があります。
このカードは大成功し、顧客満足度では上位にランクされ、Apple Payの利用急増に貢献しています。
アップルは2023年に入り、ゴールドマン・サックスとクレジットカード大手マスターカードと提携し、新たな金融サービスとして後払い決済(BNPL)サービスを開始しました。
今回新たに開始される預金口座は、アップルがこれまで拡大してきた一連の金融サービスをさらに強化するものです。
Apple Cardのユーザー向けに提供される預金口座は、年換算利回り(APY)で4.15%という高い収益率を誇ります。アップルは、利率は今後変更される可能性があるとしています。預金口座はAppleブランドで、Apple Cardのユーザーを対象としていますが、提供元はゴールドマン・サックスです。つまり、アップルはこれまでと同様に、自社ブランド金融商品の銀行業務面をアウトソースしているということです。これは決して驚くことではありません。結局のところ、アップルは金融企業ではないのですから。
アップルによれば、預金口座のAPYは現在、「国内平均の10倍」であり、手数料は無料で、最低入金額や最低残高といった条件はありません。さらに、Apple Cardからのキャッシュバックが、この預金口座に自動的に入金されるように設定することもできます。
全体として、この預金口座は、アップルが提供する一連の金融商品の魅力を一段と高めることになると思われます。
アップルはサービス部門を強化
今回の高利回り預金口座は、アップルが忠実な顧客基盤を収益化する方法を模索し続けていることを示しています。同社の経営陣は、アクティブ端末のインストールベースが、サービス部門が成長するための「エンジン」であると述べています。そして、アップルのサービス部門は、同社の事業全体にとって、ますます重要性を増しています。
アップルのサービス部門は主に、Apple Music、Apple Pay、AppleCareといった自社のアプリやサービス、およびサードパーティのアプリから収益を得ています。2022年度(2022年9月期)のサービス部門の売上高は前年比14%増の780億ドルとなりました。ちなみに、アップルの2022年度の総売上高は約3,940億ドルでした。経営陣は第4四半期の決算説明会の際に、サービス部門の事業規模が過去4年間でほぼ2倍に拡大したことを明らかにしました。
今回、ユーザー向けの新サービスが追加されたことで、アップルが自社の巨大なユーザー基盤を活用しようとし続けていることが明らかになりました。経営陣は2023年度第1四半期の決算説明会で、アクティブ端末のインストールベースが20億台を超え、わずか7年間で2倍になったことを明らかにしました。
アップルのティム・クックCEOは、「これは、当社の製品やサービス、そしてエコシステムの強さを示す、何よりの証拠です」と述べました。
アップルが現時点で提供する主な金融商品は、Apple Pay、クレジットカード、後払いサービス、高利回り預金口座ですが、今後さらに多くの商品が登場すると思われます。