本との遭遇覚書・一億百万光年先に住むウサギ
この本知ってる!
店でよく聞く言葉です。自分が知っている本があることに興味を示し、それが購入に繋がることがある。
大吉堂はYAをメインに扱い、古いライトノベルにも力を入れています。そうすると「知っている本」が見当たらないという場合もあります。大抵の場合戸惑われます。そして均一台の中に流行作家の本を見つけて、ホッとするのですね。
ああ、知らない本が知らないが故に購入に繋がるということがほとんどないのだなあと思い知らされます。
僕は自分の知らない本に遭遇すると嬉しくなるのです。こんな本があったんだと喜ぶのです。それが手に取るきっかけになることも多いです。
もちろん自分の興味あるカテゴリの本での話ですし、今までの経験で得た面白い本探しアンテナに引っかかる本であることが前提ですが、知らない本がそこにあることに喜ぶのです。
『一億百万光年先に住むウサギ』(那須田淳)との遭遇は、そんな喜びの一冊。
所謂ハードカバーの本であらすじもなく、作家の名前も申し訳なくも当時知りませんでした。でも気になったのです。
タイトルの響きから来るものだったのかも知れません。ミヒャエル・ゾーヴァによる表紙絵に惹かれたのかも知れません。何よりも大きな要因は児童書コーナーにあり、どうやら中学生が主人公であるとのことから感じ取ったものかも知れません。
手に取り、読んでみました。全く何の前情報もなく読んだ本。それまでYA作品をあまり読んでこなかったので、これが物語の核かなと思ったものが次々と軽く流されて戸惑う。でも読み進めてたどり着いた先は、なるほどと納得させられるものでした。
今ならば早い段階で物語の流れを掴めたかも知れません。しかしあの時は一歩一歩確かめるように進むのが楽しかったのです。知らないジャンルの面白さ、YAというジャンルの面白さに気づかされたのはこの本によってだったのです。
この本に遭遇したからこそ、大吉堂をYAメインの古本屋にしたのです。
知らない本に手を出すのは難しいです。怖いです。でも楽しいことでもあるのです。それを体感できる棚になっていればいいなと、日々棚に本を並べるのです。
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