#27 がんじがらめの
-こっちじゃない、こっちじゃない、すると-
いつからか
かなしばりというものが起こるようになった。
深い睡眠に入る直前くらいになることが多い。
僕は昔からなかなか寝付けないことはなく
あまり時間が経たないうちに眠りに入る。
だが、かなしばりが発生する時は
ふわーっと眠りに入ろうとした瞬間、なんだか怖い気持ちになる。
怖い気持ちというのは
例えるなら、もし今部屋の隅に女性の霊がいたらとかよくある心霊的な怖さだったり、なんだか分からないけど怖い、恐ろしいという気持ちになり、そのあとだいたい身体は動かなくなる。
目も開けられないし、息苦しくなる。
うぅーっとうめいて、かろうじて動く足先をバタバタさせて逃れようとする。
はじめに言っておくが、僕はこれは霊的なそういうものではないと思っている。
カラダはどっぷり疲れているのに、脳が起きている状況なのだ、と何かの本に書いてあった。
本当にそう思うし、発生する時はハードワークが続いたときだったりする。
しかしその時の怖さはやはり嫌なのだ。
では、そうなったらどうするか。
仕方ないので、それに耐えながら気づいたらそのまま眠りにつくパターン。
またはそれに抗い、動け、動け、と頑張りうなされ「うぅ...はっ!」と映画やドラマなんでよく見る起き方をする。
このままではよくない。
かなしばりを無くそう、と言っても難しそうなので対策をしようと考えたのがアイマスク。
かなしばりの時、目を開けようども開かない。
その前兆のあたりから目を開いたら何かいるかも、目を開けようとすることが苦しい、目が開かない、怖いとなるから
あけようが閉じようが真っ暗な状態にすれば、どうしようもないと脳も体も諦め、睡眠に入れるのでは、
と半ば意味不明なやり方を思いついた。
これが、また効果てきめん。
かなしばりがくるぞ!となっても
俺にはアイマスクがある。恐ろしい気持ちが襲ってきても真っ暗だ、開けても真っ暗だ、しょうがない、眠るしかない、とカラダは動かないものの、すぐに睡眠に入れるのだ。
たまに訪れるぐらいなので、そこまで心配することでもないが、いつくるかわからない。
だから何年か前からアイマスクを自宅では着用する。
そんな僕の唯一の根拠のない武器アイマスクも去年引っ越した際に、買い替えようと捨ててしまった。
そして買うのを後回ししながら間も無く一年。
じゃあその間、時折訪れるそいつをどうしてるのかというと
「うぅ...はっ!」
を繰り返している。
いい加減忘れないうちに注文しよう。
瞼が半分落ちてきた
東京0時ごろ、ベッドの上。
武器のない僕は
「うぅ...はっ!」
を繰り返すのだろう。