4月の雨と5月の空
2章
外はまだ雨が降っていた。
ただ、しまった。傘を忘れた。とも
思ってない。ww
俺は傘を差さない派だからだ。
そんな派閥があるのかは
分からないが、ずぶ濡れに
なりながら帰り道を1人
歩くのが青春っぽくて好きだ。
それぐらい俺は青春に
憧れていたのかもしれない。
ただ今日の雨はそんな小さな
楽しみを遥かに凌駕するほど
降っていた。
下駄箱で靴を履き替えた時に
1本の赤い傘が目に入る。
絵描きの傘だ。
美術部の絵描き君は今日も部活か。
ふと、そんなことを思いながら
雨が上がるのを待つか
濡れながら歩こうかと迷った。
結局15分ほどが過ぎても
雨は一向に止む気配が無い。
仕方がない。歩くか。
そう決心し1歩、2歩と歩き出したが
雨は当たらない。
気づいた時にはハナが傘を
差して横に立って居た。
「家、近いよね。入ってく?」
相変わらず笑顔もない
無機質な表情だ。
急に話しかけられたことよりも
俺の存在を知っていたことよりも
家の位置がバレていたことに
驚いた。
そう、これがハナとの初めての
会話だったからだ。
こちらも精一杯に無機質な表情を
作りながら
「ありがとう、入ってくわ。」
と言う。
こちらの心拍数が伝わるのでは
無いかと思うほど相合傘の距離は
近い。
というよりも女性用の傘は
サイズが小さい。
会話が無い。
ただただ雨の音だけがこだまする。
「傘、持とうか?」
歩いて10分ほどでやっと
発した言葉がこれだ。
それゃモテるはずがない。
「大丈夫。」
と断られる。
「うん。ありがとう。」
と返ってくるものだと勝手に
想像していたものだから
更に緊張が走る。
「それより....
その二言目の衝撃で
いままでの話のくだりが全て
2流の前説だったのだと気づく。