4月の雨と5月の花



降り始めた雨は留まることを
知らない。

バカみたいに降っている。

バカみたいな言葉で言うと
そんな感じだ。

教室の隅のあいつは待ってましたと
濡れた窓の内側から落書きを始めた。

手垢という汚物を窓に
塗りたくっている。

どういう感情なんだよ!窓に謝れ!
とツッコミたくなる。

俺の視線に気付いたのか
恥ずかしそうに落書きをやめた。

絵が上手なそいつの絵は
完成図の2割未満でも
それがアサガオだと分かる。

そんな事はどうでもいい。

問題はそこではない。

くだらない学校生活だが
くだらない絵を拝むほど
くだらなくはない。

その絵を見る振りをして
今日もまた絵描きの隣に
座る君を見ている。

ハナ。

クラス1の美女なんかじゃない。
秀才でも、運動神経抜群でも
ムードメーカーでもない。
このクラスで彼女の事を
気にかける者は誰もいない。
俺を除いては、誰も。

いつも髪を無造作に結び
制服の襟は曲がったままで、
色気という言葉が頭の辞書に載っていない
君のその色気に魅了されている。

ああ。俺か?

俺のことはどうだっていい。

幼少期に父と母を、、、、

なんてストーリーもない。

彼女を事故で、、、

なんてストーリーは多分
一生自分史に刻まれることはない。

普通の定義は分からないが
俺は本当に普通だ。

そんな普通の男と普通の女の
普通の恋愛ストーリーを
話すわけだが、多分誰も
興味は無いと思う。

俺だって興味がない。

知らない奴が知らない奴に
唄ったラブソングぐらい
どうでもいい。
耳を塞ぎたいぐらいだ。

それでもこの話を聞いてほしい。

俺はこの7時間後に人を殺す。

普通ではなくなる。

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