陰謀

「こ、これが……」
「ええ」
「これが、“上司をあほにする薬”ですか」
「はい。この薬を入れた飲み物を上司に飲ませれば、確実にあほになります」
「ということは、あのむかつく上司があまりのあほさ加減に上層部にあきれられ……」
「あなたが上司に、ということになりますな」
「……早速ためしてみます。ありがとうございます」
「ばれないように、がんばってください」

「……どうでしたか?」
「はい。毎日あの薬を入れたコーヒーを上司に飲ませていた結果
「上司は……?」
「上司はあほになって左遷され、今は私が上司です。ありがとうございます!」
「いえいえ、いいんですよ。私はほんのお手伝い。仕留めたのはあなたです」
「なんとお礼を言っていいやら。これで私の部署は私の思い通り」
「成せばなる、成さねばならぬ、何事も、ですな」
「ええ。これはほんのお礼です……」
「おやおや、こんなものをいただいていいのですか。どうもありがとうございます」
「いえいえ。これからもお世話になるかもしれない身。どうぞよろしくおねがいします」
「わかりました。それでは……。では、次の方、お入りください」
「失礼します。ここで“上司をあほにする薬”を売っていると聞いたのですが」
「ええ、ええ。ありますとも、ありますとも。それで、今回はどうして……?」
「さっきここにいたあの上司を、あほにして私が上司になろうと思っているのですが」
「ええ、よござんしょう。いい薬を処方してしんぜましょう……」

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