家を買った。
別に俺は家はいらなかった。ごろんと寝転んで寝られればそれでいい。
しかし妻がそれを許さなかった。妻は家を欲しがった。妻はいつもインターネットサイトで家の情報を見ていた。
あとは俺が金を払うだけだった。金を払うと言っても一括ではない。数十年はらい続けなければならない。俺は新しい家の窓辺で憂鬱だった。
そこに相撲取りがやってきた。つっぱり稽古だといって、俺の家の柱をどしどしたたき始めた。
俺は頼むからやめてくれこの家は俺の人生で一番でかい買い物なんだ壊さないでくれと言って、相撲取りの腕に絡みついた。相撲取りは俺のことなど歯牙にもかけず吹っ飛ばした。
すぐに110番をした。大変です家に相撲取りがきて家の柱を壊そうとしているんです。
5分も経たないうちにパトカーが来てそこから太った警官が数人出てきた。
彼らは相撲取りを取り囲み、一緒に俺の家の柱に張り手を始めた。俺の家は既に傾い始めていた。
たのむからやめてくれと絶叫すると家の中から妻と子が出てきて柱に突っ張りを始めた。妻も子供も太っていて力が強いので家の傾きはどんどんひどくなっていく。
俺は泣きながら彼らの中に入り込み、柱に突っ張りを始めた。俺もかつては幕内まで行った力士だったので、柱は俺の力に耐えきれずばりばりと折れて家も倒壊した。
やはり家を買うべきではなかった。力士家買うべからず。新しいことわざができた瞬間だった。