短編小説:名刀「御珍棒」
刀鍛冶「できましたぞ」
武士「おお、これが」
刀鍛冶「あなたの刀でございます」
武士「この刃の鋭さ。感嘆に値する」
刀鍛冶「ありがとうございまする」
武士「これで斬れぬものはないな」
刀鍛冶「はい。人でも岩でも、時間さえも切れまする」
武士「それはすごい。では、もらってゆくぞ」
刀鍛冶「あいやお待ちくだされ。まだお代をいただいておりませぬ」
武士「むむ。そうであったな、しかし生憎今持ち合わせがない」
刀鍛冶「それは困りましたな。それでは刀はお渡しできませぬ」
武士「これから金を作るのには少々時間がいる」
刀鍛冶「それならこうしましょう。刀は今お渡しします。しかしこの刀を私の名である『御珍棒』とお呼びいただき、諸国に名前を広めていただきたい」
武士「何? おちんぽ?」
刀鍛冶「はい。『御珍棒』でございます。私、刀鍛冶能では確かだと自負しております。しかし先代から受け継いだこの名のせいで私に刀作りを依頼する客は少なく、おまんまの食い上げなのでございます」
武士「むむ。なかなか難しい注文だが金を払っていないのだから仕方ない。この刀をそのように呼ぼう。
ざくっ!
敵1「うぎゃーっ!」
敵2「な、なんたる切れ味! 受けた刀どころか腕まで切り落としおった!」
武士「ふふふ。この刀にかかれば神仏とてひれ伏すであろうぞ」
敵2「こ、降参じゃ。勝てる気がせぬ。だが、別れる前に教えてくれ。その刀はいずこの名工が打った刀ぞ?」
武士「ぎくっ」
敵2「ぜひ教えてくれ」
武士「う、うるさい! きさまも死ねーいっ!」
ぶすうっ!
敵2「む、無体な……」
武士「なんという切れ味。すごい業物じゃ。しかしこの刀と刀鍛冶の名が『御珍棒』というのはどうしても恥ずかしくて言えぬ」
その夜、武士の夢に刀鍛冶の御珍棒が現れてこう言った。
「お武家さま。私との約束を守らなんだな。さすればこうしてくれようぞ」
それだけ言うと御珍棒は紫煙となって夢の中から消え去った。
敵3「お前だな。この間わが同胞を2人も殺してくれたのは。
武士「いかにも。しかし喧嘩を売ってくる方が悪いのだ。買われても文句は言えぬ」
敵3「それにしても見事な切れ味で仲間の体は切り裂かれておった。きさまの刀は相当な業物と見た。しかしわが刀も負けてはいない。備中の名工『景清』作の名刀じゃ。きさまの刀とわが刀。どちらに鋭さがあるか。いざ勝負!」
敵は鯉口を切ったかと思うと大上段に刀を振り上げ切りかかってきた! これを受けようと武士も刀を抜く。しかしさやから出てきたのはゆらゆら揺れるふにゃふにゃのおちんちんであった!
ざくうっ!
武士は頭蓋から股までを切り下げられた。そして絶命する前に思った。刀鍛冶に言われたとおりにちゃんと『御珍棒』と刀の銘を告げるべきだったと。
人の話はちゃんと聞きましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?