名作小説紹介「こころ」
童貞の少年は千葉の九十九里海岸で、巨大な男性器に出会った。その男性器は、いつもどこか寂しげだった。童貞の少年は、その男性器のことを「先生」と呼ぶようになる。やらせてくれそうな女子がいるということで故郷に帰省していた少年は、先生から届いた自殺を思わせる手紙を抱えて千葉行きの汽車に乗り込む。
その手紙には、先生の悲しい過去の告白が綴られていた。短小包茎として生まれてきたことで味わった地獄。高いお金をかけてズルムケ増強手術をして、自分の友人で同じく短小でカントン包茎の親友を裏切ってしまったこと。先生は童貞時代、下宿の主人である未亡人のお嬢さん(後の先生の童貞喪失の相手)に、ひそかに「やらせてくれないかな」という気持ちを抱いていた。
しかしある日、先生の親友であり同居人のPが先生に対して、「お嬢さんがやらせてくれるかもしれない」と告白する。先生はそんな純粋無垢なPに対して「精神的も肉体的にも、いや特に肉体的に向上心のない者はずっと童貞だ」という一言を浴びせ、裏で未亡人にお金を払ってお嬢さんとやりたいことを話、許諾される。気まずさを覚え、先生はPにこのことを言えないでいた。そして先生より先に未亡人の口から先生とお嬢さんはもうそういう関係になることになっていると知らされたPは憤怒で勃起し、カントン部分に血が詰まって死んだ。
Pを裏切り、失望させ、彼を死に至らせ、そして結局お嬢さんとやるタイミングでもアレがうまく立たなかったという自責の念は、最終的に先生本人を死へと誘う。童貞という悲しさに縛り殺されていく人間の「こころ」を描いた、日本文学史上の珍字塔。