いと珍しき飴
ああ、お腹が減ったわ。
どうしたんだい。
ダイエットをしててね。ご飯を毎日、ほとんど食べていないのよ。
それはいけないね。体重が減っても気持ちが荒んでしまっては意味はない。
でもね、体重が増えることが私にとっては恐怖なの。その恐怖を凌駕するほどの恐怖がなければね、食べる、ということに食指が向かないというわけなのよ。
それにしても君みたいに毎日キュウリとナスとピーマンばかりたべていたら馬鹿になってしまうよ。ほら、飴でも食べたらどうだい。
飴⁉︎ だめよ。糖質の塊じゃない。
でも、それで一時凌ぎできるなら、いいもんじゃないか。いらいらして、仕事ができないほど、いらいらするよりかはね。
確かにそうね。じゃあ、飴、いただこうかしら。
女性社員は男性社員から飴をもらい、口の中に入れて、その甘さを存分に味わった。
何て美味しいのかしら。これ、コンビニとかで売っている飴?
いいや、違うよ。南米の秘境バポポに住むガウニギ属に伝わる伝説の香料や材料を固めた飴だ。
すごいわ。体から力が漲ってくる。
そうだろう。さあ、一生懸命仕事をしようよ。今回のプロジェクトが成功すれば数千億円の儲けだ。社長もきっと、僕らの給料に色をつけてくれるはずさ。
わかったわ。ありがとう。でも、でも・・・。
どうしたんだい?
何だか、股間が変な感じ。変だわ。熱い。股間が。ああ・・・。
そうなんだよ、この飴に含まれている成分は、大量の、それは大量の男性ホルモンを含んでいる。一度期に体の形が変わってしまうほどにね。
ま、まさか・・・(こっそりパンツの中を見てみる)。ど、どうしよう。私、おちんちんが生えてきているわ。太くて、硬くて、怒張して・・・。
ええ、まじかい。ちょっと見せてごらんよ(見る)。ほんとうだ。君の股からメリメリと、おちんちんが生えてきているじゃあないか。
困ったわ。プロジェクトどころじゃないわよ。おちんちんよ。おちんちん。私、どうすればいいの?
どうすればもこうすればも、君はもともとオカマでおちんちんは一本持っているんだから、それが二本になって都合がいいじゃないか。
なにそれ。そもそも私はオカマだからおちんちんの使い所もないのよ。それが二本になっちゃって、これ、どうすればいいの。パンティーを履いたら、左右に分かれておちんちんがパンティーの裾からのぞいちゃうわ。
僕って、そういうのいいと思うな。何ていうか、不思議で、ゾクゾクして・・・。
ゾクゾクして・・・?
いやだなあ。言わせるなよ。興奮する、ってことだよ。
中谷くん・・・。
四方山さん・・・。
この後、時間ある?
プレゼンの資料を作って、それをカラーで出力していいか部長に聞いて、部長がすぐにうん、といえば、暇さ。
私、湯島(ラブホテルが多い)の「アンノウン・プレイス」であなたを待ってるわ。来てくれる?
もちろん、行くさ。ただ・・・。
ただ・・・?
僕もこの間その飴を食べちゃったから、僕の方にも、おちんちんが二つ、付いているんだ。それでもかまわなければ・・・。
・・・! すごい戦いになりそうね。
そうさ。人生はいつだって戦いさ。
じゃあ、私、先に行ってる。でも、その前に、その飴、もう一つもらってもいいかしら?
どうしてだい?
わかってるくせに。いじわるだなあ、もう。もう一本おちんちんを増やそうと思ったわけよ、私は。
なるほど、空を飛んで湯島まで行くんだね。電車代が浮くよ。