オラクルカードを使ってコーチングしたら凄かった(後編) 【CBC㉟】
僕が10年ほど前に行ったコーチングセッションを題材に、「絵のカード」を使ったコーチングの利点と、実施上のポイントを解説しているシリーズの最終回です。
ここまで「絵のカード」を使ったコーチングの破壊力とでもいうべきパワーに触れてもらったのではないかと思います。
クライアントは自らの内側の世界にダイブして、そこからどんどん気付きをもって帰ります。クライアントのSちゃんはもともと言語化する力がとても高い人だと思いますが、このセッションではカードによって触発されたことで、内面がどんどん明らかになっていたのだと思います。
構造とカード
前編では、現在のカードを引いてもらい話を聴きました。中編では、未来のカードを引いてもらい話を聴きました。
ここまで現在と未来しか聴いていませんが、タイムラインに載せてみると下図のイメージです。
ここで、アクションを出してコーチングを終わらせるなら
現状→望む未来→行動
のような組み立てになるわけです。僕が「簡単3部構造」と呼んでいるコーチング構造です。
①現状の気になっていることを話してすっきりし
②本当に望んでいる未来に気づいて、それを指針とする
③未来に向けての新しい行動を決める
という3部構造でコーチングをしていくものです。それぞれのステップで
①すっきり→②やりたい→③やれそう
という気持ちにクライアントがなれるように関わると、こんなにシンプルな構造でもうまくいきます。
今回のセッションは、これでも素晴らしい結果となるだろうというのが、中編の結論でした。とはいえ、まだ時間もありましたし、お母さんの最期の場面がゴールとなっているので、もう少し先の未来も描いてみたくて、僕としては以下のような構造でコーチングをしていこうと考えました。
①現状なにが起こっているのかを明らかにする
②ゴールを描く(お母さんとの最期のシーン)
③メタゴール(クライアント自身の人生の意味を描いたシーン)
④メタゴールを踏まえて、何を指針に動いていったら良いか
※メタゴール=上位のゴールの意味
構造が可視化される
これもカードコーチングの良さですね。
何に関するカードをどの順番で引いてもらうか?
というのがそのセッションの構造になるのです。コーチ自身にとってもコーチングの構造が理解しやすいし、すっきりしたものになりやすいですね。
ですからGROWでやりたいなら
G→R→O→W
の順番に一枚ずつ引けばいいわけですし、
WOOPでやりたいなら、W→O→O→Pの順番に4枚引けばいいのです。※WOOPモデルに関して知りたい人は、この記事↓などをどうぞ。
他にも共有ゾーンを見つけたければ、
①自分が望む未来のカード
②相手が望む未来のカード
③共有ゾーンのカード
④分かりあうためのコミュニケーションのカード
の順番で引いてみるとか、いろいろ工夫ができますね。※共有ゾーンについては以下の記事なども参考になります
傾聴とカードセッション
コーチングでは傾聴が必要だと言われますが、傾聴については多くのコーチに誤解されています。傾聴とは単に話を聞くことではないのです。
クライアントがまだ気づいてないことを言語化するのが傾聴
なのです。クライアントの中にあって、まだ明確に意識できていなかったことを言語化し、クライアントが一致(無意識と意識の一致)することが傾聴のゴールなのです。
コーチングカウンセリングの中で、クライアントが一致するからこそ、クライアントは本当の自分の人生を生きていくことができるわけです。
でも、傾聴は難しいんですよね。実際に本当の傾聴ができるコーチはほとんどいないと思います。そもそもちゃんとした傾聴のトレーニングを積んでいるコーチの存在自体が珍しいはずです。
実際に、傾聴の難しさや、そのプロセスに時間がかかることから、傾聴の本家であるロジャーズ派からもフォーカシングなど、別のやり方も生み出されて来たわけです。
カードを使うセッションは、誤解を恐れずにいえば、カードを使ったフォーカシングなのです。無意識がもっているイメージをカードによって移し取り、そこに意識を集中(フォーカス)することで、無意識からメッセージを解読しようとしているのです。※さすがにこれは言い過ぎなので、例え話だと思って受け取ってください(笑)
しかし、カードをうまく使えたら、無意識の世界を理解したり、変化のプロセスを進めることは容易になります。
アートセラピーや箱庭療法などのように無意識の世界を言葉以外で表現することでも、自己理解は促進されます。カードセッションはその簡易版なのです。自分の内側の感覚にピッタリな絵を使って、自己理解を促進するわけです。
無意識の世界はいきなり言語化するのではなく、一旦そのままの形で取り出してみたらいいのです。そして取り出した「もの」を言語化していくのです。実は僕の椅子を使ったセッションもそうなのです。相手との関係をいきなり言語化するのではなく、無意識が感じている相手との関係を、一旦椅子の配置という形で取り出しているのです。その後に言語化した方が上手くいくのです
セッションの展開
解説はここまでにして、Sちゃんとのカードセッションを最後まで見てみましょう。中編はここで終わっています↓
コーチはメタゴールに舵を切ります
Sちゃんの「夏休み」というメタファーを受け取って、そこから未来に展開しています。しかし、
サマーキャンプみたいな家族の夏休みが終わる
とても美しいメタファーで、心が強く揺さぶられますね。
Sちゃんが選んだカードはコレでした
メリーゴーランドの周りに漂っていた「黄色」とどこか通じるものを感じますね。そしてこの二人は誰なんでしょうか?
本当にカードを使うと簡単ですね。クライアントはカードと対話しているのです。僕はただそれを促進しているだけです
「子ども心にみたいな、ピュアな心と」
と僕が言っているのは、メリーランドのカードで語られたGOALとの関連です。そうしたら、それだけでなく
高い精神性
のようなものが、ここにはあると語られました。すばらしいですね。
朝焼けは世界の明るい側面を見ることの例えであり、いつでも明るい側面を見れる精神性を持っているということなんだと思います
ここでもまた、なるべく思い込みを排して質問するという姿勢を保っています。
「男の人はだれ?」とかだと、
・女の人はSちゃん
・相手は男性
と決めてかかっているわけです。なのであえて
「ここにいる二人は誰?」
としています。面白い展開ですね。そして一生懸命探索しながら答えるクライアントに対してコーチは
「なんだろう。。。。」
と関わっていますね。絶対にクライアントの中に答えがあると思っているのです。
そしてまた大きな気づきが生まれました。Sちゃんは子育てと仕事だけでも忙しいのに、コーチングやセラピーのことも諦めずにコツコツと学び、実践を続けていたのです。本人はそのエネルギーの出所がわかっていなかった。。。それが明らかになったのです
子どもの頃から感じて来たこと。本当は大切にしたかったこと。それが未来の場面のなかで明らかになる。
本当にコーチングって素晴らしいと思います。
カードを並べたら、こんな質問もできますね。クライアントはどのカードがこの空白を埋めるのか。全体をつなげるカードがどれなのか。無意識に導かれるように探していくのです。
あまりにも物語が繋がっていくことに僕は感動してました。最初のカードの迷路の中に植えてあった木とそっくりです
もう僕は、ほとんど「確認の質問」しかしてません。それでもどんどんとセッションは進んでいきます。クライアントがしっかりと無意識とつながりながら話しているからです。
こうして全体像が見えたので、アクションを出して終わります。
コーチは念の為、ご家族との話が必要ないかをチェックしてます。お母さんと話すだけで良いのか疑問だったからです。
そして、
「言ったらどうなりそう」
と予測をしています。良さそうなら安心して行動に移れるし、問題がありそうなら修正すればいいのです。
終わりに
この後、彼女はご家族と色々は話ができたそうです。お母さんが亡くなったあと、本当に素晴らしい最期を迎えることができたとSちゃんは報告をくれました。何よりもお母さんとの関わりを通じて、家族がそれぞれの人生を生き始めた実感があって嬉しいとのことでした。
今回のケースはテーマの影響もあると思いますが、結構スピリチュアルな感じで展開しました。もちろんこれは使ったカードの性質もあるとは思います。そんなことも含めて、カード選びも大切な要素なので、あなたの世界観にあったカードセットをいくつか持っていると良いですね。コツコツと探してみてください。
カード選びのもう一つのポイントは「絵の抽象度」です。あまりにも抽象度が高すぎるイラストだと、クライアントの無意識が触発されにくくなるし、逆に「具体的な意味合いが強すぎるイラスト」だと、発想が広がりにくくなります。コーチングやカウンセリング用に開発されたイラストや写真のカードもさまざまにありますので、ぜひ探してみてください。
そして、カードを使おうが使うまいが、人生を変えるコーチングやカウンセリングがしたい方は、ぜひ一緒に学びましょう。ツールを超えた本質を伝授します