不合理な「思い込み」を変えて、人生を変える
残り38記事
いまは仕事をしなければいけないはずなのに、なぜか飲み会に行ってしまう。
両価性と言ったりしますが、まるで自分の中に二つの価値観(目的、方向性)があるような状態です。
A:付き合いが大切
B:仕事が大事
のように、大事なものが2つあるわけです。そして本当はBを大切にしたほうがいいんじゃないかと思いながらも、現状はAを大切にしている。という状態ですね。
逆に、もっと家族を大切にしたほうがいいと思いながら、仕事ばかりしてしまう。
A:仕事が大切
B:家族が大切
の二つのバランスで困っているケースもありますね。どちらのケースも、大切なことが1つであるなら困らないわけです。家族だけが大切で仕事はどうでもいい、とか。仕事だけが大切で、付き合いはどうでもいい。そんな場合は、何も悩みません。どちらも大切に思えるから悩むわけです。
今回はこのような葛藤をどう扱うかについて考えます。考え方自体はシンプルです。昨日の記事などを参考にしながら、自分にとって何が大切なのかを整理してみると良いですね
現在はどうも「飲み会に関係している価値観」が「仕事に関係している価値観」よりも優先されている可能性があるのです。だから、まずはそれぞれがどんな価値観なのかを明らかにします。その上で、未来の自分の姿を参考にしながら「本当の価値観の優先順位」を明らかにして、それを基準に、今の状況をどうしたらいいか考えるのです。
ただここに『信念』が絡んでくると扱いが少し難しくなるので、今回はそそれについても考えてみたいと思います。
忙しいのに誘いを断れない
クライアントのAさんはアラサーのコーチ/研修講師です。現在、今後のキャリアを作っていく上での重要な仕事に取り組んでいるのですが、人から誘われると断れず、飲み会などに参加することになり、時間不足に悩んでいるといいます。
CO「相談したいことは何ですか?」
CL「断るのが苦手なんです。いまとても忙しいのに、飲みに行こうとか誘われると断れない」
CO「どういうこと?」
CL「せっかく誘ってくれてるのに断るのも悪い気がして、仕方ないかなと思って飲み会に参加してしまいます。そうするとそれはそれで楽しいので、長居してしまって。。。それで翌日の仕事に響くとか。。。」
CO「とか?」
CL「そもそも、飲み会に行かなければ、もっと仕事の資料を作り込めたりするわけです。本当はそっちをやることが今の自分には大切だと思うんですけど」
CO「どうしてそっちのほうが大切なの?」
CL「これまでやりたいと思ってきた仕事に取り組めるチャンスを得ているので、なんとかそれを形にしたいんです」
大切な仕事に取り組めるチャンスなのに、誘われると飲み会に行ってしまう。
そんな葛藤が相談されました。
・仕事が大切
・飲み会も大切
大切なものが二つあって、現状では、そのバランスが取れてない気がする=飲み会に重きを置きすぎてる気がしている。ということですね
クライアントにとっては現在の仕事は大きなチャンスだということですが、それでも飲み会を優先させているということは、そこに何か目的があるのでしょう。
もしコーチが
仕事=大切
飲み会=無駄なもの
と考えるなら、飲み会に行くのをやめさせようなコーチングをするかも知れません。でも本当にそれがいいかどうかはわからないのです。なぜなら
・クライアントは実は仕事しすぎで、休息でもしないとおかしくなってしまいそうな場合
・本当は飲み会で話していることの方が、クライアントのやりたいことに近い場合
・仕事を円滑にしていくうえでも、飲み会も含めてコミュニケーションに時間をとった方がいい場合
・飲み会に参加しているメンバーに「気になる子」がいて、その子との貴重な接点になっている場合
などなど、実は飲み会にも意味がある場合もあるわけです。だから、まずは飲み会に行っている目的がなんなのかを明らかにすることが大切なのです。
さらにいうと、「断れない」とクライアントは言いますが、アドラー心理学では
「断れない」のではなくて、「断らない」のだ
と考えるのです。クライアントの中に何らかの目的があって、そのために「断らない」と決めているんだ、とみるのです。
CO「そっか。そんなチャンスを得ているのに、飲み会に誘われると参加しちゃう。。。」
CL「悪いなぁって思っちゃうんですよね」
CO「何が悪いの?」
CL「。。。。毎回欠かさず誘ってくれるし、どうしても一緒に飲みたいとか話したいって言ってくれるので、そんな気持ちを無碍にするのも悪いなみたいな感じです」
CO「無碍にする。。。決して断らないAさんは、相手の気持ちを無碍にしちゃうとどうなると思っているんだろう」
CL「うーん。二度と誘われない。。。。」
CO「。。。あとは。。。。。」
CL「嫌われるというか。。。。」
CO「なんだろう」
CL「誰からも誘われずに孤独になる」
CO「どういうこと?」
CL「うーん。みんなで、あいつ付き合い悪いよなとか悪口言って、もう相手にされなくなる。。。みたいなイメージです」
孤独になることを避けたい
というのが目的候補として出てきました。
・話をするのが楽しいから
・お酒を飲むのがすきだから
・参加メンバーと仲良くなりたいから
とかさまざまな目的がある中で、クライアントが語る飲み会への参加理由は「参加しないと、いつか孤独になりそうだから」というものだったわけです。
そしてそこには、
断る→みんなに陰口を叩かれる→二度と誘われなくなる→孤独になる
という思い込み(信念)が関係しているようですね。
CO「そっか。それで孤独になりそうで、それを避けたい」
CL「はい。おかしな考えだとは思うんですけど」
CO「そうなの?」
CL「はい。だって、忙しくて飲み会にいけないくらいで、二度と誘われないとかないだろうとも思いますけど、でもなんだか断れないんです」
CO「そっか。。。。。孤独になりたくないって言ってたけど、孤独でなくて、どうなりたいんだろう」
CL「うーん。。。心で繋がってるというか。。。」
CO「心で繋がってる?」
CL「うーん。。。信じあえてる。変な例えですけど、戦友みたいな感じで背中を預け合えるみたいな。。。。理想ですけど」
CO「そんな風に思える相手がいるといいと思ってる」
CL「そうですね。何人かでいいんですけど、そんな風に思える仲間がいて、一緒に夢を追いかけられたら嬉しいです」
CO「なるほど、ここまで話してみてどう?」
CL「。。。。本当に信じ合える仲間がいると思えたらいいですね。。。そう言った意味では、飲み会みたいな場も必ずしも無駄ともいえない気も。。。」
クライアントは自分でも気づいているようです。それが「おかしな考えだとは思うんですけど」に出ています。
おかしな考えだと思うけど、二度と誘われなくなり孤独になるという考え方にとらわれてしまって断れない
とクライアントは言っているわけです。これがまさに思い込みですね。
だからもしかしたら今は仕事が大切な時期なのに、飲み会を優先してしまっているのかも知れません。
そうだとしたらこれは、思い込みによって飲み会(付き合い)の優先度が上げられてしまっているケースになるわけです。
「本当に信じ合える仲間が欲しい。だから飲み会も必ずしも無駄とはいえない。。。」とクライアントは言っていますが、コーチは少し懐疑的です。飲み会以外にもっと信頼感を作れる場がある可能性も高いと思いますし、現在の飲み会メンバーと「少数の信じ合える仲間になりたい」のかどうかも不明だからです。なので、この発言は「孤独を避けたい」と強く思っているクライアントが現状を肯定するために発している可能性もあると考えています
そしてそうであるなら、本当に現状のままで良いのかを検討して、まずいとなれば、断り方などを考えることになります。
さらに、断り方を頭で理解できても、どうしてもクライアントが断れない場合は、「断ると陰口を叩かれて孤独になる」という思い込みを書き換える必要が出てくるかも知れません。
本当の自分に教えてもらう
いずれにしてもまずは何が本当に大切な目的かを明らかにしていく必要があります。
CO「OK。では想像しましょう。数年後、本当にやりたい仕事ができている自分。。。。そのとき、どこにいて、どんな人たちと、何をしているか。。。。そして、その自分が本当に充実感を感じるのはどんな瞬間か。。。。。」
CL「(目を閉じてイメージ)」
CO「そして、その頃のAさんのプライベート。。。。家族は?友人は?どんな人たちと、どんな時間をとっているだろう。。。数年前とは何が大きく違っているだろう。。。。そしてどんな瞬間に、Aさんは幸せを感じるんだろう。。。。」
CL「。。。。結婚してますね。。。子どももいるかもしれない。。。。家族との時間も大切にしていて、本当に彼らを愛しています。。。(以下省略)」
CO「いいね。。。仕事はどうなってる?」
CL「仕事は、◯◯へのコーチングの導入が××の状態になっている感じです」
CO「具体的に言うとどんなことが起こってる?」
CL「例えば。。(以下略)」
CO「いいね!その時のAさんは、24年の頃とは何が違うの?」
CL「一番違うのは、自分のチームがあるというか。。。(以下略)」
現状に縛られずに本当に大切なものに意識を向けてもらいたかったので、
「数年後、本当にやりたい仕事ができている自分」をイメージしてもらうようにお願いしました。
さらに仕事だけでなく、プライベートのこともイメージしてもらっています。なぜなら、このセッションのテーマは「時間の使い方」だからです。時間の使い方を考えるなら、本来はプライベートのことも含めて考える必要がありますね。
Aさんは現在独身のため、寝食以外は仕事に使うこともできる状態ですが、本当はどんな人生を生きたいのかを明らかにした上で、そこに向けて今日からの時間の使い方も見直して欲しいのです。
そんなつもりでイメージしてもらったら、「結婚して子どももいるかもしれない」と言います。現在の時間の使い方で、そんな未来は訪れないとしたら、やはり見直しが必要になりますね。
コーチが仕事のことだけで未来を描くように促したなら、結婚やら子供の話は出てこなかった可能性が高いのです。そうすると、現在の時間の使い方の見直しも仕事の範囲でしか起こりません。コーチが広い視野をもって関わることの大切さが垣間みえますね
CO「その頃のAさんは何を大事にしている?」
CL「一人一人を大切にすること。そこから生まれてくるものを育てて行くこと。。。。人と人とが生み出すシナジーを心から信じています。」
CO「この時の自分は、どんな時間を積極的に取っているんだろう」
CL「自分が刺激を受ける人に会う時間。。。。あとはキーパーソンにコーチングする時間。。。その人のエネルギーを引き出して、周りの人との相乗効果が起こるようにする。。。。もちろん自分もコーチング受けながら自分の内側の世界をもっと探究して、それをどんどん外に出していきたいです。。。そっか。。。いつでも本当にコーチとしている感じです」
太字の「未来の自分は、どんな時間を積極的に取っているんだろう」が決め手となる質問ですね。
ここで「未来の時間の使い方」を描いてもらうことによって、それを基準に現在の時間の使い方を見直してもらえるのです。
CO「そうなんだ!飲み会はどうしてる?(笑)」
CL「あはは。そうですね。行ってますけど、頻度は全然低いというか、同じ人とは数ヶ月に一度みたいな感じですね。」
CO「頻度以外で現在と違うのは?」
CL「いろんな人と行って、どうしたい?って話をしている感じです。。。あとは時間も決まった時間の中でやって、サクッと解散する」
CO「そっか。それは何を大事にしているから?」
CL「自分の状態ですね。もちろん相手の状態も。やっぱりしっかり寝たり、必要な時間取ることは大切なんで。。。うん。お互いの時間、人生の時間を大切にしている。。。」
さらにコーチは「飲み会の件」もぶっ込みましたね。こうやって未来の自分に教えて貰えばいいのです。未来基準で考えるのがコーチングの肝です。
そしてここから、思い込みを揺らしにかかります
CO「24年の自分は、断ると陰口言われて、孤独になる。。。だから断れないと言っていますよ。なんて言ってあげたいですか」
CL「。。。そんなことないし、もしそうならそんなやつと付き合ってたらダメだ。あと、いま飲んでる相手はお互いにストレス発散というか、ダベってるだけだから、そんな時間とってたらダメになる」
CO「それでも、やっぱり孤独になるのが怖いから、断らないって。。。。彼にどう考えたらいいか教えてあげてください」
CL「。。。。。多分息抜きも必要だから、ちゃんと計画して自分から誘ったらいいよ。やりたいことがあるんだから、人に振り回されずに、自分から声をかける。相手から誘われても、いまは時間がないからといって断ろう。しつこく言われても断る。そうじゃなきゃこれからもっと時間なくなるよ。断って誘ってくれなくてもいい。自分から本当にプライベートの時間を過ごしたい人に声かけてみなよ。本当は仲良くなりたい相手いるでしょ(ハッとした表情)」
CO「今何が起こりました?」
CL「いや。本当にそうだな、と思って。。。仕事で時間がないから誘ってくれる人の誘いを断ると、本当に孤独になるんですけど、自分から声かけるなら、もっと話してみたい相手がいるなぁと思いました」
ここまできたら、
・今後の飲み会の頻度や目的について明確にする
・何は断るか、どう断るか決めて、ロールプレイ
みたいなことをすれば、断れるようになりそうですね。ですからこの後のセッションはそんな形で進んでいきました。
このケースで見たように、思い込みが変わらないと、優先順位が動かないケースもあるわけです。ですから、クライアントが現在優先していることが、なにか不合理な思い込みに基づいていると思ったら、それを揺らしてみるというアプローチも有効なのです。
とはいえ、まずは初級コーチには「未来の自分に価値観の優先順位を教えてもらい、それに基づいて段階的に時間の使い方を変えていく」という、昨日の記事のやり方を練習するのがおすすめです。
僕たちと人生を変えるコーチングカウンセリングがしたい方は
いいなと思ったら応援しよう!
