どうしてコーチングが上達しないのか(前編)

残り7記事。

 この記事で今年360本目になるのですが、平均字数は5000字を超えています。読むのだって大変でしょうに、毎日読んで「いいね」を押してくれる人たちもいるので、みなさんの熱心さに頭が下がります。

 僕自身もこの10日ほどは、家族で風邪になっていて、体調激悪ですが、それでもこの投稿だけは自分との約束で続けています。なぜかと言えば、少しでも良い世の中になってもらいたいからです。

 そのために、良いコーチングカウンセリングができる人たちが増えること。コーチカウンセラーが積極的に活動できることが大切だと思っているからです。

 これ以上誰もが自死を選ばない世界になるとよい。子どもたちが毎日楽しく生きていける世の中であるとよい。みなが自分の可能性を開花させて生きる社会であるとよい。

 そんな理想に向けて、できることを積み上げていきたい。そう思って、今年は「願掛け」的に毎日文章を綴ってきました。


 今回の記事ではコーチングについて「どうしたら上達するんだろう」「最近上達してない気がする」「もっと上達したい」という方に向けて、陥りがちなポイントを紹介していきます。

 コーチングカウンセリングの上達は素晴らしいものです。クライアントとつくれる世界が変わります。自分の仕事の価値を痛感することができます。もっとコーチングカウンセリングしてほしいと向こうから頼まれますし、紹介も増えます。

上達は一夜にしてなりませんし、何年取り組んだら必ず上達すると約束されているものでもありません。それでも「焦らず諦めず」筋の良い取り組みをしていたら、誰もがするのも上達です。

 そしてコーチングカウンセリングは一生上達し続けるものです。そう思って上達に取り組む人にとっては、自分と自分のコミュニケーションを生涯にわたって磨き続ける道になります。

 ただコーチングをしていれば、コーチであるということではないのです。自分に向き合い自分を磨くことで、コーチでいることができるのだと思います。

 ではスタートしましょう。

①コーチングが理解できてない

 まず最初の段階です。

「コーチングってなんですか?」「他のコミュニケーションと何が違うのですか?」「コーチングの目的は?」「具体的には、何をすることがコーチング?」「逆にコーチは何をしませんか?」「セッション後どんな状態になったら、コーチングがうまく行っていると言える?」

 例えば上記のような質問に答えられない場合。まだコーチングが「頭」で理解できていない可能性がありますね。

 分からないまま感覚的にやれる人もいます。それでクライアントがどんどん変化していくならそれでも良いと思います。その場合は言語化ができないだけで、そのコーチはコーチングがなんであるか分かっているからです。

 ただ「この場合どうしたらいいのかな?」「これでいいのかな?」と思いながらそこを潰しきれていないなら、先生や先輩に質問するとか、もう一度教科書を読み返す、調べ直すなどをしてみましょう。気をつけて使えば、生成AIも「それなりの」先生にはなってくれます。よい時代です。

 ただし一旦、誰から学ぶかは決めた方がよいでしょう。いろんな先生をつまみ食いにしていると、それぞれ教えることが違いますからチグハグになります。バランスを取るのは後で良いのです。まずは先生を一人決めて、その先生のやり方で行けるところまで行く。必要なら、その後に他の先生からも学んでバランスを取れば良いのです。先に幹を作るのです。

 コーチングの指導をしていると、理解があやふやなまま、適当にコーチングをすすめているために結果が出ないし、本人も上達しないケースに出会います。

 コーチングは、普通のコミュニケーションと明確に違う特徴を持っています。そこを理解し、いつもとコミュニケーションを変えるから、結果が変わるのです。

理解が深まり、実践の質が高まることが上達ですから、「分かった」と思わずに探究し続けることが、あなたが成長を続けるためには大切なのです。ぜひ長期間にわたって、学び続けられる環境を自分に与えてあげてください。

②体験量が足りない

 次行きましょう。体験量、練習量ですね。

 僕のスクールでは昔から100人コーチングというチャレンジをしてもらっています。100人の相手とセッションをしてフィードバックをもらうというものです。1回1時間でセッションしたとして、これで100時間のコーチング経験になるのです。

 仕事や家事育児などありながら、その時間を捻出するのはなかなか大変なことです。やったコーチは達成感を感じますが、実は100時間の経験ってそれほど大したことではないのも、一方の現実です。

 100時間エクセル操作する。100時間プールで泳ぐ。100時間子どもを遊ばせる。100時間歌を歌う。100時間マッサージをする。。。

 こうやって考えると、もちろん一定レベルの上達はするでしょうが、それだけでプロレベルになれるかというと疑問なわけです。

 ただ100人程度コーチングすると、それなりに上達しますから、まずはそこまで自分に体験を積ませてあげると良いと思います。

 「相手がいない」などという人がいますが、それなら「相手」に妥協しましょう。同じ相手に繰り返しコーチングしてもいいですし、なんなら生成AIにクライアント役をしてもらったり、真剣にセルフコーチングをしてみるのでもいいのです。

 「良いコーチングがしたい!」と思っているだけでは、上達しないのです。自分に上達するための体験をさせてあげてください。

 少しずつうまくなるのではなく、コツをつかむと一気にうまくなります。練習するのは、うまくなるきっかけをつかむためで、そのチャンスは、100回練習するよりも、1000回練習した方が多くなる。努力はひらめくためにするんです。

メジャーリーガー菊池雄星

 これはコーチングでも言えることではないかと思います。どのタイミングで次に行けるかはそれぞれですが、そこまで自分に練習となるような体験をさせてあげましょう。

 菊池選手も、

 練習する→ひらめく→練習する→ひらめく→練習する→ひらめく

 を延々と続けながら、ステージをあげて、メジャーリーガーにまでなったわけです。時間をかけて進んでいきましょう。

 もう一つ大切な話をしておきます。釣りが上達したい場合は、まず釣り堀に行くことが大切です。「そこに魚がいて、数が釣れる」そんな場所に行かないと、釣るという経験ができないのです。海に行っても一日中何も釣れないと、上達のしようがないわけです。

 釣り堀に行って、一番簡単に釣れる方法を教えてもらいます。それでもなかなか釣れないこともありますが、半日もいれば、何匹か釣れる体験ができるのです。貴重なのは、釣れる体験も、バラす(逃す)体験もできることです。

 そうしながら、釣る面白さと、基本的な技術を身につけるのです。釣り堀に何度か通えば上達して、簡単に魚が釣れるようになります。そうするとつまらなくなります。そこで、もうちょっと難しい釣りに変えるのです。対象魚を変える、餌を変える、仕掛けを変える。そうやって少しずつゲームの難易度を上げていくのです。

 そうするうちに同じレベルでチャレンジしている仲間もできてきます。ふと隣を見ると、信じられない腕前のおじさんとかがいるわけです。どうしてあんなことができるのか意味が分からないおじさん。それに畏敬の念を持ちながら、自分たちのチャレンジを続けます。だから、いつまでも楽しく上達が続くのです。

 コーチングカウンセリングも一緒です。とにかく簡単なコーチングカウンセリングを自分にさせてあげましょう。たくさんすることが大切です。最初はハードルを下げて良いのです。そしてそこから徐々に難易度を上げる工夫をするのです。今の自分にちょうど良い難易度で、成功したり失敗したりをさせてあげましょう。上達のためには、いい練習環境に自分の身をおいてあげることが大切です。


③フィードバックを受けつけない

 プライドはしばらく、傍に寄せておきましょう。そしてまだクライアントが十分に満足していないこと。他にもっと良いコーチがいることを受け入れましょう。

 そんなことは当たり前のことだからです。僕のレベルになっても、やりきれないことはいくらもありますし、僕より上手なコーチも普通に存在しています。そういうものです。

 もちろん「上限」は自分で決めるものですから、自分がやれることに満足して、これ以上を望まないというならそれで良いのです。でもプライドによって、自分の課題を見ないことにすることで、成長が止まるのは勿体無いと思うのです。

 別にコーチングなんて完璧じゃなくていいのです。第一完璧なコーチングなんてできません。だからこそ、不完全なコーチングを愛しながらも、改善点を探すわけです。

 どんどんトライをして、失敗しましょう。うまく行かないコーチングがあるのは当たり前のことです。そして、失敗こそが成長の母です。失敗しない人は、想定の範囲内でイージーゲームをやっているだけのことが多いのです。ゲームのレベルを上げてないなら、いつでもフルスコアを出し続けられます。失敗している人は、想定の外の世界に出ています。だから失敗できるのです。

 失敗から学ぶことが大切なのです。私たちは失敗から学ぶことを通じて、人間への理解を深め、さまざまな状況に対応できるコーチになっていくのです。それ以外の道はないのです。

 そして、自分よりも上手なコーチがいるのはありがたいことです。その人との比較分析の中で、よりよりやり方が簡単に手に入るのですから。先達、先生がいるから、あなたはより早く先に進めるのです。

 時に後輩があなたより優れていると感じることもあるでしょう。そんなこともまたよくあることですね。後輩と争っても仕方ないことです。小さな世界から離れましょう。あなたは小さな世界で「どちらが優れているか」の競争をするために生きているわけではありません。自分の目的のために、優秀な後輩からも学びましょう。その姿勢があれば、誰もがあなたの先生になってくれます。

 フィードバックを受け付けましょう。クライアントから良かったところを教えてもらいましょう。そして今後へのリクエストも聞きましょう。クレームがあったら真摯に耳を傾けましょう。どうしたら良かったのか考えましょう。

 先生にコーチングを見てもらいましょう。勇気がいることだと思いますが、自分の商品を他の人の目に晒すことが、あなたの商品を輝かせることにつながります。

 コーチングへのフィードバックはあなた自身へのフィードバックではありません。コーチング=自分だと考えなくてもいいのです。コーチングはあなたのスキルだとも言えるのです。スキルに関してフィードバックもらい、単にスキルアップしましょう。

 バーベキューで火おこしをしようとしているときに、スタッフからアドバイスをもらったとしても、それほど凹まないのと同じことです。単に見落としがあった、知らないスキルがあった。それだけの話です。気楽にフィードバックを受けましょう。

 ただし、誰からフィードバックをもらうかは選びましょう。それぞれの観点で適当なことを言っている場合が多いからです。「この人のフィードバックを指針にする」と決めて、その人に継続的に見てもらうことで、不要な混乱を避けましょう。

 他人がスーパービジョンを受けているところを見せてもらえる機会があるなら、積極的に活用しましょう。より自分がしていることも客観視できる可能性があります。

 ガラスのハートすぎて、フィードバックをもらうのがしんどい人は、それを伝えた上で、上手にできているところと、つぎに取り組むと良い課題についてだけ、フィードバックをもらいましょう。そうしてくれる先生を探しましょう。ガラスのハートでも、コーチングは上達します。


 前編はここまで。後編は「④ゴールがない/おかしい」「⑤課題が何だか分かってない」「⑥可能性に気づいていない」「⑦自分に向き合っていない」などのトピックを扱う予定です。耳が痛い部分もあるかもしれませんが、きっとコーチとしての今後に役立つと思いますので、ご活用ください。

 24年ももう直ぐ終わりです。素晴らしい25年になりますように!!

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だいじゅ@コーチング脳のつくり方
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