臨場感を作ってみよう(基礎編)
コーチング、カウンセリングでは臨場感が大切。そんな話をきいたことありますか?今回の記事では、コーチングカウンセリングで臨場感をつくることの意味と、その手法の基礎をお話ししたいと思います。
タイムマシンがあればコーチは不要になる?
僕はタイムマシンがあればコーチングはいらなくなると思っています。
想像してみてください。理想の未来にタイムマシンで出かけて、そこで自分が何をしているかをジックリと観察してみる。未来の自分はどんなリソースを活用しているのかチェックする。未来の自分がやっていることが周りの人たちにどう影響しているのか観察する。
もし、そんなことができたら、3つのことが起こります。まずモチベーションがあがります。実際に素晴らしい未来を目の当たりにすると「こんな人生を生きたい!!」と思いますね。だからそのために頑張りたくなります。
次に、自分に自信が持てます。だって、未来の自分はちゃんと理想の未来を生きてるわけです!!だから、必要な行動をとりさえすれば理想の未来を生きられる!そんな風に思えるわけです。
そして1つは、具体的にどんな行動をとるのが良さそうかの想像がつくわけです。未来の自分が誰と何をどのようにやっているのかが明確になれば、そこに向けて、どんな準備をしたらいいか。誰とどんな関係を築いておくとよいか、などに気づけるわけです。
この3つが合わさると、気分も上がるし、何をしたら良さそうかわかるし、それをしたらちゃんと望む未来に行ける気がするので、どんどん行動をしていくことになります。そしてもし取った行動によって望む成果が得られなくても、未来にいくために必要そうな行動を取り続けることになります。
コーチングで臨場感が得られたらいいというのは、そのためなのです。まるでタイムマシンにのって実際の未来に行ったかのように、未来の世界を具体的にイメージしてもらい、そこにリアリティを感じる(臨場感が得られる)ことができたら、クライアントはその未来を実現したいと思うし、そのための方法を思いつくし、実現できそうな気がしてくるのです。
カウンセリングでも同じこと
たとえばこのケース(これは僕のケースではなく、うちのスクールの卒業生のケースです)
クライアントは東日本大地震の津波被害で弟を亡くしたお兄さんです。震災の日の朝に弟さんにかけた言葉を悔いて、4年間自分を責めながら生きてきたそうです。ところがたった一回のしかも短時間のコーチングセッションでお兄さんは変わりました。
それはセッションの中で、弟さんの本当の気持ちに触れることができたからです。クライアントはコーチの誘導で弟さんになりきってみて、弟さんの気持ちが実際にどんなものだったかに触れることができたのです。そしてそのことにリアリティを感じたからこそ、お兄さんの考えはスパッと切り替わり、4年間悩み続けたのが嘘みたいに、新しい生き方をその日から始めることができたのです。それを可能にするのがコーチがつくる臨場感なのです。
さて、ここからは、どうやってコーチングやカウンセリングの中で臨場感を作っていくのかを話していきますが、その前にもう一つだけ
いまどこに臨場感を感じているのか?
マインドフルネスという言葉がありますね。いまここで起こっていることに五感をつかって気づいていることをマインドフルであるといいます。
そしてマインドフルな時間を持つことが大切だと言われているわけです。ということは。。。。多くの人は、ほとんどの時間マインドフルではない。ということです。
臨場感との関係で言えば、多くの人は、いまここの現実に臨場感を感じていない!!ということなのです。
大画面高精細なテレビとかのことを「臨場感がすごい!」とかいうわけです。だとしたら一番臨場感がすごいのは目の前に広がる現実なのですが、多くの時間、私たちは目の前の現実に臨場感を感じていないのです。
心ここにあらずで過ごしているのです。心ここにあらずのとき、僕たちの意識はどこに向かっているのでしょうか?それは脳内の世界ですね。
何か考え事をしていたり、何かを思い浮かべたりしているのです。時にはリアルな空想に耽っていることもあったり、過去の出来事を鮮明に思い出していることもあります。今ここではなく、脳内の世界の方に臨場しているとも言えるわけです。
だから、今ここでない別の世界に臨場感を感じるというのは、特別なことではありません。そのことを押さえておいてください。
ではここからはコーチングカウンセリングで臨場感をつくるためのヒントを7つ紹介します
①臨場感が移ったことに気づく
コーチングセッションをしているとき。クライアントはあなたの存在や今ここで起こっていることにしっかり意識が向いているときもあれば、そこから意識が離れて脳内のイメージや感覚の世界に行ってしまっているときもあります。臨場感が移ったわけです。
まずはそのことにしっかりと気がついて、クライアントが脳内の世界に行き始めたら、それを邪魔しないのが大切です。
邪魔しないとはどういうことでしょう。たとえば
・大きな声で話しかける
・早口で話しかける
・耳障りな声で話しかける
・ちかくで派手な動きをする
・物音を立てる
など
刺激的な関わりをすると空想やイメージの邪魔になりますよね。相手が脳内の世界への臨場感をあげていくためには、相手が脳内イメージにアクセスしはじめたことに気づいたら
・静かにする
・声をかけるときは、穏やかな声でゆっくりと
・動きを止める
・動く必要があるときはゆっくりと
みたいにすればいいのです。子守唄を歌うイメージが良いですね。眠りの世界に入っていってもらいうためには、ゆっくりおだやかな声で歌いますよね。そしてしっかりと向こうの世界に入ったら、静かにするわけです。
まずはこのことがベースになります
②具体を思い出す/思い描く
さて、次に相手が脳内の世界に入っていくためには何をしたらいいのかを考えましょう。一番簡単なのは、具体的なことを思い出す/思い描くようにイメージしてもらうことです。
たとえば、小学校のときの思い出にアクセスしてもらいたいとします。そうしたら当時、五感を使って感じたことを思い出してもらうのです。たとえば
体育館の床の色。黒板消しで黒板を消すときの音。夏のプールの匂い。教室の机の手触り。蛇口から飲んだ水道水の味。。。
あなたも思い出そうとしてみてください。ちょっとリアリティ(臨場感)が今ここから過去へと移動したのがわかると思います。
実際の働きかけ方はこんな感じです
最後のコーチの働きかけです。少しゆっくりと声のトーンも落として、五感体験を思い出してもらうのです。そうするとクライアントの臨場感はイメージの世界に移動し始めます
未来の場合だとどうでしょう
これらの例ではコーチが、その場にありそうなものを言葉にすることで、クライアントがイメージの世界に入っていくようにしています。それが難しければこんなパターンでもいいですね
何が見えるか、何が聞こえるか。そんなことをゆっくりと質問して答えてもらうことでも相手はイメージの世界に入り始めます。
③姿勢、表情、動作の活用
次にやれるといいのは、話しているだけでなく、姿勢をとってもらうとか、そのときの表情をしてもらう、動作をしてもらうことです。
上の例でいくと
こんなことを少ししてもらえたら、より臨場感は深まります。イメージは身体とも連動していますから、体を動かした方がイメージはしやすいのです。
④より詳細へアクセス
より細かい五感体験にアクセスしてもらうと臨場感が高まります。臨場感は解像度によって高まるものだからです。そして、詳細を知ろうとすれば、より集中することになるからです。さきほどから使っている例だと
みたいなちょっとしたことでも、それまであまり気にしていなかったような詳細にアクセスしてもらうことで、臨場感は深まりますね。
・息を吸って。。。そして冷たい空気を肺でどんなふうに感じるだろう
・空を見上げて。。。そして一番小さい星がどんなふうに見えるか。。目を凝らしてみてみよう
とか色々できますね!
⑤説明をやめてもらう
そして、ある程度描写が進んだら「では少し言葉をとめて、いまその場所にいるつもりになって、周りの景色をよくみて。。。。そしてその場所で聞こえる音に耳を傾けてみてください」
とかいってしばらくの間、黙っていてください。クライアントはあなたに対して喋っていると、あなたのことを意識しています。喋るのをやめたときにもう1段階臨場感が深まるわけです。
⑥臨場している相手に質問
そして、十分臨場しているのが分かったら、そこで質問します。そのときその質問によってより臨場感を深めるつもりで質問すると良いですね
・その場所の景色をよーくみながら考えて。。。。どうしてここに来たかったんだろうね
・そこにいるいまの気持ちを感じながら。。。あなたがここで体験したかったのは何だろう。。。。何を人生で体験したかったんだろう。。。。
こんなふうに質問されると、ますますこの世界にのめり込みながら、答えを探そうとしますね。。。。そうやってこの臨場体験の中から、自分の人生にとって大切なものに気がついていくのです。
⑦先行して体験しようとする
最後に何よりも大切なことは、あなたも同じ体験をしようとすることです。クライアントから情報を得ながら、あなたのほうが相手よりも先に向こうの世界に臨場感を感じようとすることなのです。
その場の景色を見て。。。。音を聞いて。。。。肌で感じることを感じ。。。匂いを嗅ぎ。。。。味わう。。。。
それをしようとするのです。そしてもっと詳細にその場所で起こっていることを知ろうとして、ゆっくりと質問をしていくのです。
そうすることで相手もその世界へと意識を向けて、どんどん臨場していくのです。
そのために相手よりも一歩先に、相手の世界に深く入っていきましょう
おわり
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