人間関係のコツを学ぶ良い方法
僕のnoteでも何度となく取り上げていますが、ポジションチェンジという技法があります。
ポジションチェンジでは、自分の椅子と相手の椅子を用意して
①相手の椅子を見ながら改めて自分の気持ちを見つめる
②相手の椅子に座って、相手の目線から自分を見てみる
このようなことを通じて、自他への理解を深め関係改善のヒントにします
例えば母親との関係に悩んでいる女性が相談に来たとしましょう。その場合、自分の椅子と母親の椅子を用意してもらって、まずは下のイラストのように、自分の椅子から母親の椅子を眺めてもらうのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1731066250-PU4kpySOgAaQBMlV8hEJfGWz.png?width=1200)
そして、自分は「実際のところ、母親に対してどう思っているのか」を改めて感じてもらいたいのです。
一般に人間は自分の気持ちを正確に理解できていません。自分の気持ちに対して「見落とし」や「誤解」をしているのです。
「見落とし」=例えば怒っているのに、そのことに気づいていないこと
「誤解」=例えば怒っていると思っていたけど、本当は悲しかったこと
自分の心身が体験していることと、自分の頭が認識していることとの間にズレがある状態です。現代カウンセリングの父とも言えるカール・ロジャーズは、このズレこそが不幸の原因であると考えました。そして心の声を聴くことで、このズレを解消するために『傾聴』という関わり方を提唱したのです。
傾聴=聞き漏らしていたり、勘違いしていた『心の声』を正確に聴き取るための関わり
集中が鍵
心の声を聴き取ろうとしたら、集中することが鍵になります。でもただ心に耳を傾けてみても、何を言っているかわからないことも多いと思います。心はいつも話しているわけではないし、ましてやいつも母親について話しているわけではないからです。
なので、母親に関する心の声が聴きたかったら、母親に関して心が話し始める状態を作る必要があります。
ではどんな時にクライアントの心は母親に関して話し始めるのでしょうか?
そう。目の前に母親がいる時です。でも多くの場合それだけではありません。母親が何か気になることをしたり、言ったりしたのに触れた時に、心は何かを話し始めるのです。
だから、おかあさんが座りそうな場所に椅子を置いて、そこでお母さんが何か気になることを言ったりやったりしていることをリアルにイメージしてもらうのです。まず最初の集中先はそこなのです。
そんな風におかあさんに集中することができると、心が動き始めます。心がザワザワしたり、胃のあたりがグッと締め付けられるような身体感覚がする場合もあるでしょう。もしくは「怒り」や「悲しみ」など名前のついた感情を感じる場合もあると思います。
そして、その状態を感じていると(=次の集中)、なんらかのイメージが湧いてきたり、言葉が浮かんできたりするのです。その湧いてきたイメージや言葉を追いかけていくことで、クライアントはおかあさんに関する心の声(心が感じていること、思っていること)を聴くことができるのです。
探索が大切というけれど
僕は長年、コーチングではクライアントに『探索』してもらうことが大切と言ってきました。
例えばクライアントが「お母さんに対してどう思っているの?」と質問されたとき
「どうも思っていません」
などと、いつもの答えをしている状態ではあまり意味がないのです。コーチングで「すでにわかっていること」「いつも言っていること」を話していても、何も変わらないのです。まだ気づいていなかったことに意識が向いたときに、クライアントは変化し始めます。だから探索してほしいのです。
ただし探索というのは、思考ではありません。僕はここでクライアントに思考してもらいたいのではないのです。
え?おかあさん?うるさいことばっかりいってうんざりなんだよね。もちろん心配するのはわかるけど、わたしだって子どもじゃないんだし、おかあさんの価値観とは違う生き方かもしれないけど、わたしはわたしの人生なんだからほっといてほしい。どうしていつまでもわかってくれないんだろう。まぁ以前から思い込みが激しい人ではあったけど。。。(以下略)
こんな風にあれやこれやと考えてもらうことをしてもらいたいのではないのです。
だから、クライアントの目の前に椅子を置いて、そこでおかあさんが気になることをしている様子をイメージしてもらいながら、
「ねぇ。あなたは、このおかあさんに対して、本当はどんな風に感じているんだろうね。。。。」
などと、まだ言葉になっていない部分を探ってもらうような働きかけをするのです。コーチの働きかけを受けて、クライアントの中ではどのようなことが起こるのでしょうか。。。例えば
本当はどんな風に感じている?。。。。どうなんだろう。。。。。。なんでこんなにイライラするのかな。。。。。なんか信用されてないんだよな。。。。。ちゃんと話聞こうともしてくれないし。。。。いつも自分のことばっかり。。。。。あーなんか悲しい。。。。いやだなぁ。。。。なんで昔みたいに「いいよ。大丈夫だよ」って言ってくれないんだろう。。。。。そうしたら。。。。。うわっ。。。。そうしたら私。。。もっと素直にいうこと聞けるのに。。。そっか。。。そうだよな。。。おかあさんの言っていることも、確かに正しいんだよな。。。。
いかがですか。先に例示した「単なる思考」との違いがわかりますでしょうか。心(無意識)と対話している感じ。その中で心の声に触れている感じ。
こんな感じを経て、クライアントは「母がわかってくれないからイライラしてると思ってましたが、わたし。。。不安だったんです。。。。。一旦受け入れてもらいたかった。そうしたらもっと素直に話ができるのに」などと答えるです。
コーチングでは自分とのコミュニケーションを促進するというような説明がされることもあります。本当の「自分とのコミュニケーション」とは、このように無意識との対話がなされることにより、自分に関する「見落とし」や「誤解」が解消されてくることなのです。
ただ質問を受けて思考している状態=心身が置き去りになっている状態は探索とは呼ばないのです。
やっぱりトランス
昨日の記事に引き続いての指摘ですが、やはり効果的なコーチングには多くの場合トランス状態が関与しているのだと思います。
トランス=変性意識状態。内的な思考や体験に集中している状態。催眠療法でもこの状態を使ってワークしています
トランス状態に入ると、意識と無意識の間の「境界」が、覚醒時に比べて一時的に緩くなるのです。無意識のデータが「読み出し可能」「書き込み可能」状態になるのです。
普段は、無意識に蓄積された情報(過去の体験の記憶など)は意識に流入してこないよう制限されているのです。それがトランス状態になると、制限が弱くなるので、忘れていた体験や感情が浮かび上がってくるのです。
さきほどのケースで言うと、空椅子に座るおかあさんのイメージに集中してもらうことで、クライアントはトランス状態に入りました。そのことによって無意識の中にあった、さまざまな思いや記憶が浮かび上がってきたのです。これはトランス無くしては起こらないことでした。
コーチの作る『内側への集中』モード。その集中=トランスの中でのクライアントの探索。それが人生を動かしていく気づきにつながるのです。
人生に対人関係は欠かせない
私たちの人生から対人関係は欠かせません。誰とどのように関わるかは、人生の質に大きく影響を与えます。だからコーチングで、クライアントの対人関係をテーマにすることは大切なのです。
そして良い対人関係のためには、まず自分を知ることがスタート地点なのです。まずは自分の気持ちを知り、その上で相手の気持ちを知るのです。
大ベストセラー『7つの習慣』でもそのような順番になっています。
①主体的であること
②ゴールを思い描くことから始める
③最優先事項を優先する
④Win-Winを考える
⑤まず理解に徹し、そして理解される
⑥シナジーを創り出す
⑦刃を研ぐ
先に②ゴールを思い描くわけです。自分は何を望んでいるのか?を明らかにするのです。そして⑤相手のことを理解しようとします。そこから自分の思いを伝えるのですね。
さらに7つの習慣を質的に深めるものとして後年提唱された『第8の習慣』は
⑧自分のボイス(内面の声)を発見し、ほかの人たちも自分のボイスを発見できるように奮起させる
ここで言うボイスとは「◯◯な人生を生きたい」「◯◯の役に立ちたい」「◯◯を信じて生きたい」という心の声のことです(超訳)。自分の内側からそのような声を聴くこと。そして周りの人たちも、自分の内側の声に耳を傾けるように促すこと。それがリーダーシップを持って生きることだと言うのです。
ポジションチェンジは、まさにこのような人生を生きるのに役立つワークなのだと思います。
相手から自分を見る
さきほどのケースに話を戻しましょう。自分の気持ちに気づいたクライアントに今度はおかあさんの席に座ってもらい、自分を見てもらいます。
CO「おかあさんはあなたのことをどう思っているでしょう?」
と質問しても、クライアントは頭で考えてしまいます。まずはお母さんの気持ちになってもらうように働きかける必要があるのです。だから
CO「お母さんは、娘さんのことをどんな風に見ているのかしら。。。娘さんはどんな表情でそこにいますか」
CL(母)「少し不貞腐れたような感じです」
CO「不貞腐れた様子の娘さんを見て。。。どんな気持ちになる。。。。」
CL(母)「心配です」
CO「しんぱい。。。。その感じをどんな風に感じているだろう。。。。。。。。それを感じていると。。。。心の中ではどんな言葉が流れてきますか」
CL(母)「大丈夫なのかな。。。大丈夫と口では言っているけど。。。。。。疲れている感じだし。。。。ちょっと思い詰めているというか。。。。」
CO「。。。。。あとは。。。。」
CL(母)「。。。。あとは。。。。。。だれか相談できる人はいるのかしら。。。。昔から一人で頑張ってしまうことが多かったから。。。。(涙)」
CO「何がありました?」
CL「いや。。。。。母も、悩んでくれているんだなぁ、と。。。」
CO「どういうこと?」
CL「色々言うのも、私のことが心配で。。。。私が何も言わないから」
CO「なるほど。。。。では、もう一度お母さんの気持ちになってもらって。。。。。娘さんに対して、素直にお母さんの気持ちを伝えてもらっていいですか」
CL(母)「。。。。。うるさく言ってごめんね。あなたのことが心配で。。。。どんな状況なのかわからなくて。。。。仕事大変なんじゃないかなとか。。。。本当にそれでいいの?とか気になってた。。。。もしお母さんで良かったら話を聞かせてほしい。。。。いつだって一番の味方でいたいと思っているから(涙)」
みたいに展開していきました。コーチはクライアントがお母さんの気持ちに集中できるように、まずは娘に意識を向けてもらい、そのあとは心の動きに意識を向け続けられるように関わっています。
こうやって内側に集中する状態=トランスを作り、無意識のリソース(お母さんに関する様々な記憶など)にアクセスしてもらうのです。そこから気づきが生まれるわけです。
いかがだったでしょうか。自分に関しても、他人に関しても様々な情報を無意識は持っています。トランスモードになって、無意識のリソースを活用できれば、自他に関する質の高い仮説を得て、それを使って人生を変えていくことができるのです。
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