確認の質問の「使い方」(中編)
この記事では「確認の質問」の使い方を解説しています。前編では①具体化②網羅③目的の使い方をお伝えしました。今回はその続きです。そもそも「確認の質問って何?」とか「どうして確認の質問が必要なの?」については以下の記事を読んでみてください。コミュニケーションを変えて行くヒントがいろいろ含まれています
では今回は④反芻からいきます
④反芻
「言ってみてどう?」と僕はよくクライアントに問いかけます。1セッションの中で少なくとも数回は使っているはずです。
どうして「言ってみてどう?」と問いかけるのでしょうか。それはクライアントに自分の言った言葉をもう一度吟味して欲しいからです。
コーチングカウンセリングで大切なのは「一致」です。一致というのは自分が感じていること(感情、感覚)と考えていることや話していること(思考)が一致していることです。正式には「体験と認識の一致」と言いますが、似たような意味です。
つまりは、自分が感じていることで、まだ正確に言葉になっていないことを言語化していくことが大切なのです。そうすることでだんだんと「一致」してくるわけです。
だから、コーチはクライアントの話を丁寧にきき、わからないことについては質問し、クライアントの中にあってまだうまく言葉になっていなかったことを言葉にして行くのです。それが本当の傾聴です。
そして「言ってみてどう?」は、そんなプロセスの中で出てきた言葉が、自分の実感に照らし合わせて合っていそうかチェックしてもらっているのです。
以下は実例です。しばらく話すなかでクライアントがポロッと「もう疲れちゃった」と言ったシーンです。
CL「もう疲れちゃった」
CO「疲れちゃった。。。言ってみてどう?」(反芻)
CL「うん。それを認めないといけないんだな。。。。疲れたっていうか、もっと言えば、燃え尽きたというか、心が折れたというか。。。これ以上やりたいくないんだな」
CO「。。。。これ以上やりたくない。。。言ってみてどう?」(反芻)
CL「。。。。はい。。。私はよく頑張った。。。でももう終わりにしたい。そう思いますね。。。そうか、もう終わりにしたい。。そうですね。。。」
こんな風に、出てきた言葉をもう一度チェックしてもらうのです。そうすると「まさにピッタリです!」となることもあれば「近いけど、ちょっと違うな。。。」となったり「ん?全然ちがう」となることもあります。
「ちょっと違うかな」となった場合は「じゃあどんな感じだろう?」などと問いかけてみたら良いですね。
この「一致」と「確認の質問」の関係に関してはフォーカシングに関する以下の記事を読むと理解が深まるはずです。おすすめですのでどうぞ
実際に使う場合のことですが、反芻の質問はクライアントが何か新しいことを表現したときに「言ってみてどう?」ときくことをまずは基本としてください。
たまに相手から「どういうこと?」など質問返しされることがありますが、「いや、うまく表現できた感じがするかな?ってこと」などと返したり「◯◯って言ってたけど、それが表現として正しい感じがするか、改めてチェックしてみてもらいたくて」など言えばいいということですね
質問リストの中には「本当に?」という強い質問がありますね。強すぎるようなら「確かな感じがする?」を強めた表現です。「どう?本当にそんな感じ?」とか「本当にそうなのかな。自分の心にきいてみたら、なんて答えてくれそう?」など、少しアレンジしてあげても良いですね。
僕は案外ストレートに「本当?」とか「本当に??」ってきいてることも多いです。
また、この質問のアレンジで「ここまで話してみてどうですか?」というものもあります。これはある程度まで話が進んできて、ひと段落ついて段階で、そこまでを振り返るのに役立ちます。ぜひ活用ください。
⑤抽象化
①具体化があるなら、逆に⑤抽象化(一般化)もあります。相手の話が細かすぎたり、長々と続いた場合は、それをまとめてもらうのです。
「つまり?」「まとめると?」「一言で言うと?」などですね。
世の中には抽象的な話をする人(とても端的に話をする人)と、具体的な話をする人がいます。抽象的な話をする人には「◯◯っていうのは?」「どういうこと?」「例えば?」などきくと良いです。話が具体化され、本人も具体的にはなにどうしたら良いのかを言葉にできます。
そして具体的な話が続く人には「つまり?」「まとめると(どうなる)?」「一言で言うと?」などきくのです。
コーチングカウンセリングではWrapup(ラップアップ=まとめる)をすることも大切です。結局結論は何なのか?なにがポイントなのか?整理してから帰らないと、コーチングで発見したことが活用できないからです。
ぜひ話しっぱなしにしないで、ポイントをまとめるのを手伝ってあげてください
CO「どんなチームにしたいの?」
CL「みんなで話し合えたりとか、意見をいろいろ言い合える。でもすごく中良くて、なんか一緒に遊びにいけたりするといいかな」
CO「なるほど。あとは?」(網羅)
CL「もう少し厳しい感じも欲しい」
CO「っていうのは?」(具体化)
CL「本気さとか真剣さ。なんかゆるく仲良いというんじゃないくて、高みを目指すみたいな感じ」
CO「そっかでは、まとめるとどんな感じ?」(抽象化)
CL「。。。本気の仲間って感じかな」
CO「言ってみてどう?」(反芻)
CL「うん。いい感じです」
⑥肯定形
次は肯定形にするパターンです。コーチングの原則として肯定形を扱うというものがあります。
CO「本当はどうなりたい?」
CL「子どもにイライラしない自分になりたい」
太字のイライラしないという部分が否定形ですね。日本語としてはイライラしない自分で、もちろん意味が通るのですが、「イライラしていない」ということしか表現されていないので、実際はどんな状態なのかは全く特定されていないのです。
イライラしないで
・はっきり伝えている
・ニコニコしてる
・リラックスしてる
・コミュニケーションとって分かり合えてる
・不安でいっぱいである
・ブチギレている
・無関心である
などなど
のように考えてみると、イライラしないでどうしているか?の答えはたくさんあるわけです。「イライラしない」だけではわからないのです。だから「肯定形」という確認の質問を使って確認したいのです
CO「本当はどうなりたい?」
CL「子どもにイライラしない自分になりたい」
CO「そっか。イライラする代わりにどうなってるといい?」(肯定形)
CL「。。。穏やかにいられる」
CO「穏やかにいられるっていうのは?」(具体化)
CL「いろんな心配をするんじゃなくて」
CO「心配をする代わりに?」(肯定形)
CL「気になってることは伝えるけど、子どもを信じて任せている」
CO「どうして信じられるの?」(根拠)
CL「うーん。いままで大きな怪我とかないし、やんちゃに見えて案外慎重な子なので」
CO「言ってみてどう?」(反芻)
CL「あー。そうですね。案外慎重な子なのに、言いすぎるのは本当に良くないなと思いました。。。。その代わりに、あなたは慎重だから大丈夫だと思うけど、って言いながら気になってること伝えると良いですね」
このような感じで関わるイメージを持ってみたらどうでしょうか。途中で10選のリストには載っていない(根拠)という質問がありますが、こんなのも使えると便利ですね。
実は否定形に近い表現というのはたくさんあります。そのことも知っておいたほうが良いです。
①「職場のことを気にしていない」
②「閉鎖された空間から離れたい」
③「やるべきことから自由になりたい」
のような例文を考えてみましょう。
①「職場のことを気にしていない」はわかりやすいですね。「職場のことを気にする代わりに何をしてる?」とやればいいわけです
つぎに②「閉鎖された空間から離れたい」です。これは「離れたい」で否定形ではないですが、実際は「離れる」というだけで、どこに行くか行っていないわけですから
「閉鎖された空間から離れたい」→「閉鎖空間の代わりにどこにいきたいの?/閉鎖空間にいる代わりに何?」などと関わることで、実際に何をしたいかに迫っていけるわけです
最後は③「やるべきことから自由になりたい」です。お気づきでしょうか。これも「やるべきこと(だけ)をしているのはやめたい」という内容なので、実質は否定形なのです。だから「やるべきことの代わりに何をしたい?」などと関わると良いのです。
コーチングでは、いらないものではなく、欲しいものを言語化します。欲しいものがわかったら具体的に動けるし、そのことで欲しいものが手に入るからです。
買い物に行くときには「欲しいものリスト」を持っていきますよね。「いらないものリスト」は持っていかないと思います。もし「いらないものリスト」をもって買い物にいったらどうなるでしょうか。リストに「りんごはいらない」と書いてあったらどうしますか。「メロン」でも「豚肉」でも「竹串」でも「バスマジックリン」でも、何でもいいから何か買って帰れば良いのでしょうか。そうではないと思います。「いらないものリスト」は欲しいものは教えてくれません。逆に欲しいものが明確なら、それが見当たらない場合に、店員さんに尋ねたら探し出してもらえたりするわけです!!
⑦リソース
これもとてもコーチング的な確認の質問です。クライアントが
「まったくわかりません」
などと言うことがありますね。そのときクライアントは本当に、何一つ分かっていないのでしょうか
CO「奥さんはどう思っているのでしょうね」
CL「いやー。家内の考えていることは全くわかりません」
CO「なるほど。とは言え分かっていることは何でしょう」(リソース)
CL「うーん。僕が仕事ばかりしていることは、面白くないのかも知れないし」
CO「なるほど。あとは」(網羅)
CL「僕のことも何考えてるかわからないと思ってるでしょうね」
CO「そうなんですね。他には」(網羅)
CL「うーん。娘が気持ちをわかってくれるから、そっちと話せばいいやとか思ってるんだろうな」
みたいな展開は実際にあり得るわけです。クライアントは別にウソをつこうとしているわけではないのでしょうが、なんの気無しに「全くわからない」と言ってしまうのです。そして、その自分言葉によって、自分に「分かってない」と思い込ませてしまうのです。
「できない」と簡単に言ってしまうクライアントもいます
CO「一度奥さんの話を聴いてみたらどうですか?」
CL「いや。それはできません」
などと言われた時に「どうして?」と訊ねたり「では、誰か間に入ってもらうのはどうですか?」などと提案しても良いわけですが
CO「一度奥さんの話を聴いてみたらどうですか?」
CL「いや。それはできません」
CO「なるほど。では、とは言えできることはなんでしょう」(リソース)
CL「まぁ向こうが話してくるなら、聞いていることはできますが」
CO「なるほど!あとは?」(網羅)
CL「うーん。娘に何か聴いてることないか訊ねてみるとか」
CO「はい。あとは?」(網羅)
CL「娘もいるところならもう少し話を聞きやすいかな」
みたいなこともあり得るのです。
この質問がリソースと呼ばれているのは、クライアントが
できない
わからない
難しい
などと言った場合でも、必ず「出来てる部分」「分かってる部分」(リソース)があるという前提でされる質問だからです。
クライアントの「何もない」と言う言葉に惑わされずに、当たり前のように「できてることは?」「わかっていることは?」「もっているものは?」などときいてみてください。多くの場合は何かが出てきます!!
クライアントの内外にあるリソースに気づき、それらを活用しながらうまく進んでもらうのがコーチの仕事の一つですので、どんなリソースがあるのかしっかりと確認していきましょう
と言うわけで今回は④から⑦までの確認の質問の使い方をお伝えしました。ぜひコーチングカウンセリングだけでなく日常コミュニケーションでもお使いください。「確認してよかった!」と言うことがたくさんあるはずです
そして多用すればするほど、使い方のポイントがわかり上手に使えるようになります。ですので最初のうちはあまり手応えがなくても、使い続けてもらいたいと思います
次回は残りの3つと、それ以外にも大切な質問を具体例を交えてお伝えする予定です
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