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卒業生のセッション「大切な人のために実力以上を出したくて」(前編)

 先日卒業生の超絶素晴らしいセッションを見る機会がありました。クライアントとコーチの許可をもらえたので、読者の皆様の参考のためにご紹介します。(クライアント保護のため内容は一部改変してあります。また読みやすくする目的で、いくらか編集しています)

クライアント(Iさん)は研修会社に転職直後の30代男性。テーマは「初登壇が決まったのに、なぜかモチベーションが上がらない」

クライアントとテーマ

 コーチとクライアントは知り合いです。それもあって最初から和やかな雰囲気でスタートしました。

CO今日は何について話しましょうか。
CLようやく初めての研修が決まりまして
COおおお!素晴らしい!
CL社長が信頼して任せてくれた仕事なので、信頼に応えたい。でも自分にできるのだろうかと思う部分もあるので、もっと自信を持ってできるようになりたいです

 コーチは堂々としています。僕の言い方で「プロっぽい」っていうのがありますが、まさにプロっぽいコーチ。いかにも対人支援の専門家で、安心して身を委ねられる雰囲気です。明るくてオープンな感じ

 ・信頼に応えたい、っていうのは?
 ・できるだろうか、っていうのは?
 ・自信をもってできるように、っていうのは?

 とかやってもいいですが、コーチはズバッと

COそうなんですね。じゃあ今日は何について話せたらいいのかな
CLコンテンツも自分で作る部分もあるので、作ったものを先輩に見てもらったら、色々アドバイスをもらっちゃって、自分で良かったのかな。って気持ちになってしまって。
COどういうこと?
CL社長の期待に応えられるのかな、って責任に怯む感じがして。。。萎縮してしまって、うまく動けない。なんかいつもこうなんですよね
CO いつもこう、っていうのは?
CLなんか自分の価値に自信がないというか、価値を感じられないのかも知れません
COそうなの?
CLなんか、わかんないことは質問すればいいし、初めてだからできなくて当たり前の筈なのに、なぜか「やっぱり無理かも」という気持ちになって、なぜか手が動かなくなってしまって。。。まぁやるにはやるんですけど

 「何について話せたらいい?」と質問したのですが、クライアントの説明が続きました。そこでコーチは「どういうこと?」「っていうのは?」で具体化していきます。

 クライアントは「いつもそうだ」という、動けないときの自分について、説明をしています。

 クライアントとしては、これを何とかしたいということなのでしょう。

 コーチは次に

COやるにはやるっていうのは?
CLなんかしばらく手がつかないんですよ。資料も開けなくて。それでギリギリになって、やばいって感じで頑張ってつくるけど、また足りない点を指摘されて凹むみたいな感じです
COそうなんだ。なんか抱え込んで止まっちゃうみたいな感じなのかな?
CLあー。そうですね。自分でなんとかしなきゃと思うけど動けない

 止まっちゃうんだけど、やるにはやる。

 の「やるにはやる」を具体化しましたね。そしてその答えを受けて

 抱え込んで止まっちゃうみたいな感じなの?

 とまとめているのが上手ですね!!それによりクライアントの自己理解が進んでいます

COそうなんだ。ではこのセッションで、何が起こったらいいんだろう
CLまず自分に何が起こっているかわかれば。。
COうん。わかって、どうなればいいんだろう?
CLわかって、うまく動ける。。
COそうだね!どんな風に動けたらいいんだろうね
CL言われても気にせずどんどん動ける

 概要がわかったので、セッションのゴール(セッションに期待すること)の確認ですね。このコーチのいつものルーティンなのかな。テンポよく進む感じがいいです

 そして「自分に何が起こっているかわかれば」というクライアントに食い下がっていく姿勢もいいですね。コーチとしてはもっと先まで行きたいわけです。さらに

CO。。。動けるだけでいいの
CLえ?
COさっき、自分で抱えちゃうみたいなこと言ってたけど
CLそうですね。抱えずに、自分からきいたりできたらもっといいと思います
COそうなったら何が起こります?
CL えっと。。。自分も安心するし。。。。
COあとは?
CL 先輩や社長も安心して見守ってくれるのではないかと
CO いいね。じゃあそれを目指して進めましょうか?
CL はい。お願いします

 これはちょっと感動。じつはこのクライアントは止まるだけでなく、自分で抱え込んじゃうんですよね。要は人に相談できなくなる。

 そのことはそのままでいいの?

 と問いかけているわけです。まだコーチ歴がそれほど長い人ではないんですけど、よく話が聴けているし、躊躇なく確認してます

 おかげで、先輩や社長に安心して見守ってもらいながら仕事を進めたいという方向性が出てきました。

CO じゃあどんな時に動けなくなっちゃうのか、もう一度教えてもらっていい?
CL えっと。ダメ出しではないけど、足りないところのフィードバックをもらったときです。
CO 先輩から?
CL そうですね。
CO ちなみに何さん?先輩は
CL O先輩です
CO O先輩に具体的に何て言われて、動けなくなった?
CL うーん。普通なんですけど。。。「あれ、この件って前に渡した資料に書いてなかったっけ」って言われて。。。見落としてたんですよね。。。

 現場検証の一種をやりたいわけです。クライアントの行動パターンの奥に何があるかを知りたくて、具体的な場面を用いて、そこで何が起こっているかを明らかにしようとしていますね

 まずは、シチュエーションと対人関係が明らかになり、そこで起こった出来事(言われたこと)がわかりました

CO うん。そんな風に言われて、Iさんに何が起こったんだろう?
CL あー。全然わかってなかった。またやっちゃった、だめだーってなって
CO うん。それでどうしたの?
CL そうでしたよね!修正します。すいませんって
CO そう言ったんだ
CL はい。
CO で?
CL 打ち合わせ終わって、すぐ直せばいいのに、なぜか寝かせちゃって
CO 寝かせる?
CL 資料見る気にもなれなくて、しばらく放置してました

 今度は、そのときにIさん(クライアント)に起こってることのチェックですね。

 そして「ダメだー」って自分を責めてから、「修正します!」と言うものの寝かせてしまうというパターンが明らかになりましたね。

CO そうか。そのとき、そんな自分についてはどんな風に思ってるの?
CLいい加減にしようよって思ってます
CO どういうこと?
CL せっかくコーチングとかも学んでいるのに、いつまでも自分にダメ出しして、やる気がなくなってるから
CO いい加減にしろ!ってさらにダメ出してる?笑
CL ほんとですね。。。これは苦しいな笑
CO しんどいよね
CL はい笑
CO ちゃんとして欲しいみたいな気持ちがあるってことかな、自分に対して
CL。。。。そうですね。

 クライアントが自分の行動パターンに対してどう評価してるかを確認してます。

 さらにダメ出ししてる?笑

 で、クライアントも苦笑いになりました。こういう雰囲気で、クライアントが自分のことを見れるのはいいですね。客観的に見れてる

CO 椅子を出してみましょうか。フィードバックされると「ダメだー」って止まって抱え込む自分と、ちゃんとするように言っている自分。あとはフィードバックをくれたO先輩と社長。。。それぞれどんな関係か椅子で表してくれますか
CL 。。。。(椅子を配置している)。。。。。はい。こんな感じです。
CO 自分の椅子に座ってみて、他の椅子の場所がそれでいいか確認してみて
CL (椅子に座って、調整してから、立ち上がる)はい

 まるで僕みたいですが、僕のところで指導を受けてるコーチなのでこうなりますね笑

 椅子を出してさらに厳密に現場検証をしたいわけです。このコーチのいつものフローなんでしょうが、とても綺麗に流せていますね

 椅子を置けたので

CO じゃあもう一度、止まって抱え込んじゃうIさんの椅子に座ってもらっていいですか
CL はい
CO では。。。Oさんから「この件、前の資料にも書いてたよね」って言われてるのをきいて。。。。どんな感じですか
CL 目の前が暗くなるというか。。。身体の力が抜ける感じ
CO うん
CL で、あーまた間違えたかー。。。と思います
CO そうなんだ。それで何て言うんでしたっけ、Oさんに
CL そうでしたよね!すいません修正します

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 コーチは、太字の部分は、ゆっくりと少し低い声で話しています。クライアントに臨場してもらうための工夫ですね。

 そして

CO うん。これって何のために言ってるんでしょうか
CL 何のため?
CO そう。何かを守るためとか、何かを避けるために言ってるとしたら
CL あー。。。これ以上言われないとか
CO とか
CL あとは。。。わかってないと思われないため
CO なんか今ハッとしたようにも見えたけど
CL はい。そうだなって思って。わかってないって思われたくない

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 まずは行動の目的を明らかにしたいわけですね。

 太字部分の指摘ができるのは、クライアントのことをちゃんと見ているからです。このように指摘されると、クライアントは内面につながりながら話すようになっていきます

 そして「わかってないって思われたくない」について

CO そうなんだ。どうしてだろうね
CL バカだと思われたくない。。から
CO バカだと思われたくない。。。あとは?
CL 仕事がなくなってしまう。わかってないと思われたら
CO 仕事とられそう?
CL いや、Oさんはそうではないと思うけど、なんか勝手に警戒しているというか。
CO なるほど、他にもある?バカだと思われたくない理由
CL えっと。。助けてもらえなくなる
CO どういうこと?
CL わかってるなら助けてもらえるけど、あまりにバカだと助けてもらえないと思うから
CO 言ってみてどう?
CL 。。。。はい。。。見捨てられるのを恐れてるみたいな感じです

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 最初の「どうしてだろう」という質問は、クライアントの認知(考え方)がどんなものかを明らかにするための質問ですね。

 そして太字にしてありますが、確認の質問の使い方がうまい。うまいし無駄がない。感服です

CO わかってるふりをしてないと見捨てられちゃうって思ってる
CL。。。。。はい。。。。そうですね
CO それで抱え込んじゃう
CL 。。。。はい
CO でもどうしたらいいかわからないから
CL そうですね。。。だから寝かせちゃって、また同じことの繰り返しになる
CO なんか仕組みがわかった感じですね!
CL はい笑

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 このコーチ見えてますね。確認作業みたいな感じで、クライアントの認知行動パターンを明らかにしてしまいました。

 クライアントの表情も変わりました。腑に落ちたのでしょう。

CO では、立ち上がって、一回伸びをして気持ちをリセットしてください。。。。今度は「ちゃんとするように」と言ってる自分の椅子にすわってみてください
CL はい
CO 目の前には止まってる自分がいます。感情こめて「ちゃんとしようよ!」って言ってもらっていいですか
CL ちゃんとしようよ!
CO なんでだろう
CL ちゃんとしないと、見捨てられちゃうよ
CO 見捨てられちゃうのを避けたい?
CL 。。。はい。せっかく期待してくれたのに、ちゃんとしないとって
CO なんか、前の人とおんなじこと言ってます?
CL そうですね。。。落ち込んでないでやりなよ。見捨てられちゃうよ。って言ってるかんじです

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 二人目の自分に移動ですね。

 感情を込めて「ちゃんとしようよ!」というように指示しています。これもクライアントに臨場してもらうためのテクニックですね。お上手。

 そして「見捨てられちゃうよ」という言葉を拾って、

 「見捨てられちゃうのを避けたい?」

 と確認してますね。行動の目的を明らかにしようと一直線に進んでいます

COなるほど。他にはありますか?ちゃんとやろうよの理由
CL。。。あ、せっかく本当にやりたい仕事もらったんだから(声が詰まる)
CO 。。。今、Iさんの中で何が起きました?
CL 。。。。こういう会社の人たちを応援したいと思って入社したので。。。それを、やってみろって言ってもらって。。。。だから、その人たちのためにも、実力以上の何かを出して、役に立ちたい。。。。。(涙)

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 他には?は本当に重要な質問ですね。このおかげでもう一つの大切な目的がでてきました。

 コーチはクライアントの声が若干詰まったのを見逃しませんでした。そしてとても穏やかな声で、

 「何が起きました?」

 とききました。そのことによって、クライアントは自分の大切な想いにつながりながら、それを口にすることができました。

 いやー。ほんとエクセレントですね。このコーチの組み立ての中では、ほぼパーフェクトにやれてる感じだと思います。

前編はここまで、続きもエクセレントなのでご期待ください。

しかし、本当にすごいよね。ここまで素晴らしいコーチングができるようになりたいという方は個別指導を受けてください!笑

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だいじゅ@コーチング脳のつくり方
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