CBC㊲「電車に乗れない私」が受けた3つのレッスン(その5)
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いよいよ「電車に乗れない私」シリーズも最終回。セッションがスタートしてからここまで90分くらいです。あと10分で貸し会議室の退室時間なのですが、コーチは追加レッスンを思いつきました。
きっかけはクライアントの一言でした。
クライアントが苦痛から離れて、強さを取り戻すことにつながる方法がここにあるのです。
この「強さ」を彼女がいつでも使えるように。苦手な電車の中でも、彼女が自分自身の「強さ」と共にいられるように。
僕はそんな気持ちで「追加レッスン」をスタートしました。
誘導瞑想『愛の呼吸』です。ここまでのセッションで出てきた要素を組み合わせて、彼女が良い状態につながるための瞑想法を作ったわけです。
といっても、下敷きになった瞑想法はあります。ダライラマ法王も伝える「トンレン」です。「苦しみを引き受け、幸せをわたす」瞑想法です。
この瞑想法の世界観がMちゃんにぴったりだなと思って、これを少しアレンジした形で、彼女と試してみたのです。瞑想の中に出てきた「金色のエネルギー」は彼女の未来と現在を繋げるものでしたね。
彼女は静かな涙を流しながら、穏やかな呼吸を続けています。薄暗い場所でも静かに咲く、一輪の美しい花のようでした。それを見た人を、幸せにし、勇気を与えてくれる花です。
太字部分は、レッスン1で扱った「ご主人のことに対する不安」に対してのダメ押しでもあります。
こんな要素も含めつつ、レッスン3「布団蒸し」で手に入れた「強い自分につながる方法」を、「満員電車の恐怖の克服」につなげていったのです。
セッション前は、満員電車のイメージをするだけで、身体に拒否反応が起こっていましたが、この段階では何も起こっていません。Mちゃんは深くリラックスして、良い状態です。
今度はまばらな電車でのイメージ。こんな風にイメージングを繰り返すことで、定着を図ります。
そして、クライアントの中に、新しいイメージが定着した手応えを得たコーチは、プロセスの終了を決めました。
こうして時間ちょうどに僕らは渋谷の貸し会議室を出ました。寒いはずです。外には雪が待っていました。
彼女の顔が曇ります。
「間に合わなかった」
どうしたのかと聞くと、この雪だと仕事を早帰りする人たちが出るから、もうすでに電車は混み始めているだろう、と言うのです。
CO「よし、予定通り、一緒に電車に乗って見よう」
CL「本気ですか?」
CO「俺と一緒で乗れなかったら、一生乗れないかもよ笑」
CL「そりゃそうですね笑」
そんな会話を交わしながら僕らは駅に着きました。ホームはたくさんの人で溢れています。
「急行列車」の混み具合を見た彼女は
「各駅に乗っても良いですか?」と僕に尋ねます。
賢明な読者の皆様には、僕の答えは分かりますね?
「俺と一緒に急行に乗れなかったら、一生乗れないかもよ笑」
です(笑)
渋々乗り込むMちゃん。その後からもドンドン人が乗って来ます。思わず僕の腕を掴む彼女。
僕は言います。
「電車で緊張を感じたら〜。。。呼吸に意識を向けて。。。。そして、まずは1両分。。。意識を広げるよ。。。この車両の天井。。。。その四つの隅を意識に入れて。。。。。ゆっくり呼吸をする。。。。そうです」
彼女はゆっくりと呼吸を開始します。
「今日は初回だから。。。めちゃくちゃいい状態にならなくて良いんだよ。。。まずは、こうやって呼吸していると。。。最低ラインをしっかりキープできてるのを感じるよ。。。。そう。。。お上手です」
「なんか大丈夫かも」と彼女は言いました
「うん。大丈夫だよ。。。それでは次に、疲れていそうな人を探して。。。。いた??。。。。その人のお疲れを、そっと吸い込んであげよう。。。。おつかれさま〜。。。。寒かったね〜。。。。家に帰ってあったかくしてね〜。。。。」
彼女の表情が和らぎます。本当にこうするだけで、強さにつながることができるのです。
「そう。。。そして愛の光を返してあげよう。。。。はぁぁぁぁ。。。。。。。」
「本当に大丈夫です!」と彼女。
順調なので僕はレッスンの強度を上げることにしました。
「次の駅で、また人が増えた時のために、練習しようね。。。人がなだれ込んできて。。。ぐーっと押されたら嫌かな?」
「ああ。。。怖い!!ってなりそう」と彼女は嫌な顔をしました
「良いことを教えてあげようね。。そんなときは、押し返すのでも我慢するのでもなくて、『ここ空いてますよ♪』って言って、少しで良いから隙間を開けて、スペースを作ってあげるんだよ」
「じゃあやって見ようね」と言って僕は彼女を押してみます。最初はぎこちなくスペースを作ったMちゃんでしたが、2度3度と練習を重ねるうちに、上手にスペースを作ってあげることができるようになりました
なぜこんなことをするのでしょうか?
人はいつでも被害者になることも、支援者になることも選択できる
そのことを体感してもらいたかったからです。
『夜と霧』を書いたフランクルは
「(アウシュビッツでは)自分より弱いものの最後のパンを奪う者もいれば、自分のパンを弱い人に渡すものもいた」
と言っています。文字通りの生き地獄の中でも
、人はどう生きたいかを自ら選び取ることができるのです。
彼女は苦手な電車の中でも、支援者でいることを選びました。積極的にスペースを作って提供することに意識を向けたのです。
布団の中から「お父さん。苦しいの?」と声をかけるのに似てますね。
予想通り、次の駅では人がなだれ込んできました。彼女は積極的にスペースを作って、そこに招き入れようとしています。
「ちょっとビックリなんだけど、全然大丈夫です。何ともない」と彼女は言いました。
僕たちはそれからセッションの振り返りをワイワイ話しながら、彼女の最寄り駅まで電車に乗りました。
駅に降り立ったとき、彼女は気づきました。
押し合うような満員電車に20分も普通に乗れた自分!!!!
「信じられない!!」彼女は興奮していました。
僕は彼女に伝えました。
「ね。どんな電車でも乗れることはわかったね。ただ、これから1人で乗るときは、もう少し人が少ない電車で呼吸法の練習を何回かしてみてね。その方が安心して乗り続けられるようになると思うから」
その日から彼女は電車に乗れるようになりました。先日のオンライン講演会にはスマホで電車内から参加してたくらいです!!
電車に乗れるようになったことも嬉しいけど、「自分にも出来るんだ」と思えるようになったことが嬉しい。
そんな風に彼女はいいます。
そうだね。君は何だって出来る。だからあなたの夢を叶えてほしい。あなたが描いた夢を叶えることができるのは、あなたしかいないから。
そしてスーパーコーチチームで、一緒に素晴らしい未来を切り拓いていこうね!!
と言うことで、ケース公開を許可してくれたMちゃん。本当にありがとう!!このケースに刺激を受けて、自分の人生を歩み出す人が1人でも増えますように。
僕たちとスーパーコーチへの道を歩きたい人は