CBC㊲「電車に乗れない私」が受けた3つのレッスン(その5)

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 いよいよ「電車に乗れない私」シリーズも最終回。セッションがスタートしてからここまで90分くらいです。あと10分で貸し会議室の退室時間なのですが、コーチは追加レッスンを思いつきました。

 きっかけはクライアントの一言でした。

「これまでは自分の苦痛だけにフォーカスしてきてた。。。身体の感覚。息が出来ない。逃げられない。。。。」

だけど。。。

「(この人は)寂しいんだっていう感情と繋がると、なんか私は強くなって、抱きしめてあげたくなる

クライアントの一言

 クライアントが苦痛から離れて、強さを取り戻すことにつながる方法がここにあるのです。

 この「強さ」を彼女がいつでも使えるように。苦手な電車の中でも、彼女が自分自身の「強さ」と共にいられるように。

May the Force be with you.(フォースと共にあらんことを)

SW

 僕はそんな気持ちで「追加レッスン」をスタートしました。

CO「よし、じゃあ、あなたはとても優秀なので追加レッスンしてあげよう。もう一度、横になって。。。セルフ布団蒸ししてみて(笑)」
CL「ははははは!」

CO「では、この時の苦痛。。。辛さとか怖さがあるよね。。。。うん。。。。で、その辛さとか怖さを。。。意識的に呼吸します。。。。。辛い呼吸。。。。うぅぅぅあぁぁぁぁ~。。。。その辛さをしっかりと吸いながら。。。。さらに。。。。お父さんの辛さ、悲しさも吸います。。。。。すぅぅぅぅぅ。。。。そして次は、おばあちゃんの辛さ、悲しさも吸ってーーーー。。。。。。」

CL「(涙)」

CO「ここに関わる人たちの辛さ、悲しさを全部吸うよ。。。。。でも大丈夫
。。。。あなたは、それを吸っても。。。。全部愛にして吐き出すことができるから。。。。全部の辛さを吸って。。。。。。愛にして吐き出す。。。。。。。はぁーーーーーーーー。。。。。そう。。。愛の呼吸で。。。吐いてーーーーー。。。。。金色のエネルギーを。。。呼吸と共に。。。。。広げて行きます。。。。周りの全ての辛さ、悲しさを吸って、
金色のエネルギーにして吐き出す。。。。。それを続けるほど。。。。あなたの内側から愛のエネルギーが。。。。。金色のエネルギーが出てくる。。。。。だからあなたが。。。1番苦しいところでも。。。。こうやって苦しみを吸いこめば、愛を吐き出すことができる。。。。。。お父さんも超えて。。。。。世界に。。。。」

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 誘導瞑想『愛の呼吸』です。ここまでのセッションで出てきた要素を組み合わせて、彼女が良い状態につながるための瞑想法を作ったわけです。

 といっても、下敷きになった瞑想法はあります。ダライラマ法王も伝える「トンレン」です。「苦しみを引き受け、幸せをわたす」瞑想法です。

 この瞑想法の世界観がMちゃんにぴったりだなと思って、これを少しアレンジした形で、彼女と試してみたのです。瞑想の中に出てきた「金色のエネルギー」は彼女の未来と現在を繋げるものでしたね。

 彼女は静かな涙を流しながら、穏やかな呼吸を続けています。薄暗い場所でも静かに咲く、一輪の美しい花のようでした。それを見た人を、幸せにし、勇気を与えてくれる花です。

CO「さらに世界を広げていくよ。。。今度は、満員電車の中に乗ってるんで、周りにぎゅうぎゅう人がいる。。。。ちょっと緊張するけど。。そんなときは。。。。周りに意識を向けてみる。。。。そっか。。。。みんな頑張ってるんだ。。。。あれちょっと苦しそうだ。。。。。みんな一生懸命なんだ。。。。。その人たちの頑張りとか苦しみとか疲れとかを感じて。。。。吸ってみよう。。。。。そして。。吸えたらそれを。。。。。愛の呼吸で返すーーーー。。。。。。中には悲しんだり悩んだりしてる人もいるね。。。。。それを察知したら。。。吸ってーーー。。。。。。愛の呼吸で返すーーー。。。。。金色のエネルギーを車内に広げてーーーー。。。。。。。。中には本当に悩んでる人もいる。場合によっては死んじゃおうかなと思ってる人もいる。。。。」

CL「そうそうそうそう」

CO「それも吸う。。。。。そして愛の呼吸で返す。。。。。あなたがここにいることで、車内にどんなふうに、いいエネルギーが漂ってるかなって想像する。。。。。。」

CL「。。。。。。。(穏やかな笑顔)」

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 太字部分は、レッスン1で扱った「ご主人のことに対する不安」に対してのダメ押しでもあります。

 こんな要素も含めつつ、レッスン3「布団蒸し」で手に入れた「強い自分につながる方法」を、「満員電車の恐怖の克服」につなげていったのです。

 セッション前は、満員電車のイメージをするだけで、身体に拒否反応が起こっていましたが、この段階では何も起こっていません。Mちゃんは深くリラックスして、良い状態です。

CO「もうちょっとまばらな車内の時もね。。あなたは。。。少なくとも1両分ぐらいは。。。。中にいる1人1人のことを感じて。。。。。そう。。。。その人たちの悲しさ、辛さ、無力感。。。。。。それらを吸って。。。愛の呼吸で返す。。。。あなたは光。。。。海。。。。それらと繋がっている。。。。命の歴史。。。。命の全てと繋がってる。。。。。その中で。。。苦しみを吸って。。。。。光を返す。。。。。その光が世界中に繋がるまで。。。。。」

CL「。。。。。(涙)うん。苦しみを吸って。光を返す。なにか自分の魂が浄化されていくのを感じる。。。。あ、このままだと私、仏様になっちゃうな(笑)」

CO「悟りの階段を一気に駆け上がっちゃうな~。(笑)まぁ、それも、しゃあねえかと思いながら。。。悲しみ苦しみ、無力さを吸って、世界に、愛を返す!!!あと3回呼吸して終わりにするよ。。。。吸って、、、返す。。。。自分のペースで吸って、返す。。。。。3回終わったら気持ちよく立ち上がります。。。。」

CL「ふうう。(目を開けて、立ち上がる)」

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 今度はまばらな電車でのイメージ。こんな風にイメージングを繰り返すことで、定着を図ります。

 そして、クライアントの中に、新しいイメージが定着した手応えを得たコーチは、プロセスの終了を決めました。

CO「おはよう」
CL「おはよございます!!!」
CO「今日からスーパーコーチだよ」
CL「きゃははははは」
CO「全てのレッスンがフルスコアで完了しました。よくやったね。おめでとう~!」
CL「まだよくわかんないけど。。。ありがとうございます!!!」
CO「どうだった?」
CL「え。なんかあれ??すっごい身体と心が軽くなった………。すごい」
CO 「満員電車が楽しみではないと思うけど、もう乗ろうと思ったら乗れるんですよ。それもスーパーコーチの修行だから。みんなの苦しみ悲しみを吸って。。。愛を返す。。。」
CL「そっか。私それやりたいんです。ほんとに。。。。」
CO「別に満員電車からやらなくていい。ほどほど電車でも、 少なくともまず1両分目ね。1両分に意識を広げて。。。。吸って、愛を返す。で、そこにどんどん人が乗ってきても、吸って。。。。愛を返す。。。みんなに大好きだよって言って、愛を返す。大好きだよ。」
CL「大好きだよ。大好きだよ」
CO「自分の内側で生じてきた不安とかも吸って、そしてそこに、大好きだよーって、返す。」
CL「大好きだよー(満面の笑み)」
CO「ほら、こういうレッスンしてたら、何にも怖くないね。
CL「だいじゅさんありがとうございます~~~(涙)」
CO「今日からだよ。『今日から未来』ね」

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 こうして時間ちょうどに僕らは渋谷の貸し会議室を出ました。寒いはずです。外には雪が待っていました。

 彼女の顔が曇ります。

「間に合わなかった」

 どうしたのかと聞くと、この雪だと仕事を早帰りする人たちが出るから、もうすでに電車は混み始めているだろう、と言うのです。

CO「よし、予定通り、一緒に電車に乗って見よう」
CL「本気ですか?」
CO「俺と一緒で乗れなかったら、一生乗れないかもよ笑」
CL「そりゃそうですね笑」

 そんな会話を交わしながら僕らは駅に着きました。ホームはたくさんの人で溢れています。

 「急行列車」の混み具合を見た彼女は

「各駅に乗っても良いですか?」と僕に尋ねます。

 賢明な読者の皆様には、僕の答えは分かりますね?

「俺と一緒に急行に乗れなかったら、一生乗れないかもよ笑」

 です(笑)

 渋々乗り込むMちゃん。その後からもドンドン人が乗って来ます。思わず僕の腕を掴む彼女。

 僕は言います。

「電車で緊張を感じたら〜。。。呼吸に意識を向けて。。。。そして、まずは1両分。。。意識を広げるよ。。。この車両の天井。。。。その四つの隅を意識に入れて。。。。。ゆっくり呼吸をする。。。。そうです」

 彼女はゆっくりと呼吸を開始します。

「今日は初回だから。。。めちゃくちゃいい状態にならなくて良いんだよ。。。まずは、こうやって呼吸していると。。。最低ラインをしっかりキープできてるのを感じるよ。。。。そう。。。お上手です」

「なんか大丈夫かも」と彼女は言いました

「うん。大丈夫だよ。。。それでは次に、疲れていそうな人を探して。。。。いた??。。。。その人のお疲れを、そっと吸い込んであげよう。。。。おつかれさま〜。。。。寒かったね〜。。。。家に帰ってあったかくしてね〜。。。。」

 彼女の表情が和らぎます。本当にこうするだけで、強さにつながることができるのです。

「そう。。。そして愛の光を返してあげよう。。。。はぁぁぁぁ。。。。。。。」

「本当に大丈夫です!」と彼女。

 順調なので僕はレッスンの強度を上げることにしました。

「次の駅で、また人が増えた時のために、練習しようね。。。人がなだれ込んできて。。。ぐーっと押されたら嫌かな?」

「ああ。。。怖い!!ってなりそう」と彼女は嫌な顔をしました

「良いことを教えてあげようね。。そんなときは、押し返すのでも我慢するのでもなくて、『ここ空いてますよ♪』って言って、少しで良いから隙間を開けて、スペースを作ってあげるんだよ」

「じゃあやって見ようね」と言って僕は彼女を押してみます。最初はぎこちなくスペースを作ったMちゃんでしたが、2度3度と練習を重ねるうちに、上手にスペースを作ってあげることができるようになりました

 なぜこんなことをするのでしょうか?

 人はいつでも被害者になることも、支援者になることも選択できる

そのことを体感してもらいたかったからです。

 『夜と霧』を書いたフランクルは

「(アウシュビッツでは)自分より弱いものの最後のパンを奪う者もいれば、自分のパンを弱い人に渡すものもいた」

 と言っています。文字通りの生き地獄の中でも
、人はどう生きたいかを自ら選び取ることができるのです。

 彼女は苦手な電車の中でも、支援者でいることを選びました。積極的にスペースを作って提供することに意識を向けたのです。

 布団の中から「お父さん。苦しいの?」と声をかけるのに似てますね。

 予想通り、次の駅では人がなだれ込んできました。彼女は積極的にスペースを作って、そこに招き入れようとしています。

 「ちょっとビックリなんだけど、全然大丈夫です。何ともない」と彼女は言いました。

 僕たちはそれからセッションの振り返りをワイワイ話しながら、彼女の最寄り駅まで電車に乗りました。

 駅に降り立ったとき、彼女は気づきました。

 押し合うような満員電車に20分も普通に乗れた自分!!!!

 「信じられない!!」彼女は興奮していました。

 僕は彼女に伝えました。

 「ね。どんな電車でも乗れることはわかったね。ただ、これから1人で乗るときは、もう少し人が少ない電車で呼吸法の練習を何回かしてみてね。その方が安心して乗り続けられるようになると思うから」

 その日から彼女は電車に乗れるようになりました。先日のオンライン講演会にはスマホで電車内から参加してたくらいです!!

電車に乗れるようになったことも嬉しいけど、「自分にも出来るんだ」と思えるようになったことが嬉しい。

 そんな風に彼女はいいます。

 そうだね。君は何だって出来る。だからあなたの夢を叶えてほしい。あなたが描いた夢を叶えることができるのは、あなたしかいないから。

 そしてスーパーコーチチームで、一緒に素晴らしい未来を切り拓いていこうね!!

 と言うことで、ケース公開を許可してくれたMちゃん。本当にありがとう!!このケースに刺激を受けて、自分の人生を歩み出す人が1人でも増えますように。

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だいじゅ@コーチング脳のつくり方
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