あなたの質問力を激変させる「前提」の力
今日から何回かにわたってNLPのミルトンモデルの解説記事を書きます。
ミルトンモデルはミルトン・エリクソンという催眠療法家が行っていたセラピーからモデリングされたコミュニケーションパターンです。ミルトンモデルの言葉の使い方を活用することで、相手の無意識に働きかけ、そのリソースを活用することができるようになります。
直接的な提案や指示ではなく、「曖昧」で「含み」を持たせた言葉での暗示や誘導を行うことで、相手の内的なリソースを活性化させて解決を引き出すのです。
エリクソンたちは無意識を以下のようなものだと考えています。
このような無意識をうまく活用できるように(助けてもらえるように)する言語パターンがミルトンモデルなのです。
今回の記事では簡単なパターンをいくつか紹介しますので、まずはそれらをコーチング、カウンセリングに活かしてみてください。
最初に覚えてもらいたい言葉は前提です。
前提を意識する
コーチングをするときあなたは自分の質問の前提をどれくらい意識しているでしょうか。
息子と動物園に行った時のことです。
Aパターンでは「何かいるかな?」、Bパターンでは「何がいるかな?」となっています。違いは濁点のあるなしだけですね。
ところがこれが大きく結果を左右します。ここに質問の前提が関わっているのです。
だから観察力の低い小さな息子でも「何がいるかな?」と言われると、見つかるまで一生懸命に探す、という行動をしてしまうわけです。
ということで簡単な応用をしてみましょう
それぞれの質問に含まれる前提を確認してみましょう。簡単ですね!
だからコーチたちはよく「1番好きななものは何ですか?」とか「本当に大切なものは何ですか?」などの質問するわけです。
このような前提を埋め込むことで、クライアントに集中して探索をしてもらい、より役に立つものを自分の内側から発見してもらいたいと思っているわけです。
エリクソン催眠の世界では、暗示とは以下のようなものだと説明されています。
前提のコミュニケーションが暗示となって、クライアントを集中させるのです。そしてその内側に眠るリソースからの恩恵を受けれられるようになっていくのです。
上記のやり取りはエリクソン博士と不良少年のセッションの中から抜粋されたものです。
少年は「驚かない」と強がって見せていますが、その手前で前提を受け入れてしまっているのです。
「来週には自分がすっかり変わってしまう可能性がある」「それに自分でも気がつく」などの前提です。これによって、無意識の中に「自分が変化する前提」が入るわけです。そして「それも受け入れる強い自分」のイメージが何となく描かれてしまう。もちろんこのフレーズだけの効果ではないでしょうが、この少年はこの後、短い期間で更生したそうです。
面白い質問だなと思ったら、このエリクソン博士の質問をアレンジしてみて欲しいのです。
エリクソン博士の質問の前提は「変化すること」「そのことに気づくこと」だったわけなので、「いつ変化に気づくか?」という問いにしてみたわけです。
他にも「いつか気づく」を「誰かが気づく」に変換すると、下のような質問になります
さらに
このように質問を重ねることで、イメージが広がっていったりもしますね。これは「だれかが気づいたら、なにかが起こる」という前提を入れ込んで質問を作っているのです。
ちなみにこれらの発想の背景にあるのは以下の信念です。
僕のノートをよく読んでくれている人はお気づきかも知れませんが『嫌われる勇気』で推奨されている「私はできる」「人々は仲間である」という信念のバリエーションです
このようにコーチの人間観・世界観から「役に立つ前提」や「その前提に基づくコミュニケーション」が生まれるのです。
ですから、普段から
クライアントにどんな発想をもってもらえたら良いのだろうか?
と考えて、その発想に基づく前提を質問に入れ込みたいわけです。
ここまで紹介されてきた質問たちは、例えば以下のような前提(発想)が入っているわけです。
・自分の中に必ず答えはある
・選択肢はたくさんある
・楽しいことに取り組むのがよい
・自分は変化成長する
・観察すれば気づきがある
他に例えば
・自分はすでに人の役に立てている
という前提をもってもらうのもいいな!とあなたが思うなら
「あなたの仕事で一番人から喜ばれていることは何ですか?」
みたいな質問をつくることができるのです。
さて、
ここまで読んできて気づいたことはなんですか?
もし万が一あなたの答えが「特に何も気づいてない」でもいいのです。なぜかというと、
何かいいことがあった→それに気づいた
という順番になっているはずなので、あなたがまだ気づいてないとしても、すでに良いことがおこった可能性は存在しているからです!!
こう考えると、「気づく」って言葉に含まれる前提もとても興味深いですね。そんなわけでコーチたちはよく「何に気づいた?」というような質問を使うのだと思います。
5W1Hの質問と前提
もう少しコーチングの中で使われる前提について、理解を深めてみましょう。
①やりますか? という質問だとニュートラルに近いのですが
②いつやりますか? になると「いつかやる」という前提が含まれるのです。
さらに「いつやるのが良いだろう?」となると「やるのに良いタイミング(やりやすい、効果が出やすい)がある」という前提が含まれることになります
5W1Hの質問を作ってみましょう。
どこでやるのが良いだろう?(WHERE)
誰とやるのが良いだろう?(WHO)
何をやるのか良いだろう?(WHAT)
どのようにやるのが良いだろう?(HOW)
やるのは何のためだろう?(WHY)
それぞれに前提があるのです
どこでやるのが良いだろう?(WHERE)
前提「やるのに適した場所がある」
誰とやるのが良いだろう?(WHO)
前提「一緒にやるとうまくいく相手がいる」
何をやるのか良いだろう?(WHAT)
前提「やって効果があるものとないものがある」
どのようにやるのが良いだろう?(HOW)
前提「うまくいくやり方がある」
やるのは何のためだろう?(WHY)
前提「やることには目的がある、やれば効果がある」
こうやって並べてみて、どんな前提でクライアントに考えて欲しいのか?自分に問いかけてみてください。そういったことを続けることで、前提に関する感度があがってくると思います。
さらに例えば
何をやるのか良いだろう?(WHAT)
前提「やって効果があるものとないものがある」
があるなら
何をやらないのが良いのだろう?
前提「何かをやめることにも効果がある」
とかがあってもいいのです。こんな風にいろいろは応用方法が思いつくようになったらしめたものです。ぜひ前提の世界を探求してみてください。
他にもおすすめなのは、自分のコーチングを聞き直して(もしくは文字起こしして読み直して)、自分がどんな前提でクライアントに質問をしているのか、を検討することです。
役に立たない前提が埋め込まれていることはないか?
もっと役立つ前提に置き換えられることはないか?
こうやって振り返ると、他ならぬ自分の思考ぐせが明らかになってくると思います。使う質問の前提を探求するというのは、自分の思考ぐせに向き合うことなのです。役立つ前提が含まれた質問を自然と使えるようになっているということは、普段から役に立つ考え方を自分もしているということになると思います。
あとは、自分がいいコーチだな、と思うコーチやカウンセラーのセッションを見て、彼らの質問(やフィードバックなど)にどんな前提が含まれているかを研究して欲しいのです。
僕のセッションであれば、YouTubeでもnoteでもたくさんアクセスできると思いますから、前提研究にもってこいだと思います。ぜひ、前提を分析して、自分も使いたい前提をピックアップしてみてください。
ということで今回はミルトンモデルの前提というものと質問についてでした。続きもお楽しみにどうぞ
僕たちと人生を変えるコーチングがしたい方は
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?