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好きな歌 23
藤林邦夫の3分メッセージ(『生きる楽しみ』1991年版、pp.31-32。)
日本人の好きなもの、というNHKの世論調査をみますと、好きな歌のトップは「赤とんぼ」、2位は「荒城の月」、3位は「春の小川」です。
これは、童謡や唱歌の範囲の話ですが、三木露風の「赤とんぼ」は、しみじみと日本人の心に語り掛けてくる名曲です。
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「ゆうやけこやけの赤とんぼ 負われて見たのはいつの日か……」
過ぎ去った幼い日の感傷が心に迫ってきます。
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「荒城の月」も土井晩翠の詩と、これは若くして世を去った天才、滝廉太郎の名曲が相まって、人々の心を感動させます。
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この2つは、共に、失われたものを、切なく歌っている共通項がありますが、失われた歳月は、美化され、栄化されていきます。たとえどんなに辛かった日々でも、過ぎ去れば懐かしくなるものです。
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よく戦地で共に苦労した戦友が、毎年集まっては、その思い出を語り合う会がありますが、それほど辛かった時期も、今は懐かしさをもって胸によみがえります。
勿論、思い出したくない人もいるでしょうが、一定の時は色んな出来事を濾過してくれるのです。
イスラエルの民もエジプトの奴隷の生活から解放され、荒野で40年、放浪の旅をして、その後、約束の地カナンへ入りました。
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その苦しかった旅を、忘れることがないように、神はその話を、繰り返し、繰り返し、子や孫に語り続けなさいと命じておられます。
「赤とんぼ」や「荒城の月」のように、在りし日のことを偲び、懐かしむだけではなく、そこにも神の恵みのあったことを覚えるのが信仰です。
あなたの心に過去を思い、神に捧げる感謝の歌がありますように。
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<著者紹介>
藤林邦夫 1935年(昭和10年)生まれ。日本純信聖書学院自主退学、京都福音教会で、35年牧師として従事。ホザナ園園長も務めた。1992年2月26日、56歳で召天。この一連のエッセイは、亡くなる直前に、4年間にわたり、3分間テレフォン・メッセージとして書き溜めたもの。
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