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嵯峨を通って 7
藤林邦夫の3分メッセージ(『生きる楽しみ』1991年版、pp.11−12。)
先日久しぶりに嵯峨の方へ参りました。
嵐山は観光客のメッカで、京都では清水寺、二条城と並んで、トップスリーの座を占めています。
相変わらずの賑わいですが、有名なタレントの経営する店が増えたとかで、落ち着きがなくなってきています。
広沢の池の辺りは、さすがにのどかな雰囲気で、緑が美しく空気も良くて、嵯峨野の雰囲気を味わえます。
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この池に舟を浮かべ、大宮人が月を眺め、月を歌に詠んだであろう、いにしえの日々を思うと、次々と通る車の列に、今昔の感に堪えない……
月並みですが、そんな思いが致しました。
聖書はこう語ります。
「草は枯れ、花は散る。しかし神の言葉は永久に残る。」
人の世はうつろいゆきます。どんなに栄えたとしても、過ぎ去れば、一朝の夢でしかありません。
ローマ帝国の皇帝であったネロが、自分の権勢、権力を示すために、金の家、宮殿は、そのグロッタ様式をもって「グロテスク」という形容詞を残しました。
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しかし、彼の迫害を受けて、地下に潜んだキリスト者たちは、その信仰の故に永遠の命の恵みを世に証しました。
およそ、目に見えるものを残そうとする時、時代の波に呑まれて、それらのものは消え去っていきます。
しかし、見えないものは、永遠に残るのです。
地上に「福音」という良きおとずれを残したイエス・キリストは、弟子たちの手によって、それが全世界に宣べ伝えられ、今日まで祝福となって広がっているのです。
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広沢の池に優雅な生活を楽しんだ平安朝の貴族は、どうなってでしょうか?
池に映る月は、静かに何かを語ってくれているのではありませんか?
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<著者紹介>
藤林邦夫 1935年(昭和10年)生まれ。日本純信聖書学院自主退学、京都福音教会で、35年牧師として従事。ホザナ園園長も務めた。1992年2月召天。
この一連のエッセイは、亡くなる直前の4年間に書き溜めたもの。
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