英語でも言葉選びが難しいことがある話 "girl vs woman"
どの言語でも、会話の中で適切な言葉を選ぶのが難しい場面に直面することがあると思う。まるで伝えたい微妙なニュアンスの言葉が、そもそも存在していないかのように。英語だと"an awkward gap in language" 「ぎこちない言語の隙間」と表現するだろう。
英語の葛藤 Girl vs Woman
あるアメリカ人男性が「girlは年下で、womanは年上な感じがするから、35歳になった今、例えば32歳の年下の女性をgirlと言ってはいけないのか、わからなくなった」と言っていた。
さっきお店で会った女性の話をするときに、明らかに「girl (少女)」でもないのに、"The girl"と指すのは失礼かも?という話である。
"The woman"であれば違和感を抱く人は少ないと。
"The lady" もありだが元々上品な言葉なため言い方によっては皮肉など嫌な印象を受ける人もいて、議論を呼ぶことが多い。
男性だとどうなる?
これが男性だと、"guy"という便利な言葉がある。成人男性を"boys"と言うこともあるが、"guys"などと言ったりすることが多い。"men"とか"gentlemen"呼ぶのは硬すぎる。
ところが成人女性は成人男性の"guys"に相当する言葉がなく、とは言っても"women”が硬く聞こえるためしょうがなく"girls"と言ったりするが、「いや少女じゃないでしょ」というツッコミが生まれてしまい、このような葛藤が生まれているのだ。
"gals"が女性版"guys"として機能した(している)こともあったが、方言気味で全国的になっていない。昔アデレード出身のオーストラリア人は、「男性と女性混合のグループであればguysを使ってしまう」と言っていた。
男性女性を指す言葉の対応表として
boy - girl
man - woman
lady - gentleman
が対応していて、
guy - girl???と、
guyの対応としてgirlが来ることに、英語話者の違和感があるのだ。
guyの対比としてgirlと言っているのか。
boyの対比としてgirlと言っているのか。
この対応のせいで特に単体でgirlという言葉が出た時、「子供扱い?」というニュアンスが出る可能性があるため、"woman”が確実に無難、"lady"もあるかも、というわけである。とはいえ、そもそも "girl" と呼ばれるときのニュアンスも大事ですよね。そこに未熟さや無知さを暗に示すような、貶める態度や意図があるなら、当然、嫌悪感を抱く。それは"boy"も同じだ。
プロフェッショナルな場ではgirlを控える人が多い
これを踏まえて、"girl" を "guy"の感覚で使う人がいたとしても、職場などプロフェッショナルな場では"girl"を使用しないことが多いようだ。
ちなみにあまり関係ないが昔フィンランド大使館の窓口で、スタッフ二人が私の対応の相談していて、私のことを"This gentleman is…”と言っていて感動した覚えがある。言葉遣いが美しかった。
日本語の一人称も難しいときがある
日本語の一人称も場面によってしっくりこないことがあるんですが皆さんはどうですか?
私の場合では「私」「僕」「俺」を状況に応じて使い分けているが、たまにどれもしっくりこない場面がある。例えば、「海外で出会った海外育ちのかなり仲の良い5歳年上の人」みたいな相手だ。
たとえば、自分が25歳の男性で、ネパールのカトマンズを旅行中に出会った現地在住の日本人と出会ったとしよう。彼は30歳で5つ年上、両親が日本人で、日本語がペラペラだ。「俺は生まれも育ちもカトマンズで、誰に対してもフランクでいたい。敬語なんていらないし、対等で話そうぜ!」と言ってくる。海外育ちらしい包容力に心を打たれつつも、さすがに「マジで?よろしく!」とは返しづらく、とりあえず、「お、本当?了解ですぅ〜」くらいで様子を見る。ところが、会話を重ねていくうちに彼の振る舞いや言葉遣いから、「あ、この人、本当に先輩後輩の感じを求めてないな」と分かってくる。ここで問題が出てくる。「私」だとフォーマルすぎて堅苦しいし、「僕」だとなんとなく遠慮している感じが漂う。じゃあ「俺」でいいのか?といえば、そう単純でもない。相手が「俺」だから自分も「俺」でいいんだろうけど、なんだか日本生まれ日本育ちの性分と、そもそも初対面では控えめな自分の性格から、まだ仲良くなっていない初対面の人に「俺」と言うのは大きな勇気がいる、などと言った具合だ。
英語みたいに一人称が「I」だけだったら、そんな葛藤もなくスッと「I」で済むところだったが、一人称の多様性があることから、ニュアンスに繊細になっているのだ。昔、「小生」を使う人がいたけど、あれもきっとこの一人称のしがらみから抜け出そうとしたんだろう。結果的には逆効果だったかもしれないけど笑
言葉は面白いね。