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教員の働き方改革から考える部活動の現在地と未来予想図(#3)

本日は続編として、2020年度にスポーツ庁が打ち出した段階的な部活動の改革施策についてまとめていきたいと思います。
前回までの更新はこちらを参照ください。

#1(教員の長時間労働の現状と過熱する部活動の実態)

#2(部活動指導員の概要と制度改革の光)

改革の方向性

この度の発信における改革の方向性は以下の通りとなっています。

◆部活動は必ずしも教師が担う必要のない業務であることを踏まえ、部活動改革の第一歩として、休日に教科指導を行わないことと同様に、休日に教師が部活動の指導に携わる必要がない環境を構築
◆部活動の指導を希望する教師は、引き続き休日に指導を行うことができる仕組みを構築
◆生徒の活動機会を確保するため、休日における地域のスポーツ・文化活動を実施できる環境を整備

端的に表すならば
■教員の働き方改革を進めるために部活負担を減らします
■特に休日の活動を減らすことに注力します
■でも休日活動したい生徒もいると思うので、地域に力を借りて生徒の活動機会は確保します。
と言ったところになります。
当然ながら文科省(スポーツ庁)としての発信ですので主語が学校(教員)となっており、上記方針に沿った働き方改革というキーワードで施策が細かく並んでいます。

施策のまとめは以下の通りになります。

Ⅰ .休日の部活動の段階的な地域移行(令和5年度以降、段階的に実施)
⚫︎休日の指導や大会への引率を担う地域人材の確保
(育成・マッチングまでの民間人材の活用の仕組みの構築、
 兼職兼業の仕組みの活用)
⚫︎保護者による費用負担、地方自治体による減免措置等と国による支援
⚫︎拠点校(地域)における実践研究の推進とその成果の全国展開

Ⅱ.合理的で効率的な部活動の推進
⚫︎地域の実情を踏まえ、都市・過疎地域における他校との合同部活動の推進
⚫︎地理的制約を越えて、生徒・指導者間のコミュニケーションが可能となる
 ICT活用の推進
⚫︎主に地方大会の在り方の整理(実態の把握、参加する大会の精選、
 大会参加資格の弾力化等)

いずれも推進されることによって、教員の負担軽減は確実に達成できる施策であることはよくわかります。前回記事でもまとめた部活動指導員の介入も非常に大きな成果を生むことになることも推察されます。
個人的にこの段階的な地域移行や地方大会の在り方整理に関しては、前々回の記事でまとめた「過熱する部活動」の観点が重要になってくると考えます。
過熱する部活動を少し掘り下げて、「日本スポーツの強化基盤となる部活動」という観点で以降整理していきたいと思います。

日本のスポーツにおける強化基盤となっている部活動?

タイトルについてまずは複数のデータ(お手製)から私見を述べさせていただきます。
※下記データが何かにお役立ていただけそうな場合は最下部のいずれかの方法でコンタクトをいただけましたら喜んで提供させていただきます。

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まずは現在W杯最終予選を戦っているサッカー日本代表のU-15〜U-18世代の所属クラブを整理したものになります。
24名の招集(辞退・離脱含む)で部活動でのプレー経験がある選手は14名となります。サッカーの場合はJリーグの加盟条件でもある育成組織を保有することという環境整備が早期に進んでおり、クラブチーム対象の大会も活発に開催されているため部活動以外でU-15〜U-18世代のプレーを選択する選手も多い傾向にあります。それでも半数以上は学校部活動のサッカー部出身という現状です。
次いで、記憶に新しい東京五輪を戦ったサッカー日本代表(U-24)のメンバー版を整理したものになります。

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フル代表と比較すると、部活動以外の出身者が大半を占める結果となります。
招集22名に対し、5名が該当です。
サッカー界でよく話題に上がる「部活動出身者は大器晩成型理論」については今回の本筋ではないので割愛させていただきますが、過去データと合わせて整理を進めれば興味深いデータが取得できそうでもあります。

対して、過熱する部活動→強化基盤が部活動に依存している状態が非常にわかりやすい「野球」を整理してみました。こちらも東京五輪に出場した侍ジャパンのデータ整理になります。

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みんな大好き甲子園の結果が全てですが、高校世代の野球=甲子園という現状では当然の結果とも言えるのかもしれません。U-15世代においては、「早期に硬式球に触れたい」「ジュニア時代から所属しているクラブで活動する」などの理由からシニア・ボーイズなどのクラブでの活動を選択する選手もいますが、U-18世代は迷うことなく高校野球で甲子園一択です。表現を変えるのであれば、全力で野球を続けるという気持ちの表現方法に高校野球以外の選択肢が存在しないとも言えるのかもしれません。勿論、野球界がチャレンジをしていないわけではなく、クラブチームがU-18世代の受け入れ先を作るチャレンジや、高野連に所属しない高校野球チームを目指す動きも幾つか起こっているものの、大きな変革には至っていないのもまた事実であり、その背景にあるのは紛れもなく過熱した部活動の存在です。

野球やサッカーに限らず、競技を代表するトップアスリートの出身大半が部活動であり、即ち育成年代の強化基盤が部活動に依存しているような競技においては、スポーツ庁の段階的な施作においても地域の受け皿や大会の在り方の見直しなどに関する各競技団体の主体的な参画が発生しなければ、その道のりには幾多の困難が生じるものになると推察されます。

「働き方改革」という観点からの鋭い推進は社会情勢から鑑みても非常に重要なテーマでありますが、参画主体者である生徒とその活動の先に待つ競技団体を巻き込んだ最適な部活動の未来こそが求められているのではないでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました。
次回以降は、学校現場に入る部活動の専門人材「部活動指導員」に必要な資質を複数回にわたって整理していければと思います。




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