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入院76日目:涙のアリーナ席

日曜日。
朝から一日雨予報で、しかも夕方は雨が強まるらしい。

出掛ける予定だった私と父は天気予報を見て二人でため息を吐いた。

 
 
お父さんは朝7時前に出かけていった。
日帰り旅行で野外活動が多い日で、残念がっていたが
予報に反して朝は曇りでもち、午前中はなんと晴れた。驚いた。

 
午前中は洗濯槽や水回りの掃除をしたり、きんぴらごぼうを作ったり、ご飯ストックを作ったり、わずかな晴れ間を求めて洗濯物の干し場所を変えたりしていた。

ライブは夜からなので、家事が終わった後は読書をしていたが、腰痛や生理痛の影響で気がついたら昼寝をしていた。疲れがたまっているらしい。

 
いつもだったら、ライブ場所へは早めに行き、グッズ売り場を見たりもするが
今回はネットで見ても気になるグッズはなかったし
グッズ売り場は野外だし
前回セカオワのライブに行った時はグッズ売り場が長蛇の列だったため
今回は開演一時間前に行こうと思った。

 
 
出発時はまだあまり雨が降っていなかったが
念のためレインシューズを履き、傘を持ち、レインジャンパーを着て、レインズボンを履いた。
レインジャンパーとズボンは思ったより暑かったため、駅にて脱ぐ。
傘は邪魔だったが、夜に雨が強まるらしいので仕方ない。

 
電車に乗った瞬間、信号機トラブルとやらのアナウンスが流れ、電車は出発しなかった。
ここ最近電車に乗る日はもれなく行きの電車が何らかで遅延になる。
寝たりなかった私は電車でも泥のように眠った。

 
電車が遅れたせいでライブ会場最寄り駅は激混みであり、女子トイレもキオスクも長蛇の列だった。
ライブ会場へは想像以上に到着が遅れて焦った。
グッズ売り場を確認する余裕さえなかった。
人ごみと傘で前がふさがれ、進むので精一杯だ。

 
最近の電子チケットは当日に座席が分かるのだが
私はライブ会場に到着してからアリーナ席だと分かり、ライブ前に号泣した。

 
5年以上前からセカオワライブに一緒に行きたいと言っていたお母さん。
ようやくチケットとれたのに行けなくなったお母さん。

お母さん、アリーナだよ………
アリーナのチケットだったんだよ………………
ちくしょう、よりによってアリーナ。

 
お母さんが病気にならなかったら
お母さんにアリーナ席でのセカオワを見せられたのに。

 
なんで隣にお母さんはいないの。
私一人アリーナでセカオワを見るなんて。

 
周りを見渡すと母娘でライブに来ている人もたくさんいて切なかった。
係員に「一人で入場でいいんですか?」と聞かれた時も悲しかった。

 
ライブは素晴らしかった。
想像以上に素晴らしかった。
前回行った時よりよかった。

歌や演奏はもちろん
シングル曲たくさんのセトリも衣装も照明も演出もきっとお母さんは気に入ったに違いない。

 
ライブ中、私はたくさん泣いた。

お母さんが隣にいなくて泣いた。
一人楽しむことが申し訳なくて泣いた。
セカオワが孤独な歌を歌うから、お母さんを重ねてまた泣いた。

もうチケットをとれても、お母さんとアリーナで楽しむことはできない。
ライブ定番のジャンプも、お母さんはもうできない。

 
60代でもお母さんは元気で、2~3時間のライブ、ずっと立ちっぱなしでジャンプしたり手を振ったり叫んだりして、私以上にハッスルしていたのにな。

なんでこんなことになってしまったのか。

原因不明な病気だ。
原因を考えても答えは見つからない。

 
 
アリーナ席だと伝えると

「なんとアリーナか。お母さんも行きたかったな。お母さんの分まで楽しんできてね。」

とLINEが来た。

 
ライブは撮影可だ。
お母さんにライブの感想と写真を送った。

 
「ライブ楽しかったけど、お母さんが隣にいたらきっともっと楽しかったな。

お母さんが退院したら、お母さんが行きたい場所に一緒に行こうね。」

 
そうお母さんに伝えると「ライブ楽しかったようでよかった。気をつけて帰ってね。」と返ってきた。

 
 
入院前、お母さんはアクティブだったけど
退院後もライブに行きたいと願うのか、また体調や体力は大丈夫なのかはまだ謎だった。

 
 
セカオワは“大好きな君がいなくなった世界で一人生きていくしかない”歌をポップなメロディで歌っている。

私はライブが終わってからもお母さんを重ねては泣いた。

 
リーダーがいなくなった職場で私は戦っていくしかないし
お母さんがいない家を守るために私はやっぱり戦っていくしかない。

セカオワは私の孤独に寄り添ってくれる。

 
明日はセカオワを聴きながら仕事に行こうと思う。






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