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久しぶりのお母さんの手料理
退院二日目。
夜相変わらずよく眠れない。
朝、心臓がバクバクして仕方ない。エチゾラムを飲む。
午後はリハビリの人や親戚が来るが、私やお父さんは朝出勤のため、午前中お母さんは一人だ。
大丈夫かなぁと心配しながら家を出たし、日中も心配だった。
早めに職場を出る。
お母さんからLINEが入る。
嬉しかった。
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帰宅すると、お母さんが台所に立っていた。
うどんともやし炒めを作ってくれたらしい。
私は驚いた。
少なくとも今週一週間は私が夕飯を作るのは当たり前だと思っていたからだ。
ちょっとずつ元気になってきたお母さんは料理に挑戦したらしい。
「まだ簡単なものしか作れないけど。」そうお母さんは言うけれど、懐かしい見た目だった。
お母さんがよく作ってくれた料理だ。
一口食べた。
お母さんの味だった。
涙がポロポロこぼれた。
おいしい。
おいしい。
お母さんの味だ。
「おいしいね、すごく、おいしいね。ありがとう。」
私が泣きながら言うと、お母さんは「泣くことじゃないよ。ともかには迷惑かけてばかりで申し訳ないよ。ともかもすっかり料理が上手になったね。」とお母さんも泣いた。
二人で泣きながら食べた。
後から後から涙がこぼれた。
なんておいしいのだろう。
相変わらず今日も給食は2/3以上食べられなかったけど(おそらく精神的な理由で)
食べた後も胃が不快だったけど
夕飯はとてもおいしかった。
今まで気を張っていた。
仕事中リーダーの代わりに仕事をして、上から言われて、耐えて
帰宅したら座る間もなく着替えて料理して片付けてお風呂に入って、あっという間に一日が終わった。
私がやるしかないと思っていた。
だけど。
帰ってきた時に家に明かりがついていて
お母さんがいて
お母さんが作ってくれた料理があって
お母さんと今日一日何があったかを話せる。
あぁそうだ。
五ヶ月前までこれが日常だった。
当たり前のような、愛しい日々だった。
私は幸せだ。
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次の日は焼きそばとみそ汁を作ってくれた。
私はお母さんのおみそ汁を飲みたかった。
おいしかった。
仕事から帰ってきてから料理を慌てて作らなくてもいいことにまずホッとした。
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お母さんは入院当初、体中に管をつけられ、足が石のように硬く重くなり、動かず、血圧も高く、胸も痛く
体調が非常に不安定だった。
表情も優れず、ネガティブな発言もあった。
移動も全てストレッチャーだった。
そんなお母さんがピックアップで歩けるまでに回復し、台所に立ち、料理ができるくらい回復したなんて。
入院先の病院は本当に皆さん優しくてあたたかった。
お世話になった。
ここまで回復したのはお母さんの努力の賜物でもあるけど、献身的にサポートしてくれた病院のお陰だ。
感謝しかない。
私も次に転職する時はこんな風にあたたかな雰囲気の場所で働きたいな。