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Photo by
hamahouse
渦巻く雲と草の床屋
その日は利用者と納品に出掛けた。
予報ではあと一時間ほどで雨だ。
行きは晴れ渡る空だったのに
帰り道は空が黒く、雲が怪しげに渦巻いていた。
「あの雲はなんだ?」
「渦巻いているねぇ。」
「雲が、渦巻いている。」
「もうすぐ雨が降るんだよ。」
「真咲さん、早く帰ろうぜ。雨に打たれちまう。渦巻く雲が俺らを狙っている。」
私は笑いを堪えながらハンドルを握り、アクセルを踏む。
車には次回の納品に向けて段ボールがたくさん積んである。
うちの職場には屋根がない。
雨が降る前に戻り、段ボールを運びたいのは私の方だ。
また、別日に同じ利用者と納品に出掛けた。
走っていた車線にカラーコーンが置いてあり、私は慌てて避けた。
「草むしりするんかなぁ?」
利用者が呟く。
利用者の予想は当たり、納品後にその道を通ると除草作業をしていた。
秋になっても気温は高く、草はすぐに伸びてしまう。
「まるで草の床屋みたいだな。」
利用者が言い、私は微笑んだ。
確かに床屋のようだ。伸びた場所をキレイに整えていく。
利用者は一人で外出が難しい方も多く、納品で職員と車に乗って出掛けるのが好きな利用者も多い。
微笑ましい車内での会話に、私はあたたかな気持ちになった。