初めての利用者の写真
数年前に利用者になった方は、こだわりから集団生活に上手く馴染めなかったらしい。
幼稚園、小学校、中学校、高校と不登校で
福祉施設利用も長続きしなかったようだ。
私の職場である施設を利用開始してからも、利用をするたびに苦情や文句があり
とても気難しい印象だった。
人間関係を築くことも難航し、「一人にしてください。」とさえ言われてしまう日々だった。
それがひょんなことがきっかけで私は好いてもらえるようになり
熱狂的な私ファンとなり
今では特定の利用者となら楽しく会話ができるようになったのだから驚いた。
人生何が起きるか分からない。
その利用者は写真が嫌いだった。
誰にでも嫌いなものはあるし、無理強いはしなかった。
ある日、その利用者と会話をしている時に、私がイラストが趣味で、オシャレな人を見るとイラストにしたくなると話をした時に
「私をモデルに絵を描いてくれませんか?私はたまにしか施設に来ないから、写真を撮って見ながら書いてください。」と言われ
私は度肝を抜かれた。
今まで頑なに写真撮影を嫌がっていた方が、自ら撮ってほしいと言ったのだ。
この機会を逃してはいけない。
私は写真を見ながらボールペンでササッと描いた。
懲りすぎてはいけない。
他の利用者に対しても適当な紙にササッとイラストを描く時間しかとれないのだし、特別扱いはよくない。
私が描いた絵を見た同僚は「真咲さん、絵、上手いね。」と驚き
またその利用者の写真を見て、「よく撮らせてくれたね。」とまた驚いた。
利用者は私が描いた絵を喜んだ。
一発ペン書きだし、全然本人には似ていないし、出来上がりに私は満足しきれてはいないが
利用者の写真撮影のきっかけになり、本人が喜んでくれたので嬉しい気持ちはいっぱいだ。
仕事を上から褒められたり、評価されたりはしないし
今の職場は向いていないとよく思うが
こういう瞬間があると、働いていてよかったと心から思う。