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入院92日目:虹を見上げて
仕事に向かう途中、吐き気と心臓バクバクに襲われ、久々にエチゾラムを飲んだ。
仕事や家事のことを考え出すとキリがないくらい不安で怖かった。
お母さんは自宅室内をピックアップで移動し、どれだけ料理ができるのだろう。
レンチンはできるだろうか。
調理はできても、汁物とかを運ぶのは難しいだろう。
ゆくゆくはデイサービス利用になるだろうし、給食が出るだろうから、短期間の問題かもしれないが
お母さんの朝ご飯や昼ご飯は私が準備するようだろうか。
冷凍弁当を用意するか、保冷剤を入れたお弁当を机に用意か、冷蔵庫にお弁当を用意すればレンチンはできるだろうか。
夏場だからより気を遣う。
退院後の一週間が問題だ。
ちょうどお父さんが日勤だからだ。
一週間経てば、お父さんは午後からの勤務になるから、用意さえすれば朝昼ご飯あたためは問題ではないのだが。
エチゾラムを飲んだら次第に落ち着いてきたのでよかった。エチゾラム様々だ。
同僚に元ケアマネさんがいるので、ピックアップで自宅で過ごす方はいるのか聞いてみた。
すると、大抵はもっと重度の方が多く、ピックアップで在宅の方は見たことがないという返答だった。
また、私が前の職場で担当だった、足が動く車椅子利用者は自宅では車椅子から降りて四つん這いで過ごしている件や自宅でピックアップ使用だと場所をとるのではないと懸念している件を伝えた。
すると、高齢者で車椅子の方で四つん這いで歩く方は見たことがないと返答があった。
なるほど、四つん這いで動いていた利用者は若かった。
高齢者はそもそも足腰が弱まり、筋力も低下する。
四つん這い自体が負担がかかるのか。
更に、四つん這いと立位歩行では使う部位が異なる。
残存機能維持の為にも、やはり歩けるならば何らかの方法で歩いた方がいいのか。
ピックアップを自宅で使う場合、住宅の広さにもよると言われた。
Uターンも幅をとると。
今度家屋調査の際、その点も見てもらえるに違いない。
その同僚も、リハビリ中や麻痺足がある人の骨折は怖いことを繰り返した。
私だって去年骨折したし、お父さんだってかつて骨折したが
これからの人生、お母さんの骨折は私やお父さんより重いものとなる。
引き続き気をつけてもらいたい。
今はピックアップで歩けていても、骨折したら多分もう車椅子生活確定だろう。
今日も不穏な利用者は朝から荒れていた。
GHは退所が決まった。向こうから言い渡された退所だ。課題が見られすぎたからだろう。英断と言える。
相談員さんからも連絡が入り、近況を伝えていた。
私は先週上に薬の活用を訴えたが、その話を検討してくれたのか、今日は上が早めに頓服を飲ませていた。
お陰で服薬後はグッと落ち着いた。眠気も強かったが、それでも落ち着いたのでありがたかった。
内心、「だから早く薬を飲ませれば良かったんだよ。」と思った。
明日から色々な職員の意見を取り入れ、また上の考えを混ぜたであろう様々な対策を新たに実施する。
効果的か、逆効果か、やってみなければ分からないバクチだ。
「やってみなければ分からない。」は前施設長の口癖だが、今回の件に関しては、まさに同意だった。
珍しく、無謀な発案ではなく、いい案だと思った。
だが、もうこれでダメなら終わりかもしれない。
私は内心そうも思った。
様々な対策をしてきたが、どれも逆効果だったり、いい方向にはいかなかった。
もうやるべきは対策ではないのかもしれない。
GHクビなら、うちの施設も退所時期の検討段階のような気がする。
夕方、空に虹が見えた。
雨の始まりで憂うつだったが(気温も今日は昨日より10度も下がった)
思ったより雨はひどくなかったし
まさかの虹に心癒やされた。
こんな風に虹全体が見られるなんて珍しい。
空を眺めた。
周りの人達も立ち止まり、眺めたり、写真を撮っていた。
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朝は体調が不安定だったのに
こうして一日が終わろうとしている中、虹を見て希望を感じたのだから
人生何が起きるか分からない。
虹は大きく、キレイだった。
私を励ましてくれているように見えた。
お母さんも病院から虹を見たらしい。
離れて暮らしていても空はつながっている。
今日は体調もよく、リハビリも順調らしい。
「退院の目処がたったからかな?」とLINEが来る。
もうすぐでまたお母さんと暮らせる。
お父さんは9月いっぱいで仕事を辞める覚悟だったらしいが、昨日の面談の話を聞き、「まだ働けるか迷ってしまう。」と話していた。
確かに思ったより自立しているし、お母さんは収入がなくなることを考えると、まだ働いていい気がする。
お金はあった方がいいし、仕事をしていた方が認知症予防にもなるだろう。
時期によっては日勤だが、基本的にはお父さんは半日仕事だし、お母さんが月~金曜にリハビリデイにでも通えなら、送り出しも可能だ。
仕事は辞める必要がない気がする。
ついでに、お母さんのお昼用意の必要もなくなる。
まだ先が読めなくて、動くに動けない。
お父さんの姉にあたる叔母さんが、お父さんのメンタルを心配していたらしい。
「娘にお尻叩かれながら頑張っているよ。」と伝えたらしい。
お父さんは私が今朝出勤前にエチゾラムを服用したことを知らない。
姉も知らない。
多分私もお父さんもお母さんも
見た目より、しんどい。