目薬のこだわり
目薬をつける利用者がいる。
その利用者は目薬をつける際に毎回私を指名する。
何故かは私にも分からないが
私の勤務日は必ず私を指名する。
私はそれが嬉しかった。
好かれているようで嬉しかった。
私じゃなきゃダメだということが嬉しかった。
私がいなきゃいないで休みの日は他の職員を頼れるようだった。
全く融通がきかないわけではなかった。
リーダーからは時折言われた。
色々な職員ができた方がいい、と。
なるべく私で固定しないように考えているらしかった。
確かにそれも分かる。
色々な人が同じように支援ができるのが理想だ。
だが
私がいなければいないで他の方を頼れているし
そんなに緊迫した状況ではないと私は思っていた。
ある日、隣部屋からリーダーの声が聞こえた。
「真咲さんは忙しいから今できないよ。俺がさしていい?」
「ダメ。無理。」
「真咲さんは他の利用者さんといるから。」
「無理。」
らちが明かず
リーダーは私の元へやってきた。
「真咲さんからも言ってあげて。無理って。」
私はその人のところにササッと移動し
「今は〇〇さんと△△しているから、××さん(リーダー)に目薬をつけてもらってもいいかな?ごめんね。」
そう言った。
その利用者は首を横に振りも縦に振りもしなかった。
ただなんとも言えない顔をした。ごめんよ。
私の姿が見えなければ諦めがつくだろうと
別部屋での仕事を命じられた。やけに今日は熱心だ。
リーダーの指示を受け、私はしばらく離れた場所で仕事をした。
所詮私は下っ端だ。
結局、リーダー以外の職員が目薬を担当したらしい。
言われれば言われるほど意固地になる。
人はそんなものかもしれない。
人によってこだわりは色々。
それが厄介で面白くもある。