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アンパンマンおじさん

施設の製品を販売していると
60~70代と思われる男性がやってきた。

 
「お?アンパンマンはあるのか?アンパンマンはよぉ?」

 
なかなかにガラが悪い。
おそらく障害があるか、酔っぱらいか、単なる性格に過ぎないだろう。

 
そんなガラの悪い方がアンパンマンというかわいらしいキャラクターを口にしている。

「アンパンマンはないんですよ。」

私は申し訳なさそうに伝えたが
そんなことで怯むアンパンマンおじさんではない。

 
「なんでねぇんだよ?こんなにたくさんあるのにアンパンマンがよぉ?お前アンパンマン知らねぇのか?あ?」

 
「くまモン風のものならありますが、アンパンマンはないんですよ。」

 「アーンパンチ!のアンパンマンですよね?」

私はわざわざアーンパンチのジェスチャーまでした。

 
「アンパンマンお好きなんですか?」と、私は尋ねた。
すると

「俺はあんな奴嫌いだよ。勘違いするなよなお前。アンパンマンなんてすぐやられるし、必殺技がパンチしかねぇじゃないか。俺が好きなのはバイキンマンだよ、バイキンマン。あいつはすごいんだぞ。あの手この手で悪巧みするんだから。パンチだけの奴とは違うわ。」

 
「そうですね。バイキンマンはすごいですね。」

 
「じゃあな。買わねえよ。」

その方はそんな捨て台詞を吐いて去っていった。
10分くらいまくし立てていた。

 
ふぅ、やれやれ…

と、ホッと胸を撫で下ろすと
隣で利用者が指をさして大爆笑していた。
「バカだなぁ(笑)」と。

 
人生バカにならなきゃいけない時もある。

 
私の場合は
それがこの日だった。

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